第56話 新スキル創造part3②
効果範囲を限定して、準備完了っと。これはきっとみんな驚くぞ〜。
今からやろうとしているのは、前世では1つの家庭に必ず1個は設置してあった物。そう、あれの再現だ。
「お兄様、テオ、準備はよろしいですね?」
レオナが脱衣所から声をかける。
「おう!いいぞ!」
「では、いきますわよ!ホットウォーターシャワー!」
◆◇◆◇◆
遡ること2週間前、お風呂に招待したお兄様とテオの意見から、手軽にお風呂に入る手段として、シャワーの設置を思いついたレオナ。
だが残念なことに、この世界には、前世と全く同じシャワーを1から作る技術なんてない。だけど、そのハンディキャップを覆すもの、それが魔法だ。
今のところ、シャワーに代わる魔法は取得していないけど、ならば新たに創ってしまえばいい。
レオナの十八番、新スキルの創造の出番だ。
過去に2度、新スキルの創造を成功させているレオナからしたら、もはやお茶の子さいさいだ。
今回創造したいスキルは【シャワー】。前世の記憶があるおかげで、イメージはばっちりとして、課題があるとすれば使い勝手かな。シャワー中に何度も水が止まってしまう事態は避けたいので、効果範囲は狭くてもいから、持続時間が長い方がいい。
いやまてよ、それも時と場合によりけりじゃないか?例えば······。
色々な場面を想定し、最終的に完成したのは、この魔法。
▽水属性魔法
◯サブスキル
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ウォーターシャワー(習得済SP2)
指定範囲に水を噴射する(10リットル)
消費MP2
ホットウォーターシャワー(習得済SP2)
指定範囲に温かい水を噴射する(10リットル)
消費MP2
____________________
考えたくないが、万が一グライスナー領で火事等の災害が起こってしまった時は、広範囲にわたっての消火活動が必要になる。
消火活動には、基本的にはより威力の高い【ウォーター】を使うのだろうけど、【ウォーター】では手の届かない場所の鎮火が必要な場合も出てくるかも。そう思い、効果範囲を指定できるタイプの魔法にしてみた。
魔法を発動させる度に、効果範囲を設定する手間は増えるけど、使い勝手が悪ければまた創ればいい。
【物は試し】とも言うし、実験、実験。
◆◇◆◇◆
2人がお風呂からあがると、3人で隣の小屋に移動する。
「どうぞ、たんぽぽコーヒーです」
「ありがとう。気が利くな」
「僕まですみません」
そう謝りつつ、嬉しそうなテオ。多分たんぽぽコーヒーがお気に入りなんだよね。
お風呂上がりだし、出来ることならこれに牛乳を足して、コーヒー牛乳にしたいんだけどなぁ。牛を飼えない経済状況が恨まれる。
「ふぅ〜。落ち着くな」
「ありがとうございます。あの、それで、初シャワーはいかがでしたか?」
「もちろん最高だったさ!」
お兄様の、光の速さでの返事に驚く。よっぽど気に入ってくれたのかな?テオを見ると、ニコニコしながらガッツポーズをしている。うん、2人とも気持ち良かったらしい。
「この手軽さなら、急な来客があっても使いやすい。素晴らしい発明品だ」
「お褒め頂いて嬉しいです。では、大浴場にはシャワーを設置するということで」
実際に体験してもらったのが良かったのか、トントン拍子にシャワーの設置が決まりそう。と思ったが、
「あの〜。でもコレ、レオナ様の魔法ありきですよね?レオナ様に常時対応いただくわけにはいきませんし、シャワーって魔法なしで再現することは出来るのでしょうか?」
そろり、という風に、テオが手を挙げながら、申し訳無さそうに意見する。
「あ、うん。穴を開けた小さめの水瓶を天井に吊るせば、なんとかなると思うよ。まぁ、水瓶に供給するお湯は私がホットウォーターで出すことにはなるかもだけど。でも最初に大量に補充しておけば、付きっきりじゃなくても大丈夫だから、負担は少ないよ!」
本当は、「お湯の出方は、魔法と比べたら荒いだと思います」と説明すべきだか、あえて黙っていた。比較対象があるレオナやお兄様、テオは別として、初めて使うシャワーがそれなら、特に不満に思うことはないだろうから。
「成る程な。___まぁ、色々やってみるとしよう。」
少し、いや大いに説得力に欠けたみたいだ。まぁ、百聞は一見にしかずというし、お兄様が言う通り、まずは作ってみてから考えるとしよう。試行錯誤するうちに、もっといい方法を思い付くかもしれないし。
そういえば、前世で見たお風呂を題材にした映画があったよね。あれは、古代ローマ人の主人公が、私が前世で過ごしていた世界にタイムスリップして、そこで見たアイデアを生かしたお風呂を作る、という物語。
あの映画では、シャワーは確か······。そうだ!たしか、動物の腸をホース代わりにしていた。そのホースの先端を少しいじれば、水瓶より良いシャワーが出来るかも。
「はい。試しにいくつか作ってみて、またご相談したいと思います」
コンコン
「失礼します。お手伝いに参りました」
切りがいいところでやって来たのは、カイルとカリン。いつものように、ポーション生成のお手伝いに来てくれたようだ。
「ちょうど良かった。カイル、カリン。君たちも知恵を貸してくれ」
「「?」」
小説情報の中で、【10万字程度で完結予定】とご紹介しておりましたが、もう少し長くなってしまいそうです。少しずつですが、完結には近づいておりますので、もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。




