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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
53/80

第53話 私の天使



「お母様、準備はよろしいですか?」


 レオナの右手には、中級火傷なおしポーション。母シャロンの背中の火傷を治療するために作ったものだ。


「すぅ〜。よし、いいわよ」


「では失礼して、いきますよ」


 ベッドにうつ伏せ状態のお母様に、少しずつポーションをかけていく。ベッドにも少し滴るが、今は仕方ない。


 シュワシュワシュワシュワ


「え?」

 ポーションをかけたところから、ドライアイスみたいな煙が出てきた。もしかして、何か間違ってた?でも材料は火傷なおし草と水だけ。間違いようがない。


「ううぅ」


「ごめんなさい。痛みますよね」


 お母様のうめき声に、顔が青くなったレオナは、思わず手を止めてしまう。


「大丈夫。だからやめないで」


「でも······」


 ポーションをかけただけで痛みが出るなんて、想像していなかった。覚悟が出来ていなかったレオナは、手が震えてしまう。


(どうしよう。もし、何か間違っていたとしたら、このまま続けるのはまずい。でも、これが失敗作かどうかなんて、どう見分ける?あ〜、鑑定スキルに物の鑑定機能があったら良かったのに)



 そうやってウダウダ考えていると、自然と煙も消えた。一瞬ホッとしたが、すぐに罪悪感が襲ってくる。申し訳なくて、今にも涙が出てしまいそうだ。


 駄目だ、私が泣いちゃ駄目だ。


 そう思って目を拭うと、視界がクリアになり、今までボヤケていた患部がハッキリ見えた。


「あ、キレイになってる」


 思わずつぶやく。みみず腫れのように腫れていたのが、綺麗サッパリ無くなっていたのだ。レオナの声を聞いたお母様も、うつ伏せのまま背中に手を当てる。


「確かに。ここだけ腫れてないわ!」


 良かった、ちゃんと効果があるんだ。


 やるしかない。

 ようやっとレオナの覚悟が決まった。


「お母様、もう一度かけていいですか?」


「うん、ありがとう」


 再び少しずつかけていく。


 相変わらずシュワシュワ煙が出るが、今度は手は止めない。


 背中一面にかけ終わる頃には、心身張り詰めていたせいで、汗だくになっていた。


「どうですか?」


 汗をぬぐいながら尋ねる。見た目には完全に良くなっているけど、どうだろうか?


「とっても楽よ。本当にありがとう」


 普段気丈に振る舞っているお母様が、ポロっと涙を流した。


「良かった。良かったです、お母様」


「ありがとう。あなたは私の天使ね」





◆◇◆◇◆





 しばらくお母様と抱き合って泣いたが、「レオナ、お父さんを呼んできてくれる?」と、笑顔のお母様に言われたので、「では、カイルに頼みますね」と答えた。


 部屋のドアを開け、レオナと部屋に来てからずっと、ドア横に待機してくれていただろうカイルに声をかける。


「カイル、中級火傷なおしポーション、大成功だったよ!お父様にも報告したいから、探して呼んできてくれる?」


「承知しました」


 カイルの少し目の縁が赤くなっているように見えた。部屋の中の声が聞こえていたのかもしれない。



 しばらくすると、ドタドタと音が聞こえる。きっとお父様が、走ってこちらに向かって来ているのだろう。


「ふふっ。あの人ったら」


 お母様は、そう言いながらも嬉しそうだ。




「あ、お母様。これも試していただけませんか?」


 いけない、これを渡すのをすっかり忘れていた。中級麻痺なおしポーションだ。 


 お母様の状態は麻痺(大)なので、中級ポーションで完全回復は難しいだろうが、少しでもマシになればと思い生成したのだ。


 さっきは身体に直接かけたけど、これは飲んでもらおう。


 ポーションを手渡すと、お母様はグビッと勢いよくそれを流し込む。意外と大胆なんだな。


「うん、良くなった気がするわ」


「鑑定してもいいですか?」


「ええ」


「鑑定」


_________________

対象者:シャロン=グライスナー


レベル32(3333)


SP120/120(7500)


体力 :70/220(3333)

MP :410/420(9999+)

攻撃力 :19(150)

防御力 :32(150)

攻撃魔法:39(500)

防御魔法:150(750)

俊敏性 :159(250)

幸運値 :1011(7500)



状態異常:麻痺(大)


属性  :農業  レベル17▽

     魔法付与 レベル_▽


─────────────────



 あぁ。残念だが麻痺(大)はそのままだ。やっぱりそう都合良くはいかないか。


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