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第51話 心強い協力者

第49話の続きです。


「お母様の魔法属性は、ランクSSS 【魔法付与】。教会が把握する中で、最も珍しい魔法適性です」


 みんながヒュッと息を呑む。




「____それで、その珍しい魔法付与スキルでは何が出来るんだ?」


 

「······」



「「「······?」」」



「ごめんなさい。それはまだ、鑑定スキルのレベルが足りなくて」


「そ、そうか、それは残念だな」

 

 明らかに残念そうなお父様。申し訳ない。


「名前から想像するに、人または物体に魔法を付与出来るのでしょうけど」


「まぁアーサーの言う通りだろうな。問題は、いかなる条件で、どのレベルの魔法を付与できるか、だな。なぁレオナ、シャロンが魔法付与スキルを習得するには、何が必要かな?」



「今は魔法付与スキルの素質が確認出来ているだけで、まだ習得可能な状態ではないので、まずはお母様の魔法レベルを上げると良いかと思います。あとは、私の鑑定スキルのレベルアップでしょうか」


「しかし、今の母上の体調ではこれ以上魔法を使うのは難しいでしょうから、まずは麻痺と火傷を治療する必要がありますかね」


 お兄様の言う通り、まずはお母様の体調の回復が先だろう。幸い、鑑定スキルのお陰で、今まで不明だったお母様の体調不良の原因が分かった。私には薬学スキルもあるし、きっとやりようはある。



「そうだな。ではレオナ、まずはシャロンの治療を頼めるか。治療が完了次第、シャロンは魔法レベルの、レオナは鑑定スキルのレベルアップだな」


「はい、「ちょっとまって!」


 お父様の言葉に何の疑問もなく了承の返事をしようとしたレオナの声をかき消したのは、お母様の切羽詰まった声だった。


「あなた達、魔法付与の話ばかりだけど、私とレオナの気持ちはどうなるの?特にレオナはまだ子どもよ。治療や鑑定より他にやりたいことがあるはずでしょう!?」



「うっ」と気まずそうにするお父様とお兄様。


 焦ったお父様は、ベッドに横になったままのお母様に、「いや、私はシャロン、君の体調が良くなればと思ってだな」と必死に弁解している。


 一方お兄様は、「私は少々気が高ぶっておりました。ごめんな、レオナ」と潔い。


「あなた、私のことは良いですからレオナの好きにさせてあげて。だいだい鑑定は、州都で受けることもできるのでしょう?麻痺や火傷だって、エリスに頼めばできるかもしれないわ」


「それもそうか。エリスにも治療はできるだろうか」




「麻痺の治療には上級ポーション生成のメインスキルが必要です。エリスにも習得は出来るかと思いますが、まずは下級ポーション生成のスキルの習得から始める必要があるので、お時間がかなり必要かもしれません」


 分かりやすいように、スキルボードの情報を書き出して説明する。


▽薬学スキル

○メインスキル

_________________

下級ポーション生成(習得済) 


薬草を使って下級ポーションを作る 

消費MP3



中級ポーション生成(SP0/30) 


薬草を使って中級ポーションを作る 

消費MP3


_________________


「ふむ。それだとシャロンに、長い間我慢を強いることになってしまうな」


「では、やはり上級ポーションは私が生成します。今までだって、余った魔力は薬草栽培に充ててきましたし、問題ないです」


「いいえ、なりません。私だって今まで10年以上この生活をしてきたんですから、あと数年どうと言うことはないわ」


「私が」「なりません」「シャ、シャロン」

 3人でワーワー言い張るだけで、決着がつかない。


 意外かもしれないが、グライスナー家で最も強い発言力を持つのはシャロンお母様だ。だから、シャロンお母様VSアレスお父様+レオナだと、発言力が拮抗(きっこう)してしまうのだ。




「ちなみにあれだよな、レオナのやりたいことって【グライスナー領湯浴み所建設計画!】だよな」


「うっ、なぜご存知で」


「何故って州都に行く途中、楽しそうに話してたじゃないか」


「恥ずかしいですお兄様。でも、そうなんです。グライスナー領に領民なら誰でも湯浴みできる大きなお風呂、大浴場というものを作りたいのです」


「お風呂ってあれだよな、裏庭の小屋にある」


「はい、それです。是非今度お父様お兄様にもお使いいただきたいです。お風呂は温かくて気持ちいいだけではなく、疲れを癒やしたり、身体を清めることで病気を予防したり、美容効果なんてものもあるんですよ」


「疲れを癒やす!?」

「病気を予防!?」

「美容効果!?」


「はい♪」


「そんな素晴らしいものがこの世にあるとは。ん゙ん゙ん。そうだな、ではすぐに作ったらいいではないか。ジャンとガッツに頼めば、すぐに出来るだろう?」


「箱物はすぐに作れても、運営に人手が居るんだよな?」


「そうなんです。受付係や掃除係は常に施設内に居てほしいですし、タオルや石鹸を作ったり、使用後のタオルを洗濯したりと裏方にも人手が要ります。あとは、お風呂にお湯を溜めるだけでも大量の魔力が必要なので、私1人の魔力で足りなければ他の水属性魔導士にも協力してもらうことになりますね」



「ふーむ、それは今のグライスナー領では難しいな」


「えぇ、それは自分でも分かっています。でも諦めきれなくて」


「___協力するよ」


「え?」


「協力する」


「それはどういう?」

 お兄様がお掃除係になるとか、そういう意味?


「手伝ってくれそうな奴に声かけてみるよ。毎日は無理でも、月に1回だけ解放して、その日だけ手伝ってもらうとかなら協力してくれる奴は居ると思う」


「お兄様······」


「それに、後出しで申し訳ないけど、俺からもレオナに協力して欲しいことがあるんだ」

 

 そういうと、お兄様はお父様の方を向き、「後で父上に報告するつもりでしたが、トルスタイン領から大量のポーションの発注が入りました。何やら武術国家エジンとの国境付近が怪しいらしく、万が一に備えたいと。これに対応するならば、レオナの協力が不可欠です」と神妙な面持ちで報告した。


「何?隣国が?私が知る限り、今まで小競り合いは無かったのだがな。だがまぁ、そうと知っては協力しないわけにはいかないだろうな。___となるとやはり、大量のポーション作りと兼ねて、シャロンの治療もレオナにお願いしたい」


「はい、私は構いません」


「___わかったわ」


「すまんなシャロン。お前の気持ちは痛いほど分かる。でもこの選択が最善なんだ。頑張って元気になろう」


「分かりました」


 そう答えたお母様の表情から滲み出る悔しさ。それを見たレオナまで心苦しくなった。


「よろしい。共に頑張ろう。では、あとは鑑定か」


「それなんですが、魔法付与スキルの開花もやはりレオナがした方がいいと思います。レオナは司祭様から「今後州長から直々に鑑定の依頼があるかも」と言われたとのことですが、それはおかしいと思います。鑑定スキルがない州長がそれを把握しているとなれば、司祭様は州長と繋がっていると判断すべきかと」


 お兄様の説得力のある意見。家族に迷惑をかけたくないお母様の目に涙がたまる。


「なんと。では、シャロンが州都で鑑定を受けた場合は、その情報が州長に連絡がいく可能性が高い、と。そうなれば、州長は間違いなくシャロンに何かしらの協力を要請してくるだろうな。さすがに非人道的な要請はしないと思うが、例えば州都から離してもらえないとか、シャロンの意に適わないことはありえるだろう。やはりレオナの鑑定スキルに頼る方がいいか」


「それが賢明でしょう」



「では、シャロンの治療と魔法付与スキルの習得はレオナに任せる。代わりに、シャロンが魔法付与スキルを習得した後は、家族全員でレオナの夢、大きなお風呂もとい大浴場の建設に協力する。これでいいな、シャロン」


 お母様の心境が心配だったが、「分かりました、私も覚悟を決めるわ!レオナ、これから迷惑をかけるわね。でも、元気になったらお母さん全力で協力するから期待して頂戴!」と、どうやら吹っ切れた様子。母は強し。


「俺も約束する。全力で協力するよ」


「ふふふ。期待してますね」


 実現できないと思っていた《砂漠にお風呂を作る》という夢に協力者が出来た。先に薬学と鑑定のスキルを上げる必要があるけど、1人では到底叶わない夢だと思っていたから、これはこれで一歩前進だ。


 絶対に諦めない。

 決意を新たに、明日からもっと魔法の練習を頑張ろうと思うレオナだった。



第一話から改稿を始めました。大筋は変えず、内容の肉付けが中心です。

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