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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
50/80

第50話 閑話:カリンの休日

【じゃない方】と呼ばれた元聖女候補〜

ランキングに入れていただきありがとうございました!

引き続き短編も書きつつ、サブスキルの更新も頑張りたいと思います!





「【おやすみ】······ですか?」


 執事のロイドさんからの言葉に固まるカリン。


(まさか解雇じゃないよね。私なにかやらかしたかな?)


「そう心配そうな顔をしなくて大丈夫ですよ。あの方が貴方を手放すはずありませんから。レオナ様の粋なはからいだそうで、来週は5日間仕事をお休みしてください。久しぶりに実家でゆっくり過ごされては?」


(良かった。解雇じゃなかった)


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えてそうさせていただきます」






◆◇◆◇◆




 実家の玄関を開けると、「あらあら、カリンちゃんどうしたの急に?」とお母さんが出迎えてくれた。


「あぁ!カリンお姉ちゃんだ!」

「おかえりなさ〜い」

と、弟と妹もバタバタと顔を出してくれる。


 中に入ると懐かしい匂いがして、あ〜実家に帰って来たんだなってなんか安心したんだ。


「ただいま〜。みんないい子にしてた?レオナ様から5日間のおやすみをいただいたの。久しぶりに家で過ごしていいかな?」


「勿論よ!でも、先に言ってくれたらお掃除とかご飯とか準備できたのに〜」


「ううん。私、お掃除も料理も好きだがら、自分の分は自分でするよ」


「そう?まぁ、確かにお母さんよりカリンちゃんの方が料理も掃除も上手だけど」


「そんなことないよ!私、お母さんの料理だいすき」


(お掃除は確かに結構適当だけどね(笑))



「お姉ちゃん〜!遊んで遊んで〜!」 


 マチとミチが抱きついてくる。

 少し歳が離れた2人の弟妹を溺愛しているカリンとその姉を慕う2人は、当然のように仲が良かった。


「まぁ!しょうがない子達ね、全く」


「お母さん、私みんなと外で遊んでくるよ。その前に、はいコレ」


 渡したのはカモミールを瓶に詰めたもの。お母さんにプレゼントしたら?とレオナ様に頂いた。何でもポプリというものらしい。蓋を空けると、ほのかにいい匂いがする。見た目も可愛らしいし、カリンもとても気に入っていた。


「まぁ素敵!これってお花よね?お花を見るのは数十年ぶりだわ〜!うん、良い匂いもするし、瓶に詰めると見た目もオシャレだし、最高のプレゼントね!」


 早速飾っておきましょうと、ルンルンのお母さん。気に入ってくれたみたいで良かった。

 

 こんなに喜んでくれるなら、グライスナー領では特別な日にはお花をプレゼントするのを定番にしても良いかもしれない。例えば、毎年お母さんに日頃の感謝の気持ちを伝える日を作って、その時に花やポプリをプレゼントするとか。


 名前は、そうだ【母の日】なんてどうかな。


 屋敷に戻ったら早速レオナ様に提案してみよう。きっと賛成してくれると思う!







◆◇◆◇◆





「ミチ、マチ、今日は何して遊ぼっか?」


「まどうしさんごっこ!」


「魔導士さんごっこ?」


「うん、こっち!ついてきて!」


 妹と弟に引っ張られて辿り着いたのは井戸。毎日レオナ様が補充をしているものだ。2人によると、最近町の子供たちの中で、この井戸で魔導士さんごっこをして遊ぶのが流行っているんだとか。



「ねーねーカリンちゃん、レオナ様と一緒にお仕事してるってほんとう?お友達みんなに言われるんだよ!「カリンちゃんすごいね!あんな人がお姉ちゃんで羨ましい」って!」


 妹のミチがカリンの服を引っ張りながら言う。

 色々な場所で魔法を披露しているレオナ様は、どうやらちびっ子達の憧れの的らしい。


「ふふっ。ほんとうだよ〜」


 ミチはレオナ様と同い年の6歳だ。


 この甘えた動作も、言葉遣いも、レオナ様と比べると幼く感じる。でも、実際はミチが幼いんじゃなくて、きっとレオナ様が特別大人びてるんだろうな。


「いつかミチも魔法使えるようになりた〜い。井戸に水をバシャーってしたいの〜。そしたらみんな喜ぶでしょう?」


「じゃあ僕は剣士がいい。テオさんみたいにミチを守るんだ!」


(あぁ〜2人ともなんて可愛いんだろう!)


「ふふふ。うん、そうだね。みんなが喜ぶことが出来る優しいミチとマチは、いつかきっと魔法が使えるようになるよ」


 可愛らしい弟妹の絆にほっこりしていると、「カリンちゃん久しぶりね〜。元気にしてた?」と声をかけられた。


「サキおばさんお久しぶりです!はい。お陰様で元気にやってます」


 声の主はご近所のサキおばさん。カリンが働きに出るまでは、よくお世話になっていたものだ。面倒見が良いしっかりした人で、カリンも大好きな方だ。



「レオナ様付きの侍女になったんだって?凄いわぁ〜」


「いえいえ、とんでもないです」


 照れた様子のカリン。サキおばさんはそんなカリンをジーっと見つめたかと思うと、一気に距離を詰め、「ねぇねぇ、レオナ様って聖女って本当?」と小声で囁いた。


「へ!?」


「みんな噂してるわよ。レオナ様が魔法を授かってから、町での生活が劇的に良くなったじゃない?水事情の改善やらポーションでの商いやら、派遣やら。食料の配給の量だって増えたし。いくら魔法を授かったといえど、普通の魔導士1人の力でこんなに劇的に変わるもんかなって。それに見たところ、他の魔導士さんと比べても、レオナ様の魔力の強さは歴然よ」



 カリンも、レオナが領内で小さな聖女と呼ばれているのは知っていた。でもそれは、愛称であって本当に聖女じゃないかと予想されているとは思っていなかったのだ。だから当然、レオナ様とその話をしたことは無くて、何と答えたらいいか分からず、「さぁ、私はそのようなお話は聞いたことありませんね。ははは〜」と、誤魔化すように苦笑いで答えた。



 聖女といえば、聖女だけが扱える不思議な力で、絶対に治療できないと思われていた怪我を治療したとか、あるいは強大な魔物を浄化したとかいうお伽噺を聞いたことがある。草木も生えない土地を一瞬で草原にした、なんて眉唾物の噂もあるが、本当にそんな事ができる人がいるのかな?居るとしたら是非、この国にも来て欲しい。きっと沢山の人が救われるはずだから。



 レオナ様の魔法は確かに凄い。魔力水を発明して誰でもポーションを作れるようにしたり、大量のお水を提供して植物を育てられるようにしたり。


 でも私は、そのためにレオナ様が日々試行錯誤したり、毎日長時間お仕事をされているのを知っているから。


 だからあれは、聖女の不思議な力によるものではなくて、人一倍努力した結果なんだと思ってる。


 つまり、恐らくレオナ様は聖女では無い、···んじゃないかな?


 でもそれは、私が誰かに簡単に口にしていい事じゃないよね。


「そうなのね。あぁ!誤解しないでね。聖女でも聖女じゃなくても、レオナ様にとっても感謝していることには変わりないのよ〜。ただ私達、普段レオナ様とお話する機会がないから、どんな方なのかなって興味津津なだけ。本当はお礼も兼ねてお話ししたいんだけど、いつもお忙しそうだからみんな遠慮しちゃってるの。もし良かったら、お礼だけでもお伝えしてもらえないかしら?」


「勿論です。お伝えしておきますね。きっと喜ばれますよ!」






◆◇◆◇◆




 5日間の休みも、あっという間に最終日。


 夕食後は、お父さんお母さんとゆっくり過ごすことにした。

(今日も元気に魔導士さんごっこをして遊んだミチとマチはすっかり寝てしまった)


「カリンちゃん、いつも仕送りありがとね。お陰であの子達にお腹いっぱいご飯を食べさせることができて、本当に助かってるよ」


「ほんと?役に立ててるなら良かった。私の分はちゃんと自分で残してるから、仕送り分は気にせず使ってね」


「まぁありがとう!いつの間にこんなに立派な子になったのやら。まるで自分の子じゃないみたいだよ。お母さん鼻が高いわ〜」と嬉しそうなお母さん。



 反対に、お父さんは「カリン。お仕事は辛くないかい?」と、心配そうな様子。普段寡黙な父か珍しく話しかけてきたってことは、よっぽどなんだろう。


「辛くないよ!すごく楽しいよ!」


 カリンは、そんなお父さんの心配を吹き飛ばすべく、元気に返事をする。


「アーサー様にもレオナ様も、悪い噂は聞かないけど、無理難題を押しつけられたりしていないかい?特にレオナ様はまだ小さいし、あの年齢なら普通はワガママざかりだろう?」


「全然そんなことないよ〜。2人ともとっても優しいんだから。私は一応、レオナ様のお世話係になってるんだけど、レオナ様は何でも自分でやりたがるの。だからお世話するどころか、お風呂に一緒に入らせてもらったりして、逆に良くしてもらってるの」


「お風呂?」


「身体とか髪についた汚れを、お湯に浸かって落とすんだよ。お花を浮かべたりすることもあって、すっごく気持ちいいの!」


「いいわね〜。お母さんも入ってみたいわ!」


「きっとすぐ入れるよ!レオナ様もいつか領民みんなに使って欲しいって言ってたし」


「楽しみだよ。まぁ、カリンちゃんも無理せず頑張ってね」





◆◇◆◇◆




 こうして、5日間じっくり実家を満喫したカリン。


 今日からまたお屋敷に戻ってお仕事だ。

 ついこの間まで毎日屋敷にいたはずなのに、久しぶりだとなんだか少し緊張してしまうのはなぜだろう。


 ゆっくりお屋敷に向かっていると、そんなカリンの緊張を破る大声が耳に入った。


「カリンちゃん!待っていたよ〜!」


 大きな声で走ってきたのは、庭師のアランさん。


「おやすみ、ありがとうございました。」


「いやいや全然。でもさ、カリンちゃんがお休みの間、使用人達で交代で料理してて。んで当然俺にも当番が回ってきたから、頑張って作ったんだけど不評でさぁ〜。折角作ったのに悲しいよ」



「まぁ〜そうだったんですね。すみません。じゃあお詫びに今日は、アランさんが好きなトマト煮込みにします!」



「まじか!最高だぜ!」



 アランさんはご機嫌な様子で「今日からまたカリンちゃんが作ったご飯が食べられると思うと嬉しい」と泣く素振りをしながら、仕事に戻っていった。そんな大げさな。


(さぁ。アランさんとも約束したし、今日は腕によりをかけてご飯作らなきゃね!)



 アランと会話したことで緊張がほぐれたカリンは、前を向いてしっかりと歩き出す。すると、「カリン、おかえりなさい!!!」と、凛とした声が。


(レオナ様だ!テオさんも一緒ね)



 思わず駆け出すカリン。


「レオナ様、この度はお休みをいただいて、ありがとうございました」


「ゆっくり休めた?」


「はい!」


「良かった〜。あ!今日は一緒にお風呂に入ろうね!」


 ニコニコ笑うレオナ様に癒やされる。


 ここでの生活が、お仕事が、好きだ。


 久しぶりの休みで実感したカリンだった。



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