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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
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第46話 謁見


 翌日、フカフカの布団で寝たおかげで、憂鬱な1日の始まりにも関わらずスッキリと目が覚めた。


 フカフカ布団ってすごいな。前世でも1流は寝具に拘ると言われていたし、お金をかけてもいい部分なのかも。決めた。お風呂建設の後は、フカフカ布団の生産に力を入れよう。


 なんて現実逃避をしていると、いよいよ州長謁見の時間がやってきた。



 いつもより少しだけおめかしをして、お兄様と手を繋いで領主館にいく。お兄様もしっかり髪をセットしていて、いつもは適当に1つにまとめている長い金髪も綺麗におろしている。うん、我が兄ながらキラキラ美少年だ。




 会場につくと、既に4人が集まっていた。

ドキドキしながら州長を待っていると、女の子に話しかけられる。


「初めまして。ミカサ=トルスタインと申します!」


「初めまして、レオナ=グライスナーです」


 水色のドレスを着た、ツインテール元気そうな子だ。


「レオナ様、以後お見知りおきくださいませ。ちなみに、いきなり失礼かと思いますが、後ろに控えていらっしゃるのは、もしかしてアーサー様ではないですか?」


(ん?お兄様の知り合い?)


「お久しぶりです、ミカサ様。先日はお取引いただき、ありがとうございました」


「やっぱり!まさかアーサー様がこちらにいらっしゃるなんて!」


「実は、ファンドン州最南端にあるグライスナー領の領主の長男なんですよ」


「まぁ!そうでしたの!ここでまたお会い出来るとはなんて幸運なんでしょう!アーサー様、また是非我がトルスタイン領に来てくださいませ!」


 すると、ハキハキと楽しそうに話すミカサちゃんを制するかのように、「その話は私から」と、一緒にいた男性が一歩前に出た。白い髭を長く伸ばした風貌が、いかにも秘書っぽい。


「アーサー様。実は折り入ってご相談が。諸事情あり、前回お譲りいただいたあの品を大量に購入したいのです」


「ほう」


 お兄様が短い返事を発すると、興味ナシと判断したのか秘書風の男はお兄様との距離をさらに詰めて、「我らがトルスタイン領が国境付近に位置するのは、アーサー様ならご存知でしょうが、実は最近、隣接するエジン国家の動きがどうも怪しく······」と渋い顔で耳打ちをした。


何やら深刻そうである。


「なるほど。もし宜しければここでは何ですので、この後場所を変えて詳しくお聞かせいただけませんか?」


 お兄様は何か思うところがあったのか、一瞬考えた後、別の場所で商談することにしたようだ。






◆◇◆◇◆





 前世において、【文明】というものは大きな川付近で生まれていた気がするが、博識なお母様に以前聞いた話だと、この世界でもどうやら例外ではないらしい。


 レオナが生まれたこのアルマー王国やその周辺諸国は、コーラル川という巨大な川が文明の中心になっている。


 コーラル川北側を占拠するのは、ユラズィア帝国。人口、領土、財産、技術等あらゆる分野で強い力を有している。


 対して南側は対立が激しい。西側から魔法国家アラリガル、中心に我がグライスナー領が所属するアルマー王国、そして東側に武術国家エジンという3国家が位置する。


 南側の3国家は、より強大なユラズィア帝国への抑止力とするため、お互いに睨み合い監視し合う関係だ。つまり決して友好的な関係ではないが、直接的に争うことは無かった。


 だが、ここにきてエジン国の動きが怪しいという。


 戦でも仕掛けてきそうな素振りでもしているという意味かな?


 だとすると、トルスタインが欲しいのはポーション?トルスタイン領はファンドン州の中で最も東に位置する地域だ。たどり着くまでに時間も経費も掛かる場所だから、行商相手としてはそれほど旨味は無いけど、利益率が高いポーションを大量に買ってくれるのならば話は別だろう。


 まぁどちらにしろ、この話はレオナには管轄外だ。苦手な仕事には手を出さず、領内の水不足と食料不足に力を入れたほうが良い。




「おいそこのお前!」


(私のことかしら?)


「はい?」


(おいおい、いくら貧乏領主の娘だからって失礼すぎやしませんこと?)


「「はい?」じゃない。俺はレッド。お前は名を何と言う?」


 名前と同じ真っ赤な髪の毛を短く揃えた男の子が、そう偉そうに名乗った。態度からして裕福な領地の子なのだろうか?だとしたらここは大人の対応で対応せねば。


「お初に「坊っちゃん!」


 眼鏡をかけたヒョロヒョロとした男性が、バタバタとやってきて、アセアセと謝罪する。普段から大変そうですね。心中お察しします。


「申し訳ありません。普段は落ち着いた方なのですが、いささか緊張されているようでして」


「いえ、お構いなく」


 普段は落ち着いているは嘘でしょと心の中でツッコミをしていると、いつの間にか戻ってきたお兄様がレオナの代わりに答える。構わないと言いつつ、お兄様のこめかみが怒りでピクピクしているのをレオナは見逃さなかった。





◆◇◆◇◆





 ガタンッ

 扉が開く。いよいよ時間だ。


 扉からスタスタと歩いて来たのは、頭に王冠を載せ赤いマントを羽織った州長。なるほどいぶし銀の素敵なオヤジさんだ。


 州長に謁見する前に癖がある人達に絡まれ、既に精神的にクタクタだったが、その圧からか背筋がヒュッと伸びた気がした。


「みなよく来てくれた。我が州の若き宝よ。みなの成長、大変嬉しく思うぞ」


 まるでスピーカーで話しているかのような、よく響く声だ。比較しては失礼だけど、お父様よりも遥かに威厳がある。


「レッド殿、火属性魔法の使い手だそうだな。優秀だと聞いておるぞ。是非将来は騎士として、我が州の発展に尽力いただきたい」


 先程の男の子か。意外と優秀なんだ。


「それからレオナ嬢。そなたの評判も聞き及んでおるぞ。どうやら領民からかなり慕われているらしいな。ここ数年、グライスナー領の発展は目覚ましい。今後も期待しておるぞ」


「は、はい。精一杯努めます!」


 なんと、まさか州長から直々に褒めてもらえるとは。別に褒めてもらうためにやっていることではないんだけれど、こうやって努力を認めて貰えるのは嬉しいなぁ。


 何となくフワフワしてしまったレオナは、その後の州長からのありがた〜いお話も、全て右から左としてしまった。どんなお話だったかお兄様に聞いておこう。




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