第45話 人生初魔導具
「___これが、魔道具なの?」
ドキドキしながら魔導具を扱っているという店を訪れ、30分待ちの末に拝めたポーション生成の魔導具だったのが、コレジャナイ感がすごい。
見た目はなんか前世のビールサーバーみたい。魔導具の上部に薬草と水を入れて、レバーを引くと、ポーションが出てくる仕組みのようだ。
思っていた以上にダサめの外観にがっかりしつつ、折角なので一度使ってみようと思い、店員らしき人に声をかけた。
「すみません、ポーション生成の魔導具を使いたいのですが」
「はい。薬草50枚につき、5,000ダール前払いでいだだきます」
(うっ。使用料たかっ!)
あまりの価格に顔が歪む。
ポーション生成の魔法が使えるレオナからしたら、5,000ダールをドブに捨てるようなものだ。みんなにポーション作りを手伝ってもらって貯めた貴重なお金。こんなことには使えない。
「___失礼。出直しますわ」
「なんだいお子様が冷やかしかい」
舌打ちをつかれたけど、どうしても魔導具に5,000ダールを払う気になれず、いそいそと店を出た。
「レオナ様、どうかされましたか?もしかしてお金足りなかったですか?」
店を出ると、パタパタと追いかけてきたカイルが心配そうな顔で尋ねてくる。
「ううん。ワガママ言って連れてきてもらったのに、何もせずに出てきてごめんなさい。魔導具は使ってみたかったけど、使用料が5,000ダールもして。さすがに無駄遣いかなと思って」
たははと笑って言うと、「そんな。あんなに楽しみにされていたのに」と、逆にシュンとするカイル。
「人生初の魔導具も見れたことだし、それにほら、ポーションなら自分で作れるから大丈夫だよ」
これは本音だ。
あと、あれだけ使用料が高いとなれば、少なくとも価格競争では負けないだろうという事が分かったし、正直満足だ。
「それより!浮いたお金で、卵を産む鶏を買って帰りましょう!卵があればグライスナー領の子どもたちに、栄養のあるご飯を食べさせられるわ!」
「そうだな」
声の主はお兄様。ゆっくりとこちらに歩いてくる。きっと並ぶのに時間がかかってしまったから、迎えに来てくれたんだろう。
ぎゅーとレオナを抱きしめたかと思うと、「偉いぞレオナ!鶏、帰りに必ず買って帰ろうな!」と、涙ながらに叫んだ。
周囲の人になんだなんだと視線を向けられ、思わず赤面してしまったが、これでグライスナー領でも卵を食べられるようになるなら良しとしよう。
◆◇◆◇◆
そしてグライスナー領を出て8日目の夕方、州都に到着。
6日目はオルターナ領のポンズ村、翌日にはオルターナ町で休憩したこともあり、これでも普段よりはだいぶ楽な旅路だったらしい。
きっとまだ幼いレオナを考えてのことだろう。正直身体の疲労は限界だったので、配慮してもらって助かった。
さて、ここ州都ファンドンであるが、お兄様によると、小さなオアシスを中心に栄えた街らしい。さすがにこれまで見てきたどの町とも比べ物にならないくらい栄えていた。
宿までの道を歩くだけでも、グライスナー領との格の違いを見せつけられる。
メインストリートは、お店が建ち並び、食材や屋台だけでなく、服屋やなんと宝石店まで!
じっくり観光したかったけど、宿に着いたらフカフカのお布団を前に瞼が重くなってしまい、そのまま外には出ずに爆睡してしまった。グライスナー領には無い薬草やら野菜やらが買えたかもしれないのに、正直かなり後悔。
でも後から聞いた話だと、旅慣れしているお兄様以外はみんな同じようにぐったりだったみたい。
お買い物は後で楽しむとして、まずは州長謁見。気を引き締めて頑張ろう。