第4話 魔法の練習
コンコン
(もう朝?誰だろう?)
「はぁい」
目をこすりながら返事をする。前世ではそんなこと無かったけど、レオナに転生してから朝起きるのが辛い。
まだ3歳児だし、成長期だからかな?それとも、日課だった入浴が出来ていないからかもしれない。
「レオナ様おはようございます」
この声は執事のロイドだ。
「アレス様がお部屋でお待ちですよ」
「今行きます」
(お父様、早速昨日言ってた魔法の練習してくれるのかな?)
◆◇◆◇◆
コンコン
「お父様。レオナです」
「レオナか。入れ」
「失礼します。お父様、いかがされましたか?」
「レオナ、昨日はご苦労だったな。体調には変わりないだろうか」
お父様の言葉に、私は大きく頷く。元気いっぱいなところをアピールして、早く魔法の練習に取り掛かりたい。
「そうか、良かった。······大事な話があるんだ。実はな、レオナも薄々勘づいているかもしれないが、我が領地は慢性的な水不足だ。この乾燥地帯なうえに、水属性魔法に適性がある者が著しく少ないんだ」
本当に3歳なら気付いていなかったかもしれないが、前世の記憶があるレオナは流石に気づいていた。グライスナー領の深刻な水問題に。
「そこでだ、まだ3歳のレオナには酷かもしれないが、早速魔法の訓練を始めてもらいたいんだが、どうだろうか?」
それは、早く魔法を使ってみたいと思っていたレオナにとっては、最高の提案だった。
「はい、ぜひお願いします!」
よし!これで家族公認で魔法の練習ができるぞ。
◆◇◆◇◆
善は急げということで、急いでご飯を食べて、早速庭先で練習をすることなった。
とはいっても貧乏領主。本格的な魔法授業を出来るような使用人はいないので、講師はお父様だ。
「よし。ではまず私が魔法を実演してみよう」
「はい!」
(うわ〜。今から魔法を使うところが見れるんだ!)
「レオナも知ってるかもしれないが、私は土属性魔導士だ。その私が使える魔法は······」
そう言うとお父様は右手を前に突き出し、そして、「ストーン!」と唱えた。
すると、顔面より大きな石がお父様の手に現れた。なるほど予想どおりだが、前世ではただの空想だと思っていた魔法。それを実際に目に出来るとなるとやっぱりワクワク感がやばい。
続いて、「ストーンウォール!」と唱えると、
ズズッ
一瞬にして土壁がそそりたつ。
「すごーい!凄いですお父様!」
こちらは打って変わって迫力が半端ない。
「ストーンショット!」
拳大のゴツゴツした石がビュンビュンと風を切って真っ直ぐに飛んでいく。
「カッコいい······」
「このように、攻撃・防御系の魔法ばかりなんだ」
レオナの反応に満足したのか、お父様は得意げだ。
「ただ領内の土属性魔導師には、レンガ生成という土からレンガを作ったりと私ができない魔法が使えるが、反対に攻撃魔法は一切使えないという者もいる。要は同じ土魔導師でも扱える魔法は異なるということだ」
「なるほど」
「ただし【ストーン】は、私が確認する限り全員が習得している」
「ほうほう」
(恐らくストーンは、水属性魔法でいうところウォーターみたいな、基礎魔法なんだろうな)
「我が領内の水属性魔導師は27名しかいないが、その全員が《ウォーター》の魔法が使えるんだ。だからレオナもこの魔法が使えるのではと思っている」
「はい、お父様。恐らくウォーターなら使えると思います。使ってみてもいいですか?」
(しまった。ウォーターのスキル内容を確認してくるの忘れた。まぁ基礎魔法だし、威力も消費MPもわずかだろう)
「あぁ。試しにその水がめでやってみよう」
丁度よく、普段生活用水を貯めている水がめが近くにある。近づいて、水がめの底に向かって上から両手を突き出し、「ウォーター!」と唱えてみる。
瞬間、両手の間から水がバシャーとでてきた!
約10秒程で、水が止まった気がする。初めての魔法は、MP消費の感覚なのか、頭がクラッとした。
しばらくすると、心臓がバクバクしてくる。
(本当に私にも魔法がつかえるんだ)
水がめの中をみると、自分の身長より大きな水がめが1/5程水で埋まっていた。おおよそ10リットルくらいだろう。
昨日確認したコールドウォーターものスキルも10リットルだったし。
ウォーターを追加で4回唱え、水がめをいっぱいにしてみた。
見上げたお父様はニッコニコだ。
「レオナ。ウォーターの魔法は、一日に20回しか使ってはいけないよ。昔、頑張りすぎて、2週間寝込んだ人がいたんだ」
(確かにMP22じゃ20回くらいしか使えないよね)
「はい、お父様」
「よし、じゃあ残りの15回は好きに練習していいよ」
「分かりました。では、庭師のアランにお手伝いを頼んでよろしいでしょうか」
(折角だから薬学スキルも使ってみたいもんね)
「アランかい?じゃあ午後一番にレオナの部屋に来るよう伝えておくとしよう」
「ありがとうございます。お父様」