第33話 新スキル創造part1③
《薬学スキルがレベル30にアップしました。新しいスキルを習得できます》
(来た!)
急いで自室に戻り、スキルボードを確認する。
「やばいやばいやばい」
「スキルが」
「すっごく増えてる〜〜〜!」
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
カモミール栽培のスキルを習得してからというもの、レオナはテオの協力を得て、その他の植物の栽培スキルを習得できないか実験してきた。
カモミール栽培のスキルを習得した時と同じように、思いつく限りの植物を思い浮かべながら、
「大根栽培〜!大根栽培〜!』
「玉ねぎ栽培〜!玉ねぎ栽培〜!」
と、詠唱を繰り返してきたのだ。
その涙ぐましい努力の結果がこちら。
まず、新たに習得可能となったスキルは、たんぽぽ、ローズマリー、シソ、ハトムギ、イネ、月見草、大根、かぼちゃ、なす、きゅうり、生姜、ネギ、人参、玉ねぎ、ほうれん草、白菜、さつまいもの栽培だ。
逆に試したが、習得出来なかったのは、小麦、白米、大豆、ピーマン、ブロッコリー、レタス、えのき茸、しめじ、しいたけの栽培スキルであった。
両者の違いはなんとなく想像がついている。
実験の際、例えばスキルを習得できた《たんぽぽ》なら、利尿作用がある薬草だと思い浮かべながら詠唱していた。
しかし、習得出来なかった《小麦》等の場合は、これらの植物が持つ効能が分からなかった。なので、とりあえず滋養強壮を思い浮かべていたが、恐らくこの効能はハズレだったと思われる。
ただし、予想外だったのが、習得できた《ハトムギ》だ。
実は《ハトムギ》も、小麦同様効能が分からなかったのだ。
なので試しに、『ハトムギ、玄米、月見草〜』と頭の中で歌いながら詠唱したのだが、何故か習得でき た。
これらの事から推定するに、スキルを習得できる条件は
①具体的に効能を思い浮かべることができるか
または
②自分が薬草だと認識しているか
なのかもしれない。
◇◆◇◆◇
今日は、実験が一段落し、時間に余裕が出来たので、ガッツに仕事を頼みにきた。
かぼちゃ、大根の栽培が出来た時のために、ピーラーをあらかじめ作っておきたいと思ったからだ。
「じゃあこんな感じで、簡単に皮が向ける調理グッズの試作をお願い」
「了解です。早速取り掛かりますさ」
「よろしくね」
(さぁこの後は何をしようかな?MPも余裕があるし、ポーションを作ろうかしら)
「テオ、ポーション小屋に行きましょう」
と言ったところで、ガッツに呼び止められた。
「あ〜レオナ様、少し聞いてもいいですか?」
「ええ。どうかされましたか?」
「いやなんだ、最近そろそろ州都派遣の第三弾があるんじゃないかって噂があるんだが、その件でちょっと」
「そうなんですね。実は私もあまり詳しくないんですが、そろそろそんな時期だと思いますよ」
実は、州都派遣の事業に関しては、日程や人員の選抜等を含め、全てお父様に一任している。
政治的なことは良く分からないし、まだまだ子どもの自分が意見したところで、説得力なんてないと自覚しているからだ。
それよりも、少しでも水を多く住民に届けたり、ポーションを作って費用を捻出したり、自分にしかできないことに時間を使いたい。
「ひとつお願いなんだが、息子のカイルを行かせてやってもらえないだろうか?あいつ、テオさんみたいな護衛騎士になりたいって、毎日鍛錬してるんだよ」
「カイルが!それは私としても嬉しいです!ただ、募集要件が20歳以上なので、次回は厳しいかと思います」
ガッツの息子であるカイルには、レオナの4歳の誕生日プレゼントに、ちゃんとしたお風呂を作れと助言して貰った恩がある。
そんなカイルが、将来護衛騎士として働きたいというのであれば、是非応援したいのだけれど、今回の話はレオナの力では難しそうだ。
「あぁ、だから、カイルの分の費用は俺が出すよ。流石に、カイル一人で州都まで行かせるのは不安なんだ」
なるほど。費用は自費で出すというのであれば、一考の余地はありそうだ。
「まぁ!確かに自費でということなら、可能性はあるかもしれませんね。お父様とお兄様に相談してみます。が、期待はせずに待っていてください」
「自分からもお願いします、レオナ様。訓練は自分が面倒みますんで」
テオも、カイルが自分のようになりたいと言ってくれて嬉しいのだろう。いつになく必死だ。
「レオナ様、テオさん、どうかひとつお願いします」
頭を下げるガッツ。しょうがない。ガッツにはいつもお世話になっているし、ひとつ頑張ってみますか。
人物紹介〜1人目〜
名前:レオナ=グライスナー
年齢:3歳→5歳
魔法:水属性魔法、薬学スキル
特徴:大きな猫目が特徴的。色白。軽いウェーブのかかったゴールデンブロンドの髪は、肩下に揃えている
その他:前世の記憶がある転生者。水不足の乾燥地帯に生まれたが、前世の趣味であったお風呂を堪能するため、日々努力をしている。