第28話 もしかしてお風呂好き?
ガッツの作業小屋を出た後は、普段通り水補充の仕事に行かなければならない。
「じゃあガッツ、また来ますね」
と、お暇しようとしたところ、ガッツの息子カイルが一緒に行きたいと申し出てきた。
テオが問題ないと判断したため、今日は3人で領地を回る。
「あの、レオナ様、親父に魔法を与えて下さってありがとうございます」
歩き出して早々、カイルが口を開いた。
人見知りそうなのに、一緒に来たいと言い出したのは、これを言いたかったからなのかな。
「いえ、私は趣味のポーション作りをしていただけですから」
それに、助かっているのはこちらの方ですし、とニコッと笑いながらつけ加える。
その後も世間話をしながら移動。しばらくして、屋敷側の井戸に着く。
いつも通りテオに抱っこされながら、水を補充する。もう少し身長が伸びれば、このような恥ずかしい思いをしなくても良くなるのになぁ。
「そういえば、先程ガッツさんに何をお願いされたのですか?」とテオ。
「私専用の水がめです。お湯をためて、お風呂として使おうかと思って」
「お風呂······ですか?」
「はい。異国の地には、温かいお湯に浸かって、皮膚から出る垢や、髪の毛についたゴミや皮脂なんかを落とす風習があるそうです。ご存知ないですか?」
「私はこの国の生まれなので、異国の風習には疎くて。しかしレオナ様は物知りですね〜」
へぇ〜くらいの反応とは反対に、今度はカイルが前のめりで尋ねてくる。
「その水がめって何処に置いておくんですか?」
「えと、当面は私の部屋ですかね」
「異国の方も自分の部屋に?」
「いえ、異国の方は、それ専用のお部屋を作っているそうです。水がめに入れるお湯の量が多すぎると、浸かった時にお湯が床に溢れたりもしますからね。床が濡れても問題ない部屋の方が都合がいいのです」
「その話、もっと詳しく教えてください!!!」
「は、はい!」
その後もお風呂について根掘り葉掘り聞かれた。
(びっくりした、カイルってこんなに喋るんだ。でもこんなにもお風呂に興味を持ってもらえて嬉しいな)
「ふふふ。いつか、ちゃんとしたお風呂が完成したら、カイルもお呼びしますね」




