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第13話 兄アーサーの帰還




 翌日も、庭師のアランと一緒に屋敷傍の井戸に行く。


 今日もアランに抱っこされながら、「ウォーター!」と唱え、井戸に水を注いでいく。


 するとすぐに違和感を感じた。


「あれ?もう水嵩がこんなところまで」


 アランも気づいたようで、「本当ですね。どうやら、元々水が余っていたようです」と言いながら、レオナを下ろした。


「水が領地内に行き渡ったとは考えづらいので、この井戸の水量が多いことを皆さんご存知ないのかと。屋敷に戻ったら私からアレス様にご報告いたします」


「うん、よろしくお願いします」


 他の井戸を補充することも考えたが、この井戸のことが周知されたら、ここの補充で手一杯になりそうなので、先を見越してやめておいた。


(予定より早いけど、屋敷に帰って薬草畑のお手入れをしよう)




◆◇◆◇◆





 屋敷につくと、何だか騒がしい。騒ぎの中心に近づくと、輪の中心に居た人物がレオナに向かって駆け出してきた。


「レオナおかえり〜!元気にしてたか〜?それにしても、相変わらずちっこくてかわいいなぁ〜」


 レオナを抱えながら振り回したり、頭をナデナデしながら話すのは、兄のアーサーだ。どうやら兄が1ヶ月ぶりに行商から帰ってきたから、皆でお出迎えをしていてこの騒ぎだったらしい。


(流石はお兄様。人気者なだけある)


 少し年の離れた兄のアーサーは、正直かなり容姿が整っている。スラリとした体型に、長く伸ばした金髪が映える。甘いマスクに明るい性格とくれば、人気者にならない訳がない。


 人タラシなのとシスコンなのが玉にキズだが、兄として、1人の人間として、レオナはアーサーのことをかなり気に入っていた。


「おかえりなさい、お兄様。レオナは元気です」


「そうかそうか、良かったなぁ!あれ?」


 そう言うと、兄は怪訝な顔で、レオナとアランの顔を交互に見る。そして、「レオナは外に行ってたのか。まだ3歳だし危ないんじゃないか?」と、責めるような口調で言い放った。


 アランは間髪入れず、「昨日から、屋敷傍の井戸の補充をレオナお嬢様にしていただいているのです」と答える。何もやましいことはしていません、と言いたげな表情だ。お気の毒に。


 若干シスコン気味の兄のことだから、アランへのお説教が長くなるのではと思い、とっさに話を変えることにした。


「お兄様、裏庭にレオナの畑がありますの。良かったらご覧になってくださいまし」


「畑!?すごいなレオナは!よし、さっそく裏庭に行こう!」


 案の定レオナの提案に乗ってくれた兄。帰ってきたばかりの兄を歩かせては可愛そうだと思ったが、アランも忙しいだろうから仕方ない。口パクでアランに、「後はお願い」と伝えると、アランは敬礼した。井戸のことをお父様に報告してほしかったんだけど、果たして上手く伝わったのだろうか?





◆◇◆◇◆





 アーサーお兄様と手を繋いで畑に行く。アランとは違い、ひんやり冷たいお兄様の手のひらが気持ちいい。



「紹介します。これが私の畑です!」


「は?」


 アーサーは驚きのあまり、口をあんぐりと開けた。


「私の畑では、薬草を育てていますの。どうやらポーションの材料になるようなんです!」


「は?この畑全部をレオナが世話してるのか?しかも植えているのは薬草だって?」


 引き続きフリーズ気味のお兄様。畑に植えてあるのが、野菜ではなく薬草であること。そして、畑の大きさに驚いたようだ。



「種を撒くのは私一人ですが、水やりや収穫はアランにも手伝ってもらっています」


「そうか·········」



 その一言を最後に、珍しく静かになった兄とともに、薬草の収穫と水やり、それから本日分の【薬草栽培】の魔法も忘れずにした。


 収穫した薬草は、乾燥させるため小屋の中に干していた。今日も同じようにアーサーと共に小屋に運ぶ。


 その作業中、早々にテンションを取り戻したアーサーが口を開く。


「なぁ、レオナ。こんなに大量の薬草、これから何に使うか決まってるのか?」


「はい。実はこの薬草を使って、自分でポーションを作れないか、実験をしてみようと思っています」


「ポーション!?そんな難しいもの、作れるのか?」


「いっいえ。でも練習したら、いつか作れるようになるかなぁ〜と」


「すげぇなぁ!もし本当に作れたら、高く売れるぞ〜!」


 そうなのだ。ポーションを作ろうと思ったのは、汚い話だが実はお金目当て。屋敷にはお風呂がないため、新しく建設するための費用が必要なのだ。それをこのポーションで稼ぎたい。


 日々の練習の成果もあり、ステータスレベルがあと1〜2程上がれば、下級ポーション生成が習得できそうなところまでSPが貯まっていた。充分現実的な話だと思っている。


「よし、じゃあそんな勉強熱心で、可愛い可愛いレオナのためだ。今度行商のついでに、ポーション生成用の道具を買ってきてやるよ」


「本当ですか!?」


「あぁ!」


「やったぁ!お兄様、だいすき!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。


(これでポーション生成の準備が整った!上手くいけばお風呂建設も夢じゃないよね!うん、これからもがんばろう)



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