第12話 レオナのお仕事
「ささ、レオナ様帰りましょう。折角だから少し寄り道して帰りますか」
マリーの実家を後にすると、帰り道がてら、アランが抱っこしながら領内を案内してくれた。
まず、街の形は円形に近いんだとか。その中央にメインストリートがあり、この付近には食料品や衣類等を売るお店が点在するらしい。
レオナが住むお屋敷は、メインストリートの西側に位置するようだ。そして現在地、マリーの実家付近は、メインストリートの東側なのだそう。
アランに付いて歩きながら、辺りをキョロキョロしてみる。
道に沿って割りと規則的に建てられている家々。石造りだが、結構しっかり作られているように見える。
何故始めに家に注目したのかというと、道行く人が少ないのだ。単純に人口が少ないだけかもしれないが、活気がない。
「町の人達は、あまり外には出ないの?」
「あ〜、この時間は日差しが強いですからね。大半の住民は、朝早く外出して用事を済ませています。それが済んだら、涼しくなる夕方までは家に籠もりますかね」
ただし、元気な子ども達を除いてですが、とアランが笑う。
「そうなんだ、知らなかった······。ねえアラン、他にもグライスナー領のこと教えてくれる?私、あんまり外に出たこと無かったから、何にも知らないの」
「ええ喜んで。ではレオナ様。今見えるこの道が、メインストリートですよ。食べ物や衣類はここで調達できます」
「近くで見ても良い?」
「勿論でございます」
メインストリートを歩きながら思う。あれ店少なくない?
食べ物が売ってるお店も、衣類を売ってるお店も1つしかない。道は広いが、両脇に立つ建物はほとんどか住宅のようだ。
その2店舗の品揃えも微妙だ。
八百屋?の方は、商品はじゃがいもばかり。新鮮なようには見えるけど、じゃがいもばかりじゃどんな料理を作ればいいんだ。
衣類の店にいたっては、なんというか、服が少し傷んでいるように見える。古着なのかな?
「お店はこの2つだけ?」
「そうですね。グライスナー領は配給もありますし、必要なものはこれで足りますね。他に必要なものがあれば、住民同士で物物交換したり、領主様に頼んで行商の際に仕入れていただいたりします」
「じゃあお店が少ない分には不満はないのかな?」
「そうですね······。なんというか、今はそれ以上に切羽詰まっているというか······。今領民が一番望んでいるのは、水なんです」
そう言うと、アランは領地の状況についても詳しく教えてくれた。
要約すると、我が領内には現在約800世帯4500人程が住んでいる。うち、マリーを含め27人が水属性魔導師だ。(今はレオナが魔法を授かり、28人になったが。)そして、この大半が【国から借りている】魔道師なのだそうだ。
お水は、各家庭が共同井戸から汲んでいる。
その共同井戸は、300リットルほど入るものが領内まばらに数十個に設置されているとともに、1000リットル規格も3つ設置設置されているとのこと。
各魔導師で分担して補充しているが、一日に使えるお水は、一人あたり1リットル程度になる計算。明らかに少ない。
このほか、各家庭の玄関先には50リットル程入りそうな水がめも設置してあるのだそう。雨が降った日に、雨水を貯め、生活用水として使うためだ。だが、雨が降ることは少ないため、衣類の洗濯や掃除等が出来る機会は少ないとのこと。
一通り説明し終わると、アランが足を止めた。
「レオナ様、こちらが屋敷に最も近い井戸です。今までマリーが補充していたもので、今後はレオナ様にお願いしたいとのことです」
レオナがマリーから引き継いだのは、屋敷側の1000リットル規格の井戸の補充。アランに抱っこしてもらい、井戸の中を覗く。
暗くてあまり見えないけど、あまり入ってないように見える。この気候だし、恐らく枯れているのだろう。
「ウォーター!」
複雑な気持ちのまま、魔法を使用する。今日はMPをほぼ使い切ってしまったが、ウォーターをレベル2までアップさせていたお陰で、なんとか満杯まで補充。
ただレオナの気分は晴れない。
(領地の水不足がこれほど酷いなんて……。)
魔法が使えるようになり、少々浮かれ気味だったことを反省し、今後は領地のために出来ることを少しずつやっていこうと思うのだった。




