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8 母さんを一突きさせてもらえませんか?

 数百年は生きられると喜んでいた私。ところが、あと十日で殺されるみたい。


 ……何、この転生。

 すでに二回死にかけてるし、ルナティックモードか。

 そもそも、なぜ私とコハルちゃんが殺されなきゃならないの?

 生まれ立ての雛二羽が何をした。


「私達の反した世界の理って何ですか?」


 母さんは私とコハルちゃんを順番に見た。


「お前達が二羽でいるこの現状だ。謝肉の日を迎えられるのは、一つの巣で一羽のみ。他の者に見つかれば殺されると思え」


 他の者、ってことはこの世界樹には他にも同じような巣があるってことか。でかすぎて分からないけど。

 で、やっぱり結局は二羽で生きようと思うことが罪なわけね。

 あれ? じゃあ母さんはどうして許容しているの?


「母さんは私達を殺さないんですか?」

「いつもならそうしている。かつて、二羽の雛が戦いの末、膠着状態に陥ったことがあった。その時、私は躊躇いなく両方を始末したのだから」


 怖っ! 躊躇えよ!


 母さんはもう一度私に視線を移し、言葉を続けた。


「だが、お前達は違う。お前は下の子との争いを避けていた。あれは仕方なく、だろう? そして、新たに生まれたこの子に至っては、逆にお前を慕っている」

「私にも種の本能はありますよ。たぶんコハルちゃんにもね。でも私達にはそれを超える絆があるんです」

「どういうことだ?」

「これは母さんの質問に関係することなので、後で答えます。もう少し教えてください。こっちは命が懸かっているんですから。まず、さっきから言ってる謝肉の日って何ですか?」

「全ての鳥族の子供達が一斉に巣立つ日だ。森中が活気づく」


 そう、巣立ったばかりの若鳥を狙って捕食者達が狂気乱舞する肉感謝祭。鳥肉食べ放題の日。それが謝肉の日である。


 って、うちらの血祭やないかーい! 守肉の日に改めろ!


 けど、皆空を飛んでるわけだし、そこまで悲惨じゃなくない? 的なことを母さんに訊いたら、何をバカなことを言っているんだ、という目で見られた。


「お前達は皆、雛のまま巣立つんだ。進化もせずに飛べるわけないだろう」


 あー……、そういうシステムっすか。

 森中に雛が溢れるわけね。そりゃ肉の祭典だわ。

 ちなみにね、私達【世界樹雛鳥】は強さの割りにとても美味しく、栄養価(つまり得られる生命力やマナ)が高いため、大人気なんだって。

 一週間後の生存率は約一割だそう。

 低すぎでしょ……。誰だ、素敵種族か? ふっふー! なんて言った奴。

 ちょっと待って、下界がそんなに危険ってことは――。


「私達、十日で追放されて生きていけるんですか?」

「まず無理だ。地上に降りて十秒で食われるな」


 やっぱりかーい! どっちみち死ぬんやん!

 本日は突っこみどころ満載のため、関西弁多めでお送りしています。


「大体、十日の期限はどこから来ているんです?」

「全ての雛が集まっての合同訓練が始まる。それが約十日後だ。この最初の日にお役目の者達が各巣をチェックする。雛が複数いれば必ず発覚するだろう。それより、そろそろ私の質問に移れ。お前達の秘密とは何だ?」


 この母さんは……。

 こっちは、何か生きるのに役立つ情報がないかと掘削していたら、核弾頭級の爆弾が出てきて、てんやわんやの最中なんだよ。

 まあ、質問一つの約束はどうなった、って感じだし、私の方もちゃんと答えてあげるか。


「私達の魂はこことは異なる世界から来ました。あちらで死に、転生したんです。名前は前世のものになります。いいですか? 私とコハルちゃんは別世界の出身なんです。この世界の理の外から来たんですよ。だからそれを押しつけるのはやめてください。ほんと、迷惑ですから」


 結局、愚痴になってしまった。鬱憤が溜まっていたこともあり、八つ当たりのように。ごめんね、母さん。おやおや?


「そう、だったのか……。いや、何となくだが、……そんな気はしていたんだ。……だが、まさか本当に。……そうか、押しつけて、すまなかった……」


 ずいぶんショック受けてませんか?

 巨大な母さんがやけに小さく見える。若干だけど。

 いったい何が響いたのか、私はさっきの愚痴を振り返った。

 ああ、世界の理の外から来た、ね。

 これにこだわる母さんにしてみれば、預かった他所の子に厳しくしすぎてしまった! って感じ? えらく律儀だな。


 けど、これはチャンスだ。

 実は私には、一瞬で強くなれるかもしれない秘策がある。ただ、その方法は間違いなく世界の理に反しているし、ゲームならタブー中のタブー。


 一度、コハルちゃんに目を向けた。

 お行儀よく座って私達のやり取りを見守っている。


 ……心は決まった。たとえどんなチートな手を使おうとも、絶対にコハルちゃんと一緒に生き残る!


「分かってもらえて嬉しいです。ですが、この世界の理には正直かなり困っているんです。母さん、少し助けてくれませんかね? いえいえ、難しいことではありません。実に簡単で、すぐに済みます。もったいぶることでもありませんね。では言います。この嘴で、母さんを一突きさせてもらえませんか?」


 母さん、一時停止。

次話、ヒナコがチート強化に手羽先を染めます。

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[良い点] 手羽先で吹いた
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