6 私って、オマケ転生……?
生後七日目。
どうやら私は鳥語が理解できるようになったみたい。これでようやく母さんと会話ができるよ。いやー、めでたい。
え? 感動が薄いって?
まあ、コハルちゃんのことに比べればねー。時間の問題とも思っていたし。それに母さん、喋れても喋れなくてもあんま変わらないのよ。
「あれも無理、これも無理。何だったらいけるんです? 名前くらい教えてください。私達は親子ですよ」
「無理だ。世界の理に反する」
「またそれですか。世界樹鳥だから理を守ってるんですか? ああ、母さんは世界樹鳥じゃありませんでしたね。私も成長したらそれになるんですか?」
「成長ではない。進化だ」
「どうすれば進化できるんです? 条件とかありますか?」
「それは言えない。世界の理に反する」
こんな感じ。
同じことの繰り返しで、仕舞いには、
「うるさいな! お前みたいにあれこれ訊いてくる子は初めてだよ!」
ぶちキレる。まあでも、わずかながら得られる情報もあるし、崩す余地もなくはないから地道にやっていこうと思う。
それよりやっぱりコハルちゃんだよ。ああ、早く二羽でお喋りしたいな。コハルちゃんとお話しできるなんて夢のよう! 生まれ変わってよかった!
技能とかマナとか余計なものもあるけど。
そういえば、コハルちゃんの技能見てないや。
たぶん私と一緒だよね、姉妹だし。
コハルちゃん、少し覗かせてね。
やや? 取得技能から弾かれて進めない。
するとコハルちゃんがコクンと頷いた。
あ、行けました。じゃ改めて。
…………、……ん? ……んん?
「母さん! ちょっと母さん!」
母さんがゴハンを運んで帰ってくるなり駆け寄った。
「また質問か! まったくうるさい子だ!」
「早速キレないでください。母さんはコハルちゃんの技能見ました?」
「あれのことか。私も驚いたよ」
「ということはやっぱり珍しいんですね? 光の属性は」
そう、コハルちゃんは私にない技能を持っていた。
〈光穿突き〉、〈光迅蹴り〉、〈光の翼〉、〈光の眼〉、〈光の歌〉。
そして、〈光抵抗〉と〈闇抵抗〉だ。
「光と闇の精霊は特殊なんだ。扱えるのは一握りの者に限られる」
言った後に母さんは顔を背けた。
どうやら世界の理に関わることで、口を滑らせたらしい。
攻撃スキルは精霊なるスピリチュアルな存在の力を借りる。精霊の力でマナを属性変換してもらうんだとか。
通常、アクセス可能なのは、火、風、地、雷、水、の五種。
なのに、光ですと? 選ばれし者か?
「コハルちゃん、聖女なの?」
尋ねると、彼女は不思議そうに首を傾げた。あぁ、かわいい。
しかしだよ、となると今回の転生のメインはコハルちゃんってことにならない? 鳥から鳥への正統な生まれ変わりだし。
じゃ、私って、オマケ転生……?
聖女の従者となるべく、ついでに連れてこられた的な……?
私はとぼとぼと少し歩き、一羽で風に吹かれた。
……いや、待って。全然ショックを受けることじゃなかった。他ならぬコハルちゃんの従者なんだから。従者としてしっかり守ってあげないと!
私が早く生まれたのもきっとそのためだ。
実際、卵のコハルちゃんを守り抜いたし!
「コハルちゃんは特別な鳥なんだね。私、全力で守るから」
と使命に燃えていると、母さんがため息。
「特別なのはお前もだろう。なぜお前達には最初から名前がある?」
「おや、母さんから質問とは珍しいですね。ですが、それは私達の重大な秘密。簡単には教えられません。――そうですね、こちらの質問への答と交換、なんてどうです?」
「……いいだろう。ただし、質問は一つだけだ」
意外と乗ってきたね。つっぱねられるかと思ったけど。よほど名前のことが気になるのか? だったら、もう少し引き出せるよね。
「本当に大事な秘密なんです。こちらの質問は二つにしてください。私とコハルちゃん、二羽の秘密なんですから」
「分かった……。二つでいい」
よし。で、何を訊くかだけど、やっぱりまずは私達の生存に関わることだ。上手くやれば、一つの質問で複数の謎が解ける。
この母さんは、結構チョロい。
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