表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

4 私マジで素敵種族か? ふっふー!

 生後五日目。

 あ、弟と戦った翌日ね。

 やっぱり自分の能力はちゃんと把握しておかないと、って思うわけだよ、私は。

 まずはあのウィンドウをもう一度呼び出したい。とっさに開いたあれ以来、全然出てくれないんだよね。私の思いで開けたんだから、念じればいいだけだと思うんだけど。

 他に条件でもあるのかな? 思い出せ、昨日は確か……。

 ふと、仰向けに寝てみた。


 開け! ウィンドウ!


 ――何も起こらない。

 いや出ないよ! 出るわけないよ! ひっくり返るってどんな条件だ!

 もう、鳥語が分かれば母さんに聞けるのに。

 とりあえずもっと色々試してみよう。暇だし。んーと、そうだ、合言葉やキーワードかもしれない。

 あの時は、何かないの! って考えた。合言葉とか入る余地なくない? まあ適当にいっぱい言って(思って)みるかな。


 何かくれ! 何かこい! 何か開いておくれ! 開いてくだされ!


 と不意にウィンドウが現れた。

 まさか、開いてくだされ! か……?

 そんなわけない。私は気付いた。まばたき、だ。えっと、一旦消してから、ウィンドウを出す意思で、まばたき。ほら、開けた。

 前回の技能取得ページとは違って、私のステータスが表示されている。

 そう念じたからね。



ヒナコ【世界樹雛鳥】


マナレベル    0


火霊レベル    0

風霊レベル    1

地霊レベル    0

雷霊レベル    0

水霊レベル    0


取得技能一覧



 ん? 私の名前、前世のままか。

 っていうか、ステータスってこれだけ? HPとか攻撃力は? それより、この巨木ってほんとに世界樹なんだ。

 世界樹が家ってすごくない?

 タワマンなんて目じゃないよ。実際、そこまでいいものでもないけど。特典といえば、高所すぎて足を踏み外せば即死確定なことくらい……。

 いや、そういえば私、家族以外の生きてる生物をまだ見ていない。普通はいるよね、外敵が。他の鳥だったり、蛇だったり。あまりに高くて近寄れないのか、あるいは聖なる何かに守られているのか。

 私って実はなかなか素敵な種族に生まれたのかな? 名前に世界樹が入ってるくらいだし。


 あとは取得技能一覧か。

 念じて次のページに進むと、あるのは当然〈風迅蹴り〉だけ。

 ここからさらに技能取得に入る。昨日見たページね。

 ちらっとだったけど、攻撃スキルだけでもかなりの数あった気がするんだよ。

 雛段階からそんなに選べるなんて、私マジで素敵種族か? ふっふー!



取得可能技能               技能ポイント 16P


〈マナ戦闘〉〈マナ感知〉


〈火穿突き〉〈風穿突き〉〈地穿突き〉〈雷穿突き〉〈水穿突き〉

〈火迅蹴り〉〈風迅蹴り〉〈地迅蹴り〉〈雷迅蹴り〉〈水迅蹴り〉

〈火の翼〉 〈風の翼〉 〈地の翼〉 〈雷の翼〉 〈水の翼〉

〈火の眼〉 〈風の眼〉 〈地の眼〉 〈雷の眼〉 〈水の眼〉

〈火の歌〉 〈風の歌〉 〈地の歌〉 〈雷の歌〉 〈水の歌〉


〈攻撃強化〉〈防御強化〉〈敏捷強化〉〈羽毛強化〉


〈火抵抗〉〈風抵抗〉〈地抵抗〉〈雷抵抗〉〈水抵抗〉〈毒抵抗〉



 ……あ、攻撃スキル、実質五つだわ。

 それより、……えらいこっちゃ。私、やってもうてるやん。

 前世では生まれも育ちも東京の私が、思わず関西弁になるほどのやらかし。

 まず、この技能ってじっと見つめていると、効果なんかのイメージが勝手に頭に流れこんでくるのね。

 それで気付いたのよ。最優先で取らなきゃいけないスキルに。


 順を追って説明すると、この世界にはマナと呼ばれるものがある。

 色々と便利に使えるオーラみたいな感じだね。身に纏えば攻撃は威力が上がるし、ダメージの軽減もしてくれる。だけじゃなく、体の機能全般を補助してくれるの。いわば強化スーツだ。着てる着てないじゃ雲泥の差。

 これを着用するための技能が〈マナ戦闘〉で、レベルを0から1にすることで最初のスイッチが入る。

 最優先で取らなきゃいけないスキルだ。

 ちなみに〈マナ感知〉は周囲や向き合った敵のマナを知覚する能力。こちらも重要で、優先順位二位の技能と言える。

 〈マナ戦闘〉と〈マナ感知〉のレベルを足したものが、最初のページのマナレベルになるみたい。いわゆる総合力だね。


 とにかく、〈マナ戦闘〉が一番大切なのは疑いようがない。

 マナは私の体の中を巡っているらしい。これをどれだけ引き出せるかが〈マナ戦闘〉のレベルで決まる。

 言い換えれば、〈マナ戦闘〉は攻撃力であり、防御力であり、素早さだ。そして、全ての攻撃スキルの威力に直結するものでもある。

 ね? めちゃくちゃ大切でしょ?


 私は〈風迅蹴り〉を開いた。

 そこには正式名称、〈風迅蹴り〉レベル1、と表示されている。これの取得に昨日私は100P注ぎこんだ。さらに100P振りこめばレベルは2になる。技能は全部同じシステムらしく、ポイントを使ってどんどん強くしていくみたい。

 で肝心のポイントはどうやって貯めるかというと……。


 自分の羽毛に嘴を突っこみ、中を探る。

 取り出したのは、今朝のゴハン時に残しておいたお肉。日を追うごとに私はもふもふになっている。もう内部に非常食を収納できるほどだ。


 ポイントを睨みながらお肉をついばむ。

 結構な量を食べきってしまう直前で、16Pから17Pに変わった。

 どうにか上がったか。そ、食べることでポイントは増えるのさ。けど思ったよりペースが遅い。生まれた時を0Pって仮定するなら、今までのゴハンじゃ100には届かない気がする。

 考えられるのは弟との戦闘だよね。やっぱ食事より戦闘か。そりゃそうだ。

 ともかく、私は〈マナ戦闘〉に捧げるべき100Pを使っちまったわけよ。



 残りのお肉をたいらげると、私は巣の壁を登った。

 広い世界を見渡す。


 きっと多くの生物が似たような技能システムを持ち、そのほとんどが〈マナ戦闘〉を取得している。私一羽、強化スーツなしで生きていけるわけない。

 巣立ちまであと何日だ?

 もう戦う相手もいないし、ゴハンだけで100貯まるの?

 って言っても、〈風迅蹴り〉を取らなきゃ昨日の時点で死んでたんだよね。攻撃スキルとしては当たりを引いたと思う。この技は相当応用が利く。

 もしかしたら、ここから足を踏み外しても助かるかもしれない。


 なんて思わなきゃよかった。


 前ぶれなしの突風が私の背中を押した。日を追うごとに私はもふもふである。

 ヤバい! これ! 堪えきれな……、い?

 すでに足場はなかった。

 まあ、もう体は巣の外で、あとは落下するのみってこと。


 この刹那、私の脳裏には昨日見た弟の最期の姿が浮かんだ。


 言ってる場合か!

 ぶっつけ本番だけどやるしかない!


 〈風迅蹴り〉逆噴射!


 ビュオ――――……、モフッ。


 下からの程よい風を受け、私は巣の中へと戻ることに成功した。

 ……う、上手く調節できた。危機一髪、だわ……。

 ひっくり返って安堵していると、いつの間に戻ってきたのか、目の前には覗きこむ母さんの顔。すごい形相だ。言葉が通じなくても分かる。

 あんた! なんて危ない遊びしてるの!

 とでも言いたげ。誰も好き好んでこんなことしないよ。

 っていうか、さっきの突風、母さんの羽ばたきじゃないの?


 何にしろあれだわ。

 〈風迅蹴り〉、取得しておいてマジよかった……。

お読みいただき、有難うございます。

評価、ブックマーク、本当に感謝です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ