19 転生したら飼っていたセキセイインコが最強だった件。
思えば我が家も様変わりしたもんだ。
今日一日で広さは闘技場並みに、インテリアも素敵に充実。体長三十メートルのドラゴンが一頭、体長二十メートルのドラゴンが二頭、骸となって横たわっているよ。
……ここは竜の墓場か。
どうしてこうなった?
元々は訓練に適した相手を探そうと思って……、そうだ、母さんがやたら竜推ししてきたんだった。気付けばドラゴン連戦。
よくよく考えてみるとおかしいでしょ。
私達、難敵と言われる【鎧竜】進化形以外の神獣とまだ戦ってない。
……母さんめ、私達をどうする気だ。
巨大な敵とばかり戦って疲れたよ……。
ちなみに、今日はまだ私の生後八日目ね。コハルちゃんが会話できるようになったのも今日だし、コハルちゃんがチート成長したのも今日だ。
し! しまった! コハルちゃんの疲労は私の比じゃないじゃん!
……そんなことにも気付けないなんて、私は姉失格だよ。ほら、コハルちゃん座りこんでうつむいちゃってる。もう限界なんだ。
「ごめんねコハルちゃん! 疲れたよね! もう今日は終わろう!」
「え? 疲れはそれほどないわ。私、これまでの戦闘を反省していたのよ」
「反省……?」
「私はヒナコちゃんの足を引っ張っている。このままじゃいけないわ」
「そんなことないって。さっきはすごく助けてもらったし」
「というわけで、特典を使うことにしたの」
特典、ですと……?
「光の精霊と契約した私は、一度だけ能力上昇の特典が使用できるのよ。ただ、これを使うとヒナコちゃんのステータスを超えてしまうから……」
「やだ、気にすることないのに。使えるものはどんどん使ってよ」
コハルちゃんは「分かったわ」と立ち上がり、瞳を閉じた。
すぐにその体から湯気が上り始める。
私達は互いのステータスを常に閲覧できるよう設定済み。
なので早速確認する。
ちょっとやそっと抜かれたくらいでいじけるような、小さい鳥じゃないよ私は。
てあれ? マナの量、めちゃ上がってない?
ポ、ポイントは……。
コハル【世界樹雛鳥】
―― 中略 ――
取得技能 技能ポイント 1725P
……そ、そこまで上がっちゃうの?
たぶん、っていうか絶対、一羽で下界生き抜けるでしょ。
お姉ちゃんの、存在意義は……?
存在、意義は……?
転生したら飼っていたセキセイインコが最強だった件。
「これくらいじゃとても最強とは言えないわよ。ヒナコちゃんしっかりして」
「……あ、ごめん。つい意識が遠のいちゃった。そうだよね、私達、十日後にはもっと強くなってる予定なんだから。あれ? 今、私の心を読まなかった?」
それにしてもコハルちゃん。母さん一突きチートに、光の精霊特典チートと強くなることに躊躇いがない。まっこと恐ろしき妹よ。
私もあと一回くらいチート成長できないものかねー。苦労してドラゴン倒しても増えるステータスはごくわずかなんだもん。
おや、外出中だった母さんが帰ってきたよ。
「待たせたね! 【鎧角竜】と【鎧毒竜】だ!」
わーい、これで【鎧竜】進化形コンプリートだー。
…………。
げんなり。この一言に尽きるわ。
ってわけで、ここからは少し駆け足で。
まず戦ったのは【鎧角竜】だった。
「あの角マジヤバイ! 触れただけでローストチキンじゃん!」
まあでも、(それほど)ローストされずに勝つことができた。
ほんとにヤバイのは【鎧毒竜】の方だったんだよね。
〈毒の息〉を取得していて、戦闘開始と同時にコロシアム中を汚染してくれた。当然、私とコハルちゃんは中毒に。
「く! 苦しい! ど! ど! 毒が体に! ど! ど! どうしようっ!」
「ヒナコちゃん冷静に。治療の手立てはきっとあるわ」
前世じゃ毒なんて盛られたことないよ。まさに死へのカウントダウンだ。
普通はパニックになるって。異常なほどクールなコハルちゃんがいてくれなきゃ危なかった。
で結局、毒竜を倒した後、そのお肉を食べたら中毒は治った。
なぜか同時に〈毒抵抗〉レベル1が手に入ったんだよ。
ポイント使わずラッキー! って思っていたら、コハルちゃんがね……。
「確か〈毒斬爪〉も放ってきたわね。……あの爪、毒が残っているんじゃない? 爪で体を刺す。肉を食べる。を繰り返せば、どんどん〈毒抵抗〉を上げられるかも。やってみない?」
こんなこと思いつくなんて、まっこと恐ろしき妹よ。
その読みは的中。私達は中毒と治療をひたすら繰り返した。レベルが5になったところで、上がらなくなったため終了。
もうほんと、色んな意味で疲れたよ……。
今日の訓練はここまで。
結構頑張ったよね、訓練初日で難敵の竜五頭やっつけたんだから。
……待った。
私達、かなりすごくない?
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