18 かってーっ! 食えるか!
食べにくい食材って言われて、何が思い浮かぶ? カニとか? あれは美味しいけど大変だよね。何だかかゆくなってきちゃうし。
でも、異世界にはもっと食べにくいものがあるんだよ。
それは、ガルファデオだ。
元から硬い種族なのに、さらに硬くなる進化を遂げたとにかく硬い奴。
カッチカチのドラゴンさ。
全身を鎧鱗と甲鱗という二重の鱗に覆われている。
お肉に辿り着くには、まずこの二重の鉄壁を突破しなきゃならない。
彼は四足歩行なので外側は特に厳重だ。狙うは、普段は攻撃しづらい内側、お腹付近になる。
それでも並みの突っつきじゃ歯が、もとい嘴が立たない。ってわけで、
〈雷穿突き〉っ!
キーン……。
〈雷穿突き〉――っ!
カキーン……。
おお! お肉だ! お肉が出たぞー!
いやもう、何か発掘してる気分だわ……。
とりあえず食べよう。苦労した分、きっとすごく美味しいはず。
いっただきまーす!
…………。
かってーっ! 食えるか!
まるで大型車両のタイヤだ。
食べたことないけどたぶんそれに匹敵する。
隣で見ていたコハルちゃんも一口。
「ヒナコちゃん、これは無理だわ。諦めましょ」
決断早っ。さすが迷わない子、コハルちゃんだわ。
けど、そうもいかないんだよねー。
そもそも彼だって神獣だしお肉だし、食べる人(獣)もいるよね?
「いない。【鎧甲竜】を食べようなんて、バカでも考えないだろうね」
と母さんが断言。じゃ私はバカ以下、いや、バカ未満っすか?
……もういい。
……やってやる。本気でやってやる!
〈攻撃強化〉レベル2!
竜に飛びついた私。漲るパワーでお肉に嘴を突き立てる。そして、引っ張る。
ぐににににに……!
全く切れん! かくなる上は、しっかり足を踏ん張ってー、
〈風迅蹴り〉ジェット!
ぶちっっ!
つ、ついに、やった……。一片のお肉を、手に入れた……。
では改めて、いっただきまーす!
……ああ、全然美味しくない。ってか、なかなか喉の奥に行ってくれない。
続いて二片目に取り掛かろうとする私を見て、母さんがため息をついた。
「なぜそこまでする? お前は底抜けに本物のバカだよ」
ん? 底が抜けたおかげで一周回ってバカに昇格した?
「避けな。私がやってあげるから」
竜のお腹を母さんがこちょこちょとすると、瞬く間に、綺麗に等分されたお肉が並んだ。
これは! 〈風迅蹴り〉!
と! とんでもない技術やー!
さすが八百八十五歳、年期が違うわ。
よし、あとは頑張って食べるだけだ。あ、コハルちゃんも食べる?
「やめておくわ。消化しないと困るし」
ああ、そう……。
母さんとコハルちゃんが呆れ気味に見つめる中、私はどうにか全てのお肉をたいらげた。ふー、何か一戦終えた疲労感だ。誰も食べようとしないはずだね。
生命力とマナが上がっているのを実感。
きちんと融合できたみたい。
「ガルファデオ、せめて私の中で兄さんに会ってね」
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