16 下界、ヤバすぎない?
私の一撃が【鎧魔竜】イリナベラの横っ腹を直撃した。
防御に特性のある種族でも、マナの守りが薄いので威力は絶大だ。巨体がのけぞる。雷で痺れているのか、なかなか体勢をたて直せない。
この隙にコハルちゃんが〈光穿突き〉で追撃。
同じく効果はてきめん。
ついに黒竜は闘技場の地面に伏した。
「コハルちゃん、そのまま仕留めていいよ」
「そうはいかないわよ。さっきも最後の楽なところだけやらせてもらったし。今回こそ功労者のヒナコちゃんでしょ。でも一回目と同じ手加減なしの全力でね」
この子、可愛い顔してなんてえげつない! って一瞬思ったけど、大切な確認事項があったのを思い出した。
どうにか起き上がったイリナベラは氷刃を出現させ、まだ戦う姿勢だ。やられるその時まで絶対に諦めない、という強い意志が伝わってきた。
ほんとに大した女だ。あんたの名前も覚えておくよ。
竜の脚をトトトッと走って背中に乗る。
手加減なし! 本気の〈雷穿突き〉だ!
ドド――――ンッ!
雷鳴と共にまた一頭のドラゴンが生涯を終えた。
その不屈の魂は私達姉妹と融合する。
「一発目も二発目も同じ、11ポイントだったよ。これで振り切った分もきちんとポイント換算されるって分かった。この事実はでかいよ」
「ええ、十日後には大きな差となって出てくる。本当に幸運だわ」
竜肉をついばみつつ、私とコハルちゃんはいつも通りミーティングをしていた。
技能ポイントが増える要因は他にも色々あるんだけど、やっぱりダメージによる上昇が今後のメインになるのは間違いない模様。
それから、生命力とマナは前述の通り、食事による融合ね。今回のドラゴンも私とコハルちゃんとで半分ずつ融合している。大竜の時より、生命力が少なく、マナが多く増えた感覚があった。なお、こちらも増える要因は戦闘での成長など他にも色々あるよ。
では、私達の技能をご覧あれ。
ヒナコ【世界樹雛鳥】
取得技能 技能ポイント 416P
〈マナ戦闘〉レベル7 〈マナ感知〉レベル2
〈雷穿突き〉レベル4 〈風迅蹴り〉レベル1
コハル【世界樹雛鳥】
取得技能 技能ポイント 372P
〈マナ戦闘〉レベル7 〈マナ感知〉レベル2
〈光穿突き〉レベル4
しっかし、巨竜を二頭も倒したのにポイントがあまり上がってない。
そう、1レベル分も貯まってないんだよ。
ドラゴンだよ、ドラゴン。二頭もやっつけたのにしょぼすぎでしょ。〈マナ戦闘〉だけで81万の母さんはいったいどれだけ殺りまくったんだ……。
振り返ると、巨大鳥はまたしてもキラキラした眼差しでこっちを。
「全くもって素晴らしいな! ヒナコ! 奴が製氷技術を備えていたことには焦ったが、完全攻略じゃないか!」
母さんも知らんかったんかい。危うく串刺しになりかけたよ。
実際、地の利がなければもっと大変だったと思う。私達には結構広い闘技場だけど、イリナベラには狭かったんじゃないかな。逃げ場もないし。
たぶんあの子が得意にしているのは、察知されない距離からの狙い撃ち。
ハイドロキャノンとアイスミサイルを受けてみてそう感じた。
歩いていて急にあんなのに狙撃されるとか……、
下界、ヤバすぎない?
鳥(人)の気も知らないで、母さんは「さあ!」と能天気な声。
「次の戦闘を始めるよ! 準備はいいな!」
そういえば、もう一頭いたね。何かゴツゴツした装甲車みたいなのが。
はいどうぞー、出してくださーい。
母さんは今回もしっかり、ついグッと、やった上で竜の呪縛を解除。
はい、新たなドラゴンの入場です。
名前は、えっと、ガルファデオ、ガルファデオでーす。
…………、
……ん? ガルファ、デオ?
……次も嫌な予感しかしないわ。
次は強敵です。ヒナコは仇討ちされてしまうのか。
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