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13 私のどうしようもなかった人生がついに結実したわけだ。

 私はコハルちゃんに目で合図を送った。


 横っ腹を突かれたガルファドルさんは、まだ倒れたまま。何とかその巨体を起こそうとする。


 させないよ、悪いけどもう一回寝て。

 竜の首すじに追撃の〈雷穿突き〉をおみまい。


 再び崩れる彼の表情が驚きに変わる。

 倒れる先にもう一羽の雛鳥が待ち構えていた。その嘴は眩い光を放っている。


 あ、びっくりした? そそ、うちの妹、なんと光属性が使えるんだよ。

 って、そこじゃないよね。ごめんね。正々堂々とは言ったけど、一対一なんて約束はしてないから。


 巨竜の反対側の首すじに、コハルちゃんの〈光穿突き〉レベル4が炸裂。


 シュドン――――――――ッ!



 ――――。

 ガルファドルさんの体からマナの反応が消えた。


 私は彼の顔の前で腰を下ろす。

 初めて私達が倒した捕食者であるあんたのこと、私はたぶんずっと覚えているよ。どうか安らかに。

 私のお祈りが済むのを待っていたように、コハルちゃんが口を開いた。


「ポイントはどうだった?」

「普通の攻撃は1あるかないか、だったね。〈雷穿突き〉の方は5か6、ってところかな」

「私も〈光穿突き〉は6Pだったよ。あまり向いている相手ではないね」

「だね。硬いし、でかいし。絶対もっと稼げるのいるよ」


 戦闘の間、私とコハルちゃんは常に自分の技能ポイントをチェックしていた。

 戦いで得られる経験値。中でも一番大きいのが、相手に与えるダメージによるものなんだって。母さんが言ってた。

 そして、この経験値で一番伸びるのが、技能ポイントらしい。生命力とマナも増えるけど、これらは食事の方が成長するみたいだ。

 実は、今はまだ本格訓練の前段階。

 効率よくポイントを獲得できる敵を探しているところね。もちろん、前に言った通り巣立ち後に遭遇する捕食者の下見も兼ねてる。

 時間がないから色々と同時進行なのさ。


 ところで私達の攻撃スキル、突き、蹴り、翼、眼、歌、ってあるけど、後ろに行くほど攻撃範囲や射程が伸びる。

 逆に言えば、射程は短いけど最も高威力なのが突き技。

 だから私達はこれに極振りして、どんどんダメージ量を上げてく作戦だ。


 コハルちゃんとミーティングを続けていると、母さんがバサッと横に着陸。


「素晴らしかったぞ! ヒナコ!」

「何がです? 今の戦闘がですか?」

「そうだ! 状況判断、神技の使い方、思い切りの良さ、どれを取っても素晴らしい! さらに相手のマナが薄い箇所を的確に狙っていた! 完璧だ!」

「まあ、弱点を徹底的に突くのが私のモットーですから……」


 何このベタ褒め? って母さん興奮しすぎでしょ。

 すると、コハルちゃんも「私も思ったよ」と。


「ヒナコちゃん、絶対に運動神経いいわよ。前は全く動かなかったから気付かなかったけど」


 うん、前世では家でゲームばっかしてたもんね。

 いや、待てよ。不登校になる前、中学の体育はずっと5だった気がする。


「うむ! 間違いなくヒナコには戦いの才能がある!」


 ……戦いの、才能?

 かなり平穏な時代のジャパンでぬくぬく育った私に?

 もしやあれか。色んなジャンルのネトゲで鍛えたゲーム脳と、宝の持ち腐れだった身体能力がたまたま上手くハマった感じ?

 ほうほう、つまり、私のどうしようもなかった人生がついに結実したわけだ。

 もう死んでるけど。



 それにしても中学の体育、懐かしいなぁ……。

 バレーボールとか結構好きだったんだよね。サーブが回ってきたら、向こうの弱点(一番下手な子)をジャンプサーブでひたすら狙い撃ち。ずっと私のターンでウハウハだった。まぁ相手の子、号泣しちゃって可哀想ではあったんだけど。

 いやいや! 全然可哀想じゃないわ!

 だってあの子、その後に徒党を組んで私をいじめに掛かってきたし!


 …………、あれ?

 ……もしかして、いじめの原因作ったの私?

お気付きでしょうが、ヒナコは結構なクズです。

今日はもう一話投稿します。


評価、ブックマーク、いいね、感想、本当に有難うございます。

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[良い点] クズ街道を爆進する雛鳥。よき。
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