12 臆するな! ビビらず戦え私!
戦闘の前に最終調整だ。
「予定通り、嘴をレベル4にするね。あと〈マナ戦闘〉を二つ上げとこうかな。残りは必要に応じて、って感じ?」
「うん、それでいいと思う。ヒナコちゃん、頑張って」
うっし! 妹にいいとこ見せちゃうよ!
ちなみに、私の技能はこうなりました。
ヒナコ【世界樹雛鳥】
取得技能
〈マナ戦闘〉レベル7 〈マナ感知〉レベル2
〈雷穿突き〉レベル4 〈風迅蹴り〉レベル1
いざ、正々堂々と勝負されたし!
私の準備が整ったのを確認すると、母さんは【鎧大竜】のガルファドルさんを放した。
呪縛も解かれた彼(たぶん雄だと思う)は立ち上がり、恐る恐る母さんを見る。
あの子と戦え。さもなくば、今すぐに殺す。
言葉は通じなくても、彼はしっかりそんなメッセージを受け取ったようだ。くるりと私の方に向き直った。
それにしてもガルファドルさん、でかすぎませんか?
大竜と言うだけはある。体長約三十メートル。四足歩行で、ザ・ドラゴンといった容姿は威圧感も半端ない。
片や私のサイズは人間の大人と同じくらい。容姿は愛くるしい雛鳥だ。
……誰が見ても、私がエサとして与えられてる構図だよね。常識的観点からすれば、戦って勝てるわけがない。
でも能力は私の方が上なんだ。
臆するな! ビビらず戦え私!
巨竜に向かって一直線に駆けた。
踏み潰そうと振り下ろされる前脚を、ギュンッと進路変更して回避。
やっぱりね、スピードは断然私に分がある。
さらに、マナを纏った今の状態なら……、五階建てのビルも跳び越せる!
力いっぱい地面を蹴り、竜の顔に嘴で突き刺さった。
どうよ! かなりクラッときたで……しょ……?
ガルファドルさんの大きな目玉がぎょろりと回り、宙に浮く私を捉えた。そして、鋭い牙が並んだ口を開く。
じ! 地獄の釜が開いた! ヤバイーッ!
……なんてね。秘技、〈風迅蹴り〉!
私は空気を足場に難なく釜から離脱。
〈風迅蹴り〉のレベルは1のままだけど、空中機動術としてなら充分使える。
さあ、見せてあげよう。飛べない雛の空中戦を。
〈風迅蹴り〉! アタック! 〈風迅蹴り〉! アタック! ――――。
四方八方から、竜の巨体に嘴や蹴りを打ちこんでいく。
ふはははは、全くこっちの動きについてこれないようだね。
しっかし、名前に鎧が入ってるだけあってすごい防御力だわ。ちゃんと一発一発マナを込めて攻撃してるのに、あまり効いてるようには見えない。
だったら、そろそろ本気のやついっちゃうよ!
ガルファドルさんの真上で私はクルンと回転。
〈風迅蹴り〉ジェットで急降下する。
超秘技! 〈雷穿突き〉――――っ!
ドォン! バリバリバリバリ――――ッ!
竜の背中で稲光が轟いた。
堪らず彼はグワァァと雄たけびを上げる。
さすがに効いたでしょ!
私のキスはめちゃ痺れるのさ。もう一撃いっちゃうよー!
とその時、私の〈マナ感知〉が死角から接近するものに反応した。
とっさに纏っているマナを全開に。
次の瞬間には、再度の稲光と共に私は地面に叩きつけられていた。ガルファドルさんの〈雷の尻尾〉だ。
めちゃ痺れるー! そういや向こうも雷属性の神技持ってたわー!
……んあれ?
けど思ったほどダメージないよ?
首を傾げていると上から母さんが。
「【世界樹雛鳥】の羽毛はマナを通すことで強度と柔軟性が高まるんだ。加えて、火風地雷水への抵抗も上がる。人間達にも素材として重宝されているんだよ」
そっか、私達、お肉は美味しいし、羽毛は高級だし、ほんと大人気なんだね。
……人気者すぎて骨しか残らない予感だわ。待てよ、この流れは骨からもすごいダシが取れたりするんじゃ……?
などと、どうでもいいことを考えていると、ガルファドルさんが炎を伴って突撃してきた。彼のもう一つの技だね。
私は脇にひょいと避ける。
そんな直線的な攻撃、当たるわけないじゃん。あと、今なんか前世のトラウマ思い出しそうになったし。ほんとやめて。(トラックのやつ)
と、巨竜の横っ腹に怒りの〈雷穿突き〉。
「ゴアァァ――――……」
巨竜は再度の雄たけびと共に倒れこんだ。
大分削れてきたみたい。
そろそろトドメとさせてもらうよ。
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