1 次に生まれ変わったら、私も自由に大空を飛ぶ鳥に。
以前の私は、鳥羽内雛子という名の女子高生だった。
女子高生といえば、華やかなイメージを持たれがちだけど、そんなキャッキャウフフな青春とはかけ離れていたのが私の日常。
通っていたのは通信制の高校だったし。つまり通ってない。
基本、家からは出ず、外出は週一で行くスーパーくらいのもの。
私がこんな生活を送るようになったきっかけは、ありがちだけど中学でのイジメが原因ね。って言っても、そこまで悲惨じゃなかった。
悲惨になる前に逃げたから。両親にこう迫った。
「娘を自殺に追いやった加害者を一生恨むか、不登校ながらもゆくゆくは自立した大人に成長する娘を見守るか、好きな方を選んで」
当然、二人は後者を選んでくれた。
嫌なことからはさっさと逃げる。が私の信条。
だって、時間もったいないし。
あと、通学の時間とか、絶対に入らなきゃならない部活動とか(うちはそういう中学だった)、全部無駄に思える。
他の子がそれらに費やす時間を、私はネトゲに注ぎこんだ。
これこそ時間の無駄って言われそうだけど、好きだからいいの。おかげで勉強の時間もしっかり確保できていたわけだし。
ゆくゆくは自立した大人になるために、やることはやってた。
両親に言わせれば、私の思考回路は実利主義に過ぎる、とのこと。
今思えば、その辺りがイジメっ子達に目をつけられた要因かも。冷めた目で見てんじゃねえ! ってめっちゃ言われた。
そんな私だからリアルな友達は一人もいなかった。人間ではね。
唯一無二の親友が一羽いたんだよ。
セキセイインコのコハルちゃんだ。春の新緑を思わせる美しい翼の美鳥。
私達はいつも一緒にいた。なんせ私はずっと家にいたからね。
そんな私達に、ある日、悲劇が。
窓の隙間からコハルちゃんが逃げちゃったんだよね。
もちろん私は追いかけたよ。コハルちゃんのためなら週一外出の掟も破る。
焦ってはいなかった。コハルちゃんは私が呼べば飛んできてくれる。
だから、道路を挟んだ塀にとまっているのを見つけて呼んだ。
駆け寄る私。飛んでくるコハルちゃん。
道路の真ん中で私達は――、
トラックに轢かれて死んだ。
……左右確認しろよ私。
完全にコハルちゃんしか見えてなかったわ。
でもまあ、それほど悪くなかったと思うんだよ。自立した大人になる必要はなくなったし、コハルちゃんと一緒だったから。
次に生まれ変わったら、私も自由に大空を飛ぶ鳥に。
なんて思っていたら、ほんとに鳥に転生した、って話。
お読みいただき、有難うございます。