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061 機動支援艦隊の補強―――『戦時計画艦』(参)

誤字訂正・ブクマ・評価・いいねをありがとうございます!



キュウシュウ星系には、第二機動艦隊と星系防衛艦隊の二つが存在する。戦力はこんな感じ。


 第二機動艦隊:根拠地 サセボ 旗艦『武蔵』

 戦艦一 装甲巡洋艦三 軽巡洋艦一 駆逐艦四 コルベット四


 キュウシュウ星系防衛艦隊 旗艦『大鳳』

 強襲揚陸母艦一 重巡洋艦一 軽巡洋艦二 駆逐艦四 フリゲート四 コルベット四 


 敵艦隊との戦闘を行うのであれば、ダザイフの衛星軌道上に存在する『天照宝珠』十二基を加えれば、五個機動艦隊程度とは互角に戦える可能性があると宙軍では認識されている。


 しかしながら、宙域全体を哨戒警備するには戦力的に不足していると言える。ホンシュウ星系はこの倍の戦力、特に補助艦艇を多く保有しているため、警戒警備行動は二つの宙堡を加えてかなりしっかり行える。


 キュウシュウ星系は首都星ダザイフ以外は警備できないと言い換えても良い。これは、二つの要塞にそれなりの戦力を張り付けている事、実際、HDゲートを制圧さない限り簡単にはキュウシュウ星系に宙華圏から侵攻できないという理由がある。


 無理押し、力押しで男気JDを駆使して武装商船で通商破壊作戦を行うなんて前提にしていないもんな……無人艦か半無人艦を特攻させるような戦い方だ。そんなこと、前提として考えるわけがない。


「司令、交代時間です」


 艦橋に座っている時間終了。とはいえ、AI副官が常時警戒している状態で人間が行う事はそれ程……いえ、全くと言っていいほどやることがない。


『暇ね』

「まあな。だが」

『悪い事ではない……でしょ?』


 敵が潜んでいる前提で哨戒しているが、いない方がいいに決まっている。二隻の『晴嵐型』駆逐艦は、以下のモジュールで対応している。


司令艦 【情報収集】【陽電子砲】【宙雷】

僚艦 【陽電子砲】【無人航宙機】【宙雷】


 長期の哨戒活動でも継続して戦闘のできる軽巡クラスの陽電子砲モジュール、司令の乗る一隻目には『情報収集モジュール』による索敵、二隻目の僚艦には『無人航宙機』モジュールによる偵察・支援攻撃能力を持たせている。二隻でフリゲート以上、軽巡以下の戦闘索敵能力といったところだろうか。人員コストは1/5、経済コストは1/20となる。


「そういえばデーブ宙佐が仰っていましたが、『晴嵐型』の簡易型以降、船体製造には『金属射出成型』を用いるそうですね」


 交代に来た航宙士が、そんな話を俺に振ってきた。


 俺達が『デブ』と呼んでいる為か、ゲンドウ・ニカイドウはミドルネームが『デーブ』であると艦隊内では認知されている……らしい。『G・D・ニカイドウ』ってことだよね多分。


「小さなものならともかく、宇宙船としては中小型艦だがこんな大きなものをできるのか?」

「胴体を三分割で作って溶接するみたいですね。それぞれの区画は一体射出成型されるので、強度と軽量化、省コストになるみたいです。なにより、建造時間の大幅短縮が可能だそうです」


 もとがPFS並みの『晴嵐型』だが、さらに半分となる。都合、三ケ月で完成するらしい。


「そりゃ、搭乗員が足らなくなるわけだな」

「はい! 民間にも用いられる船型ですし、退役後の仕事にも生かせるので、民間から『教導隊』に入ろうとする若手の宇宙船乗りには良い動機付けになっているみたいです」


 確かに。元も値段から三割引き以上の『晴嵐簡易型』となれば、払い下げの価格も相当安くなるだろう。これなら、中古の民間宇宙船を買うよりもずっとお得なはずだ。第二の人生で手に入れられる業務用宇宙船としては悪くない選択肢でもある。


 今後、同型艦が官民問わず多く生産する前提での製造方法の変更であるとするなら、沢山作られ沢山払い下げされるんだろうな。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 捜索する事三日、そろそろ飽きてきた……捜索範囲も一区切りというところに至る。宙華船らしき宇宙船の残骸もちらほら見えているのだが、事故によるものか、いつの出来事によるものか多少回収したものの、判断でき兼ねる内容だった。宇宙船の制御系の部品などが見当たらなかったからだ。外板だけ回収してもあまり意味がないし、回収する余地もない。


 旗艦は一日程度の距離にあるダザイフと『雪嵐』の中間地点に投錨しているものの、呼び寄せたり回収した外板を持ち帰るほどでもない。


『暇ね』

「今回は研修航海兼ねている部分もあるから、こんなもんでいいだろ?」

『そうね。JD機能を排除したショボい船体の実戦テストも兼ねているんだもんね。まあ、悪くはないわよ。良くもないけどね』

「さいですか」


 AI副官のカスミ的には『鵡標良品』っぽいと言われる。俺はZuっぽいと考えたけどな。良品は素材と縫製は良いだろ? Zuは……まあほら、安かろう悪かろう的な感じするじゃんね。洗うと溶けちゃう感じでさ。


 因みに『鵡標』ってのは、ワインポイントのロゴがオウムなんだよ。可愛いだろ?


「やたらみかける宇宙船の残留物って宙国船の残骸か?」

『そうとは言えないわね。USAやニッポン製は少ないけれど、ルーシやヒンドゥ製も混ざっているから……その辺りの安い中古船をニコイチサンコイチで作った襤褸船というのが推測ね。登録されている宇宙船そのものは該当データがヒットしないけど、部材は分かるのよね。だから、そんな感じで国籍不明の不審船という以外ないわね』


 確かに、外観からどこの国籍化を特定することは出来ないな。内部に残されたデータ関係も、偽装の可能性が高いだろう。そもそも、外観や内部記録から特定できたとして、不審船を抑止する効果があるわけでもなく、効果的に制圧するための資料にもならない。


「結局、接敵必殺ってことか」

『もういいんじゃない? 手間をかけずに沈めてしまいましょう。それがいいわ』


 確かに。今後増える中途採用の駆逐艦乗りと促成AI副官に細かな選択肢を与える事自体あまり良い事ではないだろう。それよりも、『接敵必殺』と思い定めた訓練を施す方が良いだろうな。その辺は、ナカイと幕僚に確認をとって、艦隊の方針として定めた方がいいだろう。





 小天体・小惑星と宇宙塵の多いシコク星系でも外縁部に近い場所へと『雪嵐』『清霜』の二隻は到達している。この辺りで転進し、トクシマ要塞へ戻ろうかと考えていた時、モニターに大型輸送船らしき艦影を発見と表示される。


「艦船データに該当はありません」

『出たわね不審船』

「陽電子砲射撃用意。有効射程に入り次第、順次砲撃開始」


 宙雷を使うまでもないと考え、モジュールの陽電子砲での射撃体勢を準備する。大きさは『知床』よりやや小さいものの、民間の多用途輸送船としては大きな部類だろう。当然、『雪嵐』の数倍の大きさはある。


――― 松型コルベットより小さい『雪嵐』!!


 『晴嵐型』標準装備の索敵能力では発見できなかっただろうが、追加モジュールの能力故に遠距離から捕捉できたと言えるだろう。二隻の哨戒任務隊なら、司令艦に『情報収集モジュール』もしくは、『光学熱源観測・照準モジュール』を装備することは有効だと結論付けられる。


 先に敵を見つけられる方が圧倒的有利であるし、そもそも、防御能力の乏しい『晴嵐簡易型』においては、特に重要なのだろうな。


『ん。なんかおかしいわよ、あの不審船』


 AI副官の指摘に、光学画像のズームを命じる。すると、船体の外装に亀裂が入り、中から小型の戦闘艦が現れた。


「艦種特定は?」

『……ヒンドゥ連邦の防護巡洋艦……に近いわ』


 防護巡洋艦とは、旧式軽巡洋艦と言えばいいだろうか。JD能力のあるフリゲート艦と例えるのが近いかもしれない。


「『清霜』に攻撃命令。無人機発進!」

『清霜了解!!』


 画面には、外装を吹き飛ばしたフリゲートらしき艦船が映し出されている。


「陽電子砲、捕捉次第射撃開始」

「射撃開始します!!」

『射撃開始了解!!』


 数光秒の距離にある敵艦に、『清霜』がまず発砲を開始する。『清霜』の射撃管制では命中困難かもしれないが、『雪嵐』の索敵データとリンクすることで、命中を期待できるようになる。二隻四隻をまとめて運用するには、そういう効果に期待する意味もある。


 防御巡洋艦(仮)の検出データを確認。サイズは『防宙艦』よりは小さい程度だが、『雪嵐』の五倍以上のサイズだ。というか、『雪嵐』が小さすぎるだけなんだが。


『敵艦発砲。回避』


 緩やかに慣性が働き、今まで艦がいた位置を光の槍が通過していく。主砲の射程距離は同程度か、あちらが有利なのか。


『まぐれよまぐれ』


 だといいんだが。


 打ち出される光条は三本。三連装か単装三基かは判別できないが、砲塔群は一箇所に見て取れる。


『陽電子砲発射!!』


 無人機が接敵する迄にいくらか時間がかかる。こちらも反撃を開始する。AI副官の判断で順次、射程の長い砲から射撃する。


「相手はシールドありなのかわかるか」

『……勿論よ、それに、攻撃力はともかく船体自体の耐久力も高いはずね』


 あまり高い機動力に見えないのは、船体に対して推進器が小さいもしくは、相応の質量があるからだろうとカスミが推測する。つまり、見た目以上に重い=重装甲という判断なのだろう。


『設計思想が軌道防衛艦みたいなものね』


 『軌道防衛艦』というのは、重武装の小型艦で、航続距離や速度を抑え、その分火力と防御力を高めた艦種だ。『天照宝珠』の配備前においては用いられていたし、配備の無い開拓惑星などにはいまだに用いられている存在だ。


「厄介だな」

『そうね。でも、やれないことはないでしょ?』

「その通りだ」


 無人機と93式宙雷を組み合わせた同時攻撃で十分撃沈まで持ち込める。あの手の艦種は、連続射撃できる主砲とシールドの耐久力を生かした砲撃戦に意義がある。


 加えて、軌道防衛艦は数を揃えてこそ生きる艦種でもある。一隻では本来の防御壁的能力を発揮することができない。


 だがしかし……


「っぶねぇー」

『シールド無いの忘れてたわ』


 忘れてんじゃねーよAIがぁ!! 多分ブラック・ジョークだろ? OK。照準が徐々に正確になりつつあるのは、AIの機動が読まれ始めているという事か。


『無人機、95宙雷の射程内に不審船を捉えました』

「95式全弾発射、こちらは前方に向けられる全砲門で不審船を射撃。タイミングを合わせろ」

『清霜了解!!』


 対宙パルス砲の装備もあるはずだが、数は限定的。四基十六発の宙雷の攻撃と、陽電子砲八門の射撃が重なれば、一時的に飽和状態を起こせるのではないかと考える。


『射撃開始』

『95宙雷……着弾……さらに着弾……』

「無人機戻せ」


 十六発中二発。対宙パルス砲は仕事をしたようだが、二発の命中で砲火は沈黙。砲塔群に着弾し、一時的にか永続的にかは分からないが、一先ず何とかなりそうだ。




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