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048 輸送艦隊を作ろう―――『無人偵察機母艦』(参)

誤字訂正・ブクマ・評価・いいねをありがとうございます!


 それからしばらくののち、ナカイのお供として俺ときゃるぴん情報幕僚の三人は、ホンシュウ星系に向かう事になった。首席幕僚のクルリ宙佐は司令代理として残らざるを得ないし、今一人の先任准宙佐であるヤエガキも同様だな。民間においてもそうだが、組織の幹部が一箇所に集まるのはリスクマネージメント上避けるべきことなのだろう。


「いってら。お土産に期待してるよ」

「うん、ミカミちゃん、お願いしてあるお店でお土産よろしくね」

「お任せください!! 新作で良さげなスウィーツも手配しておきますね」


 一応公務なのだが、今回は取材を受けるだけなので、ナカイもいつもほど厳しくしていない感じがする。公私の区別に厳しい印象を持っていたが、上に行くにつれその辺りの許容範囲が広がった印象があるな。

 

 まじめちゃんだったからな昔のナカイは。ほんと、杓子定規だったと思う。




 今回も、星系艦隊からコルベットを一隻借り受け、ホンシュウ星系迄移動する。『晴嵐型』が増えれば、一隻に司令部と巡視船モジュールを載せた艦を設定して、ナカイの座乗艦にすることになるだろうか。


「なるべく早く晴嵐型は配属させてもらいたいですね」

「今回、その辺の調整もあるのか?」

「既に終わっているはずよ。そもそも、今回の経緯では……」


 晴嵐型を多数竣工させるために、民間の造船所をかなり活用しているのだという。まあ、工程数も少なくって作りも軍用宇宙船よりもかなり緩い。艦橋以外の部分を民間で作らせ、艦橋や兵装モジュールだけを既存のメーカーで作らせているんだそうだ。


 旧帝国海軍においても、『艤装』ができる工廠というのは限られていたらしく、横須賀で建造した空母『信濃』が広島の呉に回航途中に紀伊半島沖で沈められた時も、最終的な仕上げを呉でする予定だったことが仇になったという感じだな。半完成品で尚且つ、艤装工事をしながら航海をして気水密試験に至っては無しで、ダメコンも出来ていなかった故の悲劇だという。


 貧すれば鈍するというか、優れた兵器も扱う人間の習熟があってこそ生かせるといことだろうな。


「なので、一年かからずに完成するの。三隻は私たちの帰るタイミングで引き渡しになるはずよ」

「へぇ、まさかそれに乗って帰るとかですか?」


 なんなの、晴嵐嫌なの? あれは、俺とナカイで普通に操艦して戻れるかもしれないが、一隻だけだな。戦隊司令に操艦させるわけにもいかないしな。


「一人一隻ずつ乗って帰ればちょうどいいじゃねぇか」

「えー 嫌ですよぉ。それに、副官AIがド新人で、変なキャラ付けされていたら、怖くて乗れません!!」


 そこは俺も同意。あれ、なんとなからないのかね。面白いけど。


 ナカイ曰く、造船所の関係者が試運転を含めたテストを終えているので、問題ないのだが、引き渡しはトクシマで行われるので乗って帰る必要性はないらしい。だよね。




 コルベットがホンシュウ星系・ヨコスカに到着。取材はホンシュウ星に降りることもなく、また、軌道エレベーターにすら近づくことなくこの要塞内で行われるはずであったが、艦隊派の耳目を集めかねないという事で、急遽、宙軍省の本省で行われる事になった。


 広報用に用意されている専用ルームではあるが、ここは来賓との会談などにも使われる設備であり、また、有事の際には宙軍省の公開放送などの放映する設備も有したミニ放送局を兼ねている場所らしい。


「機動艦隊旗艦にも同じような設備があるわね」

「そういえばそうだな。戦艦クラスだと亡命政府の閣僚を収容したりする可能性もあるしな。放送設備も必要だろうな」

「縁起でもないですねぇ」


 いや、備えあれば患いなしだろ? 大体、慣用句とか諺って正反対の意味の言葉が存在するよな。ニッポン人って逞しいわ。


 無駄に広々としたソファセットと、壁にはどうでもいい抽象画。そして、スッキリしたデザインの花器が飾ってある。流石に生花は飾られていないのは身内対応だからだろうか。来賓ではないというね。


「なんかあっさり系の家具ですね」

「皇居の来賓室もこんなかんじでしょう? 映像で見たことないかしら」


 そう言えばそうだな。確か、USAやヒンドゥの国家元首や高官が訪問した際に、余りに無駄を削ぎ落した品の良い内装に大いに驚いたという話しを聞くしな。やっぱ、金持ちはごちゃごちゃ飾り立てて「おれ金持ちだから」アピールをするのが世の常識らしい。ニッポン人はそういうのを見せないのが美徳とされているからな。


 ニッポンの外から見て、金持ちが金持ちらしく振舞わない稀有な人達と評されているんだとさ。


「お待ちしてました」

「今日はよろしくお願いします」


 広報担当の偉い人がナカイに挨拶をする。俺達も一緒に頭を下げる。


「こちらのお二人が」

「はい。教導隊の教官を務めておりますツユキ准佐、それと情報幕僚のミカミ宙尉です。ツユキ准佐は私の士官学校時代の同期であり、また、今回のサキシマ回廊から先日のゴトウ宙域での装甲巡洋艦拿捕迄、一連の作戦を最前線で指揮した艦長の一人でもあります」

「おお、ならば、ナカイ司令だけでなくツユキ艦長のお話も是非とも伺いたいものですね」


 という感じで、ナカイに対して好意的な宙軍省広報担当は、さり気に俺の話しも聞きたいという。あれ、何で俺のケツ蹴ってんだよミカミ!!


「ミカミ宙尉は、軽巡洋艦『致遠』、装甲巡洋艦『来遠』の艦内情報の解析に活躍してくれています。軽巡洋艦には実際乗り込んで、艦内の情報や宙華帝国の資料を捜索してくれております」

「では、ミカミさんにもお話伺わせてください」

「はい! よろこんで!!」


 どこの居酒屋だよ。とか言ってもだな、これは色々話を聞いたうえで編集でばっさりカットされて、最初と最後に挨拶だけ映るってパターンだと俺は思う。ナカイを前面に出して広報することが目的だからな。俺とミカミが邪魔をしてはいけない。俺は特に画面に出たくない。


 何でかって、そりゃ、ナカイもミカミも美女だからだよ! 俺だけ平均以下の下級フツメンなんだから、並びたくないと思うわけだ。特に映像で。


 これが、屋外演習とかならサングラス掛けて目元を隠せば雰囲気イケメン風

にできるんだが、こんな場所でそんなことができるはずがない。眼鏡をかけたらイケメン? そんな都市伝説を俺は信じないし、眼鏡をかけてイケメンは、なくてもイケメンだと思うぞ。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 広報の人がインタビューするのかと思っていたら……マスコミで見たことがある女性が現れた。


「エマ・タテヤマと申します。今日はよろしくお願いしますね」


 エマ女史は、所謂、研究者なんだが見た目の良さと歯切れの良いトークでバラエティ風のニュース番組のコメンテーターや対談形式の討論番組のパネラーなどで有名な人だ。たぶん同世代。だとおもう。


「三人ともお若いですね」


 俺が言ったらセクハラだが、女の人が同性に言うのはセーフなんだろうか。因みに、俺とナカイは十六歳で士官学校に入学している。士官学校は二十一歳まで入学が可能で、最年少だと十六歳で入学できる。


 これは、高認試験を受けられるのが中学卒業後であり、高校入学した年の四月に受験申請をし、八月に試験を受け合格。そのまま九月の士官学校の試験に出願し、十一月に合格判定を貰った。


 高校には一年だけ通ったことになる。ナカイもそのパターンだ。


 因みに、妹のナツキやヤエガキは普通に高校を卒業してから士官学校に入学しているし、ミカミは小中は同学年で十七歳で入学している。だから、先輩だが同じ年なんだなこれが。


 おかげで、ヤエガキは士官学校時代「お姉さんだと思え」と言われ、散々弄られた。嫌だよガサツな姉とかさ。まあ、確かに世話になったな色々。


「お陰様で、軍務についている間はアンチエイジングの処置を受けておりますので、長く国に貢献できるよう心がけております」

「なるほど。確かに、軍人さんの心身が若く健康であることは望ましいことですね」


 そらそうだ。大体、宙軍にいる場合、ずっと艦に乗っている時間が長いから、沢山入ってきて沢山出ていく世界だ。特に、金をかけて育成している士官を簡単に退職させたくないという意図もあるし、生き残った貴重な存在を長く元気に働かせた方が、採用育成コストと比較した場合アンチエイジングのコストの方が割安になるのだという。どんだけやめたいのよ。


 という感じで、インタビューが始まり、ナカイが七割方話を受け、二割ほどきゃるぴんにも話が振られ、残りの一割が俺の頷きという割合で進んでいく。だって、女の人三人に俺一人って、アウエイ感がすっごいんですけどぉ!





 これまでのナカイの経歴をタテヤマ女史がモノローグ風に読み上げていく。どこで生まれ、どのように育ったのか。そして、いつ士官学校に進学しようと思ったのか。


「小学校四年生くらいだと思います」

「それは、どういったきっかけででしょうか」


 俺は、親父が早く独り立ちしろと煩かったからというのがある。どうやら、ナツキが思春期になり親父を避けるようになったあたりから変なスイッチが入ったっぽいんだがな。俺のせいじゃなく、お前が臭いからだぞ!! と声を大にして言いたい。


 ナカイの場合、母方の祖父が高位の軍人だったらしい。へぇ、それは知らなかったな。用意万端、何故かその爺さんの肖像写真が持ち出される。ん、もしかしてナカイは御祖父さん似なのかもしれない。涼し気な目元のイケメンがそこにはいらっしゃる。


「これは、宙尉時代のものだそうです。宙軍の記録ライブラリーから探してきました」

「これは随分と若い祖父ですね。ふふ、母は祖父似だと言われるのが嫌だったようですが、母似の私は……血を感じるといったところでしょうか」


 実家は実業と政治の家だが、母方に軍人の血が入っているから、宙軍士官学校にスキップして入る事も許されたんだろうな。普通、女性はそこまですることはない。俺達の代もナカイくらいだな女子は。


 そもそも、体力も精神力も一般の高校生・大学生とは比較にならないストレスをかける環境だから、一年の差はとても大きい。それが、二年となれば……まあ、俺もナカイも無謀だったということだな。それは、入校後随分と思い知らされた。


「中学卒業直後に、もう高認の試験の受験を決めていたわけですが、二年前倒しで士官学校に入学しようと思ったわけはどのようなことですか」

「私の場合、中学の延長のような生活をもう三年続けるより、高校までの学習を中学時代に終わらせて、少しでも早く国の役に立つ人間になりたいという自身の願望実現のためでしょうか。思春期故の勇気と無謀のはき違えとも言えるかもしれません」


 そう、レイ・ナカイは見た目は大和撫子のような手弱女に見えるが、かなり気が強くそして冒険を厭わない性格だ。まあ、じゃなきゃ、軽巡と駆逐艦で戦艦・巡洋艦の艦隊に突撃はしない。古代ギリシャの戦士みたいな女だ。本人には言えないが。


「あなたも同じでしょう? せっかくだから、ここでお話させてもらえばいいじゃない」

「は、小官ですか」

「……そういうのはいらないから。普通に話しなさい」


 俺もナカイと同じ二年前倒しの入学を決めたのは、早く自立したかったからということにしておく。流石に、親父がうっとおしかったからとは言えない。どうせ編集でカットされるからと適当にお茶を濁す。


 きゃるぴんは同い年の一期後輩なんだが、タテヤマ女史はミカミの顔をちらっと見てスルー。まあ、主役はナカイだから。モニター後で見たら、顔が半分に切れて映ってたりするかもしれないな。


「そして、あっという間に艦隊を指揮する立場になられたわけですが、やはりそれだけの実績を積みあげられた結果なのでしょうね」


 と、ナカイのこれまでの経歴を締めくくる。実績もそうだが、若い女性で名家出身であるということで、政治家や官僚にとって都合が良い駒であるという自覚は本人に当然ある。


「人に恵まれ、また、チャンスに恵まれたことに尽きると思います。努力は軍人であるのですから、皆同じように務めていると思いますから」


 と、その辺り弁えた返答をして躱していく。この内容は、『機動支援艦隊』の発足後に放送される予定なんだが、それまでに艦艇って揃うんだろうかと俺が少々心配であったりするのだ。



【作者からのお願い】

更新できるように頑張りたいと思います。応援していただけると嬉しいです。


 一日一(・∀・)イイネ!!もお願い申しあげます!


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