表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/102

043 教導隊はつづく―――『標的艦』(弐)

誤字訂正・ブクマ・評価・いいねをありがとうございます!



 教育期間も半ばすぎる頃、ようやく『晴嵐改型』駆逐艦が四隻回航された。この四隻も、俺達が自分たちでホンシュウ星系迄取りに行ったんだが……まあほら、四人いれば回収できるからな。


 教導隊に配属された艦は『神嵐』『松嵐』『朝凪』『夕凪』となり、この四隻で教導隊第一駆逐隊を編成することになる。


「この度、駆逐艦『松嵐』の艦長を拝命いたしました、ナツキ・ツユキ先任宙尉であります!」

「おー ナツキもついに艦長職か。まあ、メンバーはいまの一期生で充当になるだろうから、教育頑張らないとね」

「はい!」


 いや、とうとう俺のナツキが副長から艦長になっちまった。まあ、先任宙尉になったから、正式な艦隊配属時には准宙佐になるだろうな。一年くらいか。


「ナツキちゃんに並ばれちゃいました!」

「まあほら、上は仕事を見てるってことだな」

「むぅ、なら、なんでせんぱいは先任准宙佐なんですか?」

「いやほら、上司へのお追従? もしくは胡麻摺りだな」


 参考になりますって……お前の昇進速度遅くねぇからな。艦隊勤務で幕僚とか後方勤務ならそんなもんだ。駆逐艦乗りの昇進が早いのは、上が辞めるもしくは船の数が増えるので、野戦任官に近い昇格をするってだけだな。実際、ここから外れる事は出来ない。それに、駆逐艦の艦長は先任准宙佐で打ち止めだ。上は戦隊司令にでもならなければそうはならない。


「よっ、先任」

「お前も先任だってなヤエガキ」

「まーねー。駆逐艦六隻で三隻ずつで二個駆逐隊に編成替えじゃない」


 現状、訓練艦込みで『雪嵐』『浜嵐』だからな。それぞれ分けて二隊に分けるか。


「そうかもな。だからか」

「そうそう。まあ、頑張ってもここまでだよね私ら。あははは」


 アハハじゃねぇ。退役するぞ!!


 一個宙雷戦隊にはまだ足らないが、二年もあれば二個戦隊編成できるくらいには増員できるだろう。二個戦隊で十八隻の駆逐艦を配備しても、乗員は百八十名、実際、長期の行動を考えなければ四人でも運用可能だ。流石に戦隊旗艦を担う艦は十名で運用してもらいたが、九十人もいれば十分星系内での運用は可能だろう。


 JDしない亜光速の旅を行うには四人じゃきついが、防衛戦なら四人で十分可能だ。


 旗艦に集まった理由は、星系内を教導隊で習熟訓練を行いながら、実際の艦隊行動を『晴嵐型』駆逐艦で行う事にある。PFSと運用は似ているというものの、同じわけではない。


 幸い、一期生をサブクルーにし、『雪嵐』『浜嵐』のオリジナルクルーを三人ずつ配置すれば六隻運用することも可能だ。


 因みに駆逐艦乗りは『習うより慣れろ』『三日いれば一人前』という超絶ブラック体質なので問題ない。手取り足取りするほど教わる事もないし、わからない事はAI副官がサポートしてくれる。


 但し、『雪嵐』のカスミのようにAI副官が育つのは相当先であり、新たに配備された四隻に関しては、一期生同様当たり前のことしかできない新人レベルだ。訓練というのは、人間を教育するとともに、駆逐艦のAIを教育する必要もある。まあ、AIの場合……


『ふふ、新人教育ね。腕が鳴るわ!!』

『やれやれ、駆逐艦のどこに腕があるんでしょうか。力んでも、伝わらなければただのイキリにすぎないのですわ』


 とツンデレのデレ抜きと、腹黒令嬢風AI副官が手ぐすね引いて待っている。新人AIはそれぞれ二隻が先任の副官AIにビシビシ指導されなんとか形になるんだろうとは思う。


「まあ、毎日訓練の終わりには『知床』で夕食を食べながらミーティングとかになるんだろうな」

「それだ!」

「確かに、トクシマの食堂も悪くないんですけどねぇ」


 レトルトに飽きた晴嵐乗りの俺達からすればなんでもうまく感じないわけではないのだが、まあ、シコクは……味が薄いかな? 粗食感がある。うどん県とか呼ばれていた時代もあるらしいが……今やうどん星系と言っても過言ではない。うどんじゃ力でねぇんだよぉ!!


 そんな理由で、俺達は『知床』の士官食堂の味が気に入っている。その昔の帝国海軍では、司令官閣下は自腹で料理人を雇って美味しいものを艦上でも食べていたと聞くが、本当だろうか? 大和ホテルと揶揄されたとも言うな。ハンモックに缶詰三昧だった当時の駆逐艦乗りからは相当羨ましがられたとも。


「寝具は良いものを用意してもらったのよ。戦場でも睡眠による回復は大切ですものね」

「……不燃材なんだろうな」


 とは言え、今時、艦内火災で宇宙船がどこうなることはない。まして、戦闘艦もしくはそれに準ずる軍艦なら、ビーム一発で塵になる。ならば、寝心地の良い寝具で休息をしっかりとる事も大事だろう。


「酸素カプセルのベッドもあるんですよねー」


 いや、ミカミ、俺達基本的にそれで寝てるから。カプセルホテル的な居住空間だからね。むしろ、旗艦が晴嵐に寄せているまである。きゃるぴんはお客様対応だから知らないんだな。カプセルベッドで常在戦場なのが『晴嵐型駆逐艦乗り』なんだよ。


 自宅にも欲しくなるよな。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




『「朝凪」、進路変更遅いわよ!!』

『ひ、ひぃ……しゅみましぇん!!』


 うちのAI副官が鬼。鬼の副官だな。カミカミなのもAI副官。何でドジっ子キャラのAI副官載せてんだよ!! それに、乗員がAI副官フォローしたり慰めたりっておかしいだろ!!


『朝凪』AI副官は『マアサ・アサナギ』だってよ。ちなみに、僚艦は『夕凪』でAI副官は『ユウ・ユウナギ』という、何の捻りもない名前だ。


『「夕凪」はまあまあね。もう少し反応を意識して早めましょう』

『……わかった』


 うん、夕凪は無口かぶっきら棒キャラなんだな。解ったよ。


「むふぅ」

「なにやってんだお前」

「いや、旗艦用の『情報収集モジュール』のセットアップを見直す為にな」


 どうやら、ナカイ司令から技術工廠に『戦隊旗艦用にAI副官機能も踏まえたモジュールに変更するように』と提案という名の命令を受けているというのは聞いている。だがしかし、お前の仕事だとは思えない。


 シコクの田舎迄足を運びたくない技術工廠の担当者がデブに現場作業を押付けたんだろうな。


「アツキも戦隊を指揮する可能性もあろうな。仕様に希望があれば、何でも言ってもらいたい」

「なら、AI副官な、変なキャラ付けやめろ」

「……こ、心得た」


 駆逐艦の艦長の場合、仕事が単調になりがちだからキャラのあるAI副官も悪くないんだが、数隻の指揮も行うとするなら、事務的に話をしてくれる方がやりやすいんだよな。


 旗艦からの命令もAI副官経由で伝える場合もあるだろうから、変に性格付けされない戦隊司令の副官としては良いと思う。船は女性名詞だからというが、軍艦は男性名詞だよな。軍艦を女性化させたソシャゲのキャラも古代においては存在したらしい。巫女装束の戦艦・空母とか、謎の軍服の巡洋艦とか、セーラー服の駆逐艦とか……そんな感じだな。


 意味わかんねぇよ古代人の妄想は。


 今現在、旗艦の随伴艦を務めているのが『雪嵐』『朝凪』『夕凪』の三隻で編成されたツユキ隊。そして、この四隻の艦隊を襲撃する側が『浜嵐』『松嵐』『神嵐』のヤエガキ隊だ。因みに、マイ・シスター・ナツキが艦長を務めるのは『松嵐』だな。マツカゼではなくマツアラシだよ☆


 三隻で120度ずつカバーする形になるのだが、実際は、左右後方と直上のカバーで三角錐を形成するように位置している。『雪嵐』はその上の頂点に位置しているんだよ。


 三隻でも旗艦のカバーは全く不十分だけどな。そもそも、標準装備の備砲では火力不足も甚だしい。三隻で軽巡一隻分くらいだからな。防宙艦仕様なら、軽巡用の陽電子砲と対宙パルス砲モジュールを追加して、『照準モジュール』で捜索範囲を拡大しておかないと難しい。


 今の隊形は『知床』の防宙戦の演習を兼ねているので、ショボい装備のままなだ。旗艦からの指示を受けて遷移する必要もあるのだが、今回は『雪嵐』のAI副官が統率をとっている。理由は……他が全員新人AIだから。新人AIって……なんなんだろうな。





『八時方向、やや上方から単縦陣で接近する敵駆逐艦発見』


 旗艦からやや遅い迎撃命令。まあほら、こっちの固有装備では全然捕らえられないからね。無人偵察機とか情報収集端末がないと個艦での索敵能力が弱いのが『晴嵐型』の特徴でもある。ポーターになに期待してんの?


 この艦の防御力は皆無に等しいが、艦首に発生させる『シールド』は戦艦の主砲クラスでも一定の抵抗力を有するレベルの強固さだ。重巡洋艦以下の主砲なら余裕で相殺できる。一二発なら。それ以上は……間隔次第だね。連続で命中すれば相殺しきれません、当然。


『敵単縦列の戦闘に全砲門指向。有効射程に入り次第、射撃開始』

『りょ、了解ですぅ!!』

『了』


 返事みじか! 


 『雪嵐』の単装陽電子砲は……まじで低威力。そして、射程も当然短い。


『一門くらいレールガンが欲しいわね』


 いやいや、この船体で旋回砲塔にレールガンは100%無理だから。そこそこ大きな発射装置が必要じゃん。それこそ加速するためのレールが必要なんだから。


『接近してくる小型艦艇なら95式宙雷の多連装発射器でもいいのではないかしら』


 旗艦の艦橋には当然ナカイが座乗している。鼻歌交じりに両方の評価でも付けているんだろうな……


 こちらに向かってくる小艦艇や航宙機に95式宙雷の弾幕で応戦するのは有効に思える。回避も相対速度が速く、誘導も可能な飛翔体である95式宙雷なら「弾幕薄いよ!」と言われない程度、巨大な旗艦の防御用装備と対宙パルス砲よりある意味有効な装備となるだろう。


「回避運動でも取ってくれれば、射点を外す事も出来るしな。悪くない」


 高速で接近する航宙機や小型艦が旗艦の推進器を破壊するため位置取りするのを邪魔できるように弾幕を張ればいい。ある意味、どの射点に辿り着きたいのは予測できるので、その場所に宙雷を置きに行けばいい。


『ふん、今日はこのへんで勘弁してあげるわよ!』


 新喜劇じゃねぇぞ。




 という感じで、星系防衛戦での邀撃作戦用の雛型をこの辺りで詰めておきたいわけだ。


 宙華艦隊の攻勢を想定するなら、先ずはゴトウとツシマに攻め寄せる可能性が最も高い。一番有り難いのは、ゴトウに総がかりになってくれるケースだが、相手が相応の指揮官である場合、最悪、ゴトウとツシマには警戒艦隊だけを残し、ツシマのHDゲートを最優先で確保。キュウシュウ星系に主力艦隊を送り込んでくる可能性が高い。


 ホンシュウ星系から予備の機動艦隊をキュウシュウ星系に差し向け、本州側のHDゲート周辺をその艦隊で確保。キュウシュウの機動艦隊と宙華遠征艦隊を撃滅するというシナリオになるだろう。


 とは言え、前のめりで戦艦を有する艦隊が殴り合うのであれば、勝ったとしてもニッポン艦隊には相応の……恐らく同程度の損害が発生する。人的損失を度外視できる専制国家と、度外視できない民主主義国家の違いも考慮しなければならない。


 なにより、グーにはより大きなグーをぶつけるような頭の悪い戦い方をするのであれば、職業軍人なんて必要ない。とナカイは思っている。俺? 俺は……自分がそのグーの一部でなければどうでもいいが、最終的にお鉢が回って来るくらいなら、最初に準備をし死なずに済むニッポン人が多い方が良いだろう。とばっちりを受けるのは御免だしな。


 兎に角、グーにはパーで対応するってことだよな。



【作者からのお願い】

更新できるように頑張りたいと思います。応援していただけると嬉しいです。


 一日一(・∀・)イイネ!!もお願い申しあげます!


『わりと読めた』、『この続きを読みたい』と思われましたら下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。よろしくお願いいたします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


参加中!ぽちっとお願いします
小説家になろう 勝手にランキング


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ