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099 全艦出撃!!―――『航宙駆逐艦』(完)

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099 全艦出撃!!―――『航宙駆逐艦』(完)


 複合要塞は、古典的名作宇宙戦艦作品の冒頭、地面に埋まった状態で大昔の戦艦が乾ききった地球上に姿を見せているのによく似ていた。艦橋や大型陽電子砲座などの形が異なるが、イメージは小天体の表面に宇宙戦艦が半ば埋め込まれているような姿だ。


 ナカイ達の射撃で小天体上に展開されていたセンサー類や埋め込み式の砲座、移動砲座などは破壊されいたものの、戦艦本体は外装艤装以外健在な状態であった。


 今は、陽電子砲座も対宙パルス砲座も破壊され、原形をとどめていないが。


『ここから三フロア下がった場所の奥に、宙兵隊が待機している』


 既にそこまでのクリアにされた経路がディスプレイ上に表示され、機式分隊に情報共有される。クサブエから二つの班に命令が下され、交互に前進しつつ、俺とヤマトとクサブエがいる本隊を安全に目的地へと進ませてくれる。


 とは言え、待伏せや罠の類とは遭遇せず、俺達は十数分かけて防御隔壁前まで到着した。


 一個小隊がこの場にとどまっており、突入した他の二個小隊は、格納庫と思わしき大きなスペースを捜索しているのだという。ヤマトが気を使って、自分に届く報告を俺にも回してくれているので、内部の捜索状況はそれなりに察することができた。




 小隊長以下、ヤマトの登場に敬礼で迎え、その前後を守るように警備する見慣れない宙兵の姿に警戒感をあらわにする。ヤマトからは機式宙兵のテスト部隊を同伴すると伝えてあったのだが、自分たちと似て非なる装備、そして、一回り以上大きなアーマーロイド兵を見て一瞬恐怖を感じた様子が見て取れる。


『分子結合を緩めるビームの照射ですか』

『一番問題ないのは、前面の装甲シャッター部分の結合を緩めることか。クサブエ宙尉、頼めるか』

『はっ!』


 綺麗な敬礼を返すと、クサブエは指揮下の三体のアーマロイドを伴い、前面の装甲シャッターに向け進んでいく。


『床下を緩めるのが作法だろうけどな』

『……すまん、何のことだか理解できない』


 まあほら、床の分子結合を緩めるとだな、落し穴のように敵が動けなくなるような設定があるんだが……無重力のここじゃ意味ないよね。ごめん、俺が間違ってた!!




 チクチクと装甲シャッターの結合部を緩めつつ、三体はある程度の衝撃でシャッタが瓦解するように調整をしている。


『内部の状況がわかればいいんだが』


 本来なら、副管制室などから監視カメラのシステムに侵入し、内部情報を抜くこともできるのだが、完全に閉鎖された区画となっており、内部に侵入するには、目の前の隔壁を破壊するしかないのだ。


『むふぅ、ここから先が本来の戦艦の部分なのであろうな。そして、目の前の装甲シャッターが搬入口か小型舟艇の格納スペースか』


 デブの独り言が装甲服のバイザー越しに振動で伝わって来る。いや、おっさんと顔を寄せてバイザー越しに内緒話するのは嫌なんだが。


『なら、この後何が起こりそうだと思うんだ』

『格納庫には航宙機の修理用機材や航宙機から降ろしたパルスレーザーなどが揃っておるであろう?』

『はは、至近距離からバルスレーザーの乱射でもされたら、被害甚大だね』


 俺達の内緒話に割って入るヤマト。いや、オッサン三人が頭こっつんこはかなり見苦しいだろ! やめろ。


 機式宙兵にしろ、一般的な宙兵のパワードアーマーにしろ、前面投影面積が大きいのが問題だな。人間なら伏せたり斜に構えて面積を減らすことが可能だが、アーマロイドには難しい。遮蔽物を置いて、下半身を隠すくらいしか対応方法が無い。


 基本的には二足歩行の一人用装甲車のようなものだから、防御陣地のような施設への攻撃は向いていない。全く。


『ここは、俺達宙兵がメインで、突入するべきだ』

『できる限り正面に遮蔽物を置いて、火力支援くらいはさせないと、射的の的にしかならないだろう』

『ならば、手隙のアーマーロイドに、遮蔽物になる構造材などを運ばせて、正面に射撃用の陣地を構成しておくのが良いのであろう』


 デブの提案にヤマトが同意する。が、指揮権は俺にあるので、クサブエ経由で四体のアーマロイド兵に小屋ほどの大きさの岩石もしくは構造材を装甲シャッター正面に射撃陣地として使えるように配置するよう命ずる。


『俺達もできる事をやろうか』

『『『おう!!』』』


 小隊メンバーの半数が小隊長の指揮の下、畳ほどの大きさの構造材を壁面から切払い、床に穴をあけ立てかけていく。リアルバトルな雰囲気になる。





 小一時間ほどかかって、ようやく装甲シャッターを吹き飛ばせそうな強度迄結合を弱めることができたと判断され、クサブエから爆発物の設置の許可を要求される。


 どうやら、成形炸薬の効果を使って、最後の破壊を行い、その後、爆発物の威力で内部側にシャッターを吹き飛ばし、そのまま制圧射撃に入るという提案……限りなく決定事項を伝えられる。


『射撃陣地の形成、ありがとうございます』

『戦力を最大限有効活用するには、アーマロイドの弱点をカバーしないとな』

『ええ確かに。膝撃ち程度なら可能ですが、伏せ撃ちは不可能ですから』


 あいつら、首が上向く角度が限定的だから、伏せると顔だけ正面向いちゃうんだよな。あっち向いてホイに不向きな体つきをしている。


 爆発物を設置し、用意された遮蔽物かシャッタ脇の死角に各員が隠れる。


『合図は任せる』

『そうか。では……三、二、……起爆』


 BOBOBOBOOOONNN!!!!


 かなりの数の爆発が起こり、次いで、シャッターが金切り音を建てて崩れ、内側に向け吹き飛んでいく。


『制圧射撃開始!!』


 複数の重レーザー銃による制圧射撃が、瓦礫が飛び散る中に開始される。遮蔽物から銃身と射撃用センサーだけを出し、熱を発する人型の物体、もしくは、移動砲台に向け射撃をひたすら送り込む。


 BOOOOOONNNNN!!


 多砲身が回転しつつ、対宙パルスレーザーのミニチュアのようなミニガンが如雨露で水を撒くようにレーザーの雫を絶え間なく送り込んでいく。


『宙佐。突入の許可を』


 クサブエからの通信。ヤマトも聞いているだろう。俺に向けてサムズアップを行う。


『宙兵隊指揮官の解了を得た。機式宙兵分隊前進』

『はっ! 機式宙兵、前進せよ!!』


 遮蔽物から出たところ、狙いすまされたかのように重レーザーがアーマロイド宙兵の装甲に命中し、反射されていく。耐レーザーコーティングされている装甲外皮は、対宙レーザーレベルまで耐えることができる。歩兵の携行兵器レベルはおろか、航宙機の機銃ですら耐えることができるだろう。


 派手な演出のように体表をピカピカ虹色に乱反射させながら、ゴツイアーマロイド宙兵が前進を開始する。その足元を、低い姿勢を維持しながら、三体の指揮官用バイオロイド宙兵が装甲強化服を身に纏い駆け抜けていく。


 何かを斬りおとした音が銃撃の間に聞こえる。バイオロイドは、銃よりもレーザーブレードを振るう近接戦闘を得意とする。こういった込み入った状況においては、アーマロイドの射撃に注意を奪われ、その隙を突いたバイオロイドの突入部隊に音もたてずに切裂かれ、倒されていくことになる。


 映像で確認してはいたものの、目の前のはっきりと見えない視界の隅にちらりちらりと映るその後ろ姿から、人間は勿論、アンドロイドやサイボーグでも追いきれない速度で動き回るクサブエ達の前に立った宙華兵もしくは兵器に憐れみを感じるまである。


『むふぅ。流石であるな』

『俺達宙兵の仕事が無くなりかねないね』


 僅か十体の機式宙兵分隊でこのまま制圧することができそうな勢いだ。


『戦っている相手は、人間か、機械か、どっちなんだ』


 人間なら捕虜にすべきかもしれない。大した情報は得られなかったとしても、宙軍的にはこうした行動に出た宙華の非を国民に知らしめるための証人・証拠が必要だ……政治劇的に。


 機式分隊に続き、宙兵隊が分隊単位で前進を開始する。しかし、その前進は即座に停止した。


『……佐、ヤマト宙……バイオロイド、いえ、サイボーグ……』

『こちらヤマト、通信状態が悪い。再度報告を。こちらヤマト、聞こえてないぞ!』


 戦艦のバイタルパート内であるからか、電波の通りが良くない。前線用の短距離通信機に切り替え、ヤマトは確認する。


『こちらヤマト、再度状況報告せよ』

『……宙佐。重装甲の人型兵器、恐らくは半分以上機械化されたサイボーグがマウントされている二脚戦車だと思われます。機式宙兵が攻撃していますが、ダメージを与えられていません。恐らく、突破……』


 通信半ばで半壊した装甲シャッター内部から爆風が噴き出してきた。瓦礫を伴い、半ば渦を巻くような旋風が閉鎖空間を駆け巡る。これ、装甲強化服着ていなかったら、一発アウトだった。


 開口部からこちらに向けて放たれるのはレーザーと似て非なるもの。


『ブラスターキャノンだな。宙華陸戦隊が好んで使う装備だ』


 レーザー兵器の一種だが、その目的は『熱線による破壊』にある。レーザーが破壊するためにエネルギーを叩き込む装備であるのに対し、ブラスターは麻痺や熱線による火傷などのダメージを与えるように調整することができるなど、暴動対策用の兵器の要素が強い。


 要は、自国の人民を抑圧するための装置としての『宙華陸戦隊』が装備するに相応しい仕様ということだ。


 その出力を戦争用に拡大したものだろう。装甲兵器や航宙機などを外部から高温で熱することで、機内の搭乗員を熱により殺傷し、機体本体は比較的破壊を免れた状態で鹵獲するといった方法で利用するのだろうか。嫌だな、レンチンされて焼き殺される未来。


『ヤマト』

『解っている。宙兵各位、敵は陸戦隊だ。実体弾による爆裂・爆風によるダメージに注意。恐らくは持久戦に持ち込む事で、装備の破損破壊で自滅する可能性が高い。焦らず、致命的なダメージを受けないように注意し、戦闘能力を維持せよ。時間は味方、焦りは敵だ』


 マイクの奥から、各分隊長の了解という声が聞こえてくる。


『何とかならんか』

聞こえてるか』

『……クサブエです。申し訳ありません』


 状況が膠着状態なんだから、謝る必要はない。


『宙佐、突破されました。大型二脚戦車三体が隔壁を抜けます。ご注意を』


 ゲェ!! 爆風を伴いながら、黒い4m程の大きさだろうか、二本足の足先はクロウラー化された無限軌道。そして、大昔の海賊のように片腕には鈎爪状のマニュピレーターとその手首に当たる部分に恐らくブラスターの発射口らしき銃口。反対側の手には盾らしきものを抱え、脚部には回転式の銃身を持つブラスターミニガン。


『薙ぎ払えェぇ!! と叫びたくなり装備であるな』

『お前が薙ぎ払われてしまえ』

『ひでぶぅ!!』


 煩いわ!! 


 連射されるブラスターの熱線が俺達の潜む遮蔽物の表面を焦がし、溶かしていく。金属が一部溶解し、付属したコード類が燃えてあまり良くないガスを発生させる。体にわりぃよな、この環境。


『宙佐!! パンツァファウストです。回避を!!』


 一瞬何のことがわからなかったが、宙華製の対装甲・硬目標破壊用の携行ミサイルのことであると思い出す。


 何かの爆風で要塞の内壁に叩きつけられた俺は、多分意識を失った。



第二部 機動支援艦隊【了】









第二部完結をもちまして、一旦投稿を終了いたします。

これまでお読みいただきありがとうございました。


SF小説の難しさを痛感した作品となり、とても勉強になりました。

続きを書くに当たり、他の連載を完結させてから改めて取り組みたいと

考え、一旦終了する次第です。続きを気長にお待ちいただければと思います!


【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。

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