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098 全艦出撃!!―――『航宙駆逐艦』(参)

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098 全艦出撃!!―――『航宙駆逐艦』(参)


「あれは……」

『GUN&TANKかしら』


 だめだろ、その名称!! 柔道好きの搭乗員とか乗ってたらどうすんだよぉ!!


 人型移動砲台とでも言えばいいのか。左右の肩部に、ビーム兵器と実体弾兵器の両方がマウントされ、腰部には多連装ミサイルランチャーの発射機がみられるが、既に発射済みのようだ。


 即座に退避を命ぜられた宙兵が散開し伏せる。『雪嵐』らが、四連装パルス砲を向け、雨霰とビームを撃ち込むが、装甲表面が対ビームコーティングされているようで、弾かれてしまう。


『なら、これでも喰らいなさい!!』


 二台目の移動砲台が開口部から射撃を開始しようと顔を出した瞬間、後方の僚艦から軽巡洋艦の主砲並の威力を有する陽電子砲の光条が二台の戦車に向け指向された。


 負荷に耐え切れなくなった装甲表面が白熱し溶解、そして全体が爆散する。よく頑張ったんじゃないかな宙華製にしては。


『……至近距離から陽電子砲の斉射を浴びるとは……』

「装甲服着てるから大丈夫だろお前ら」


 何が不満なのかな、ヤマト宙佐。対戦車用の個人装備も持ち込まないとヤバいって気が付いたようで何より。どうやら、新型パワードスーツは対ビームは考慮されているが、対装甲兵器に関しては随伴歩兵頼りになっているらしい。いや、どっちか装備しておかないと、要塞内にだって装甲車両くらいいるんじゃないかなって思わないのかね。


「戦艦じゃなくって要塞だからな」

『戦艦だって、戦車、装備しているかもしれないじゃない』

「え」

『え?』


 確かに。この世界の戦艦、宙母より航宙機搭載していたりするからな。よく考えたら、宙兵大隊とか収容しているんだから、戦車くらいあっても全然おかしくなかった。知ってた、アツキ!!


 多脚戦車ではなく、二脚無限軌道には何か拘りでもあるのだろうか。




 対装甲・重構築物用個人宙雷を改めて装備し、宙兵隊が再度突入を開始する。装甲アーマードスーツは先頭ではなく、二段列目で待機し、装甲強化服の尖兵が露払いをする事に変更したようだ。


『ツユ……こちら第二……』


 ヤエザキからの通信のようだが、デブリが散乱した影響か、全くもって雑音が激しく内容が聞き取れない。


「こちら第一戦隊。現在、宙兵中隊が要塞内部に侵入中。敵は、二脚無限軌道戦車を展開。内部の掃討には時間がかかると想定される。逐次、報告を継続する。以上」


 何も言わないと、何度も話しかけられるかもしれないので、この辺で一応話は聞いたよ的返事をしておく。報連相って大事だよね。


『こちら、ニカイドウ……ユキ宙佐。……に協力されたし』


 デブか。なんだよ、協力って。もしかして、あれか、クサブエ宙尉とコミュニケーションに問題が発生して、仲立ちを頼んでいるとかかもしれん。バイオロイドとは言え、妙齢の美女、それもクールビューティー系だもんな。


「こちらツユキ。協力するのは吝かではない、が、現在宙兵隊が要塞内部に浸透中。後方に退けないから、用があるならここまで来い。以上」

『……了解……』

 

 この場を離れるという選択肢は当然ない。


『機式宙兵が来るみたいね』

「へ」

『今そういうやり取りしていたでしょ?』


 我がAI副官殿には、今のやり取りが雑音無しで聞こえていたようだ。なんだよ、教えてくれればいいのに。


「でもなんでだ。ヤマトが呼び寄せたのか」

『そうではないと思うわ。そもそも、宙兵隊に所属する以前の試験部隊でしょうが。指揮権は艦隊司令官にあって、宙兵隊には無いわよあの子たち』


 ナカイの差し金……いや、支援というわけか。


『こちら艦隊旗艦「龍田」。第一戦隊司令に伝える。試験運用中の機式宙兵を戦隊旗艦の護衛任務に送る。以後、作戦終了まで第一戦隊の指揮下に置くものとする』

「第一戦隊司令ツユキ、了解」

『貴官らの幸運を祈ります』


 最後の一言はナカイだな。本隊と第二戦隊は要塞の反対側に回り込んでの掃討作戦と周辺の包囲を行っているようだ。通信状態が悪いのは位置が移動しているかららしい。副官曰く。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 既に、宙兵隊の三個小隊が要塞内に侵入し二時間が経過していた。散発的に表れては『雪嵐』に向けて宙雷を発射する陸上移動砲台や、宙兵指揮所を攻撃する要塞の兵士(おそらく簡易アンドロイド兵)を対宙パルス砲や陽電子砲で吹き飛ばしつつ、周辺を警戒していたのだが、デブから入電。


『さて、我等の戦場は何処にある!!』

「……知らんがな。引っ掻き回すとヤマトが激怒するぞ。これは訓練ではない、繰り返す、これは訓練ではないってな」

『……存じておる』


 怒るほど笑顔が濃くなる男、ハヤト・ヤマト。滅多に怒らないが、場にそぐわない事をした場合、結構キレる、笑顔で。ナカイといい勝負で怖い。機式宙兵って、何させるんだよ。今のところ問題なく宙兵が戦闘を進めているんだからちょっかい出さない方がいいと思うんだが、試験運用としてなんかさせないといけないのだろうか。


『宙佐、ご無沙汰しております。クサブエです』

「宙尉、戦場でなんなんだが何がやりたいんだ」

『掃討作戦に参加させていただき、情報の回収をできれば行いたいのです。宙兵隊の指揮官に繋いでいただけませんか』


 最初にそれを言えデブ!!  一段落ついた時点で、ヤマトの部隊が行わないサブシステムなんかのサルベージをクサブエ隊に任せてもいいんじゃないかと提案するのもありだろう。


 要は、ヤマトの邪魔をしてキレさせなければいい。将来的にはヤマトもその指揮下に機式宙兵を持つ可能性も高いのだから、どのような存在か実戦で確認するんだって意義がある。ほら、怒られずに済みそうだ。


「では、作戦が一段落ついた時点で、指揮官に頼んでみる。恐らく、主要な部分は譲ってもらえないだろうが、周辺部分なら問題ないだろう。これも試験部隊としての任務だからな」

『ご配慮ありがとうございます。暫時待機いたします。では!』


 無表情ながら、どこかホッとした表情に感じだな。デブ、ちゃんと筋立てて話せよな。なに、どぎまぎしながら話しかけてんだよ、中学男子か。


『戦隊司令殿の分の新型装甲強化服も用意した。サイズは、宙軍の制服の採寸データーから起こしているので問題なかろう』

「お、おう」


 宙佐に昇格し戦隊司令を拝命した時点で軍礼装を新調している。日頃着用している艦内用の航宙服とは違うぞ。その時のデータなら、かなりジャストフィットのものになるだろう。





 第二戦隊からPFSに移乗して到着する機式宙兵試験分隊の皆さん。に、デブが加わる。


『久しいな』

「おう。どれが俺の着用すればいい装甲強化服なんだ」


 明らかにマッチョ度の増している装甲服が差し出される。本来は手でもてる重さではないだろうが、この場所はほぼ無重力なので持ち運べる。


『我と揃いになる』

「それは避けたい。お前とペアルックとか、どんな嫌がらせだよ」

『ぐはっ!!』


 ぐはっじゃねぇよ。お約束の応酬を交わし俺は着用している簡易的な宇宙服から装甲強化服に着替える。


『20式装甲強化服。これは指揮官用の試製モデルだ』


【20式装甲強化服機式宙兵仕様】は、

 宙兵隊強襲小隊が着用している防護戦闘服の最新型。人工繊維の筋肉と強化外骨格の能力を機式宙兵の能力に耐えられるレベルまで強化。生身の人間用にカスタムされた『試製20式』の場合、サーボ機能により、生身の人間ながら、バイオロイドに匹敵する能力を発揮できるようになる。また、この装備はバイオロイド宙兵用であるため、14式情報部仕様と同等の情報端末・追加センサーを装備した歩く前線指揮所といった存在となる。


 試製の場合、指揮能力の部分を残し、センサー類を省略する代わりに身体強化に相当するサーボ機能を装着しているので、指揮官専用と言える。


 本来、機式宙兵の運用は身体能力の低下したベテラン宙兵指揮官を据えることが前提となっている為、『試製20式』は上級指揮官用とも言える。


 身体能力には平均をやや下回る程度でしかない俺にとって、『ロートル仕様』は大変助かる。退役間近の宙兵将校より、現役ど真中の駆逐艦乗りの方が体力なんてないに決まっている。マッチョ度が全然違うしな。


 確かに、指揮統制システム系が充実している。通信能力も段違いだ。これは、『雪嵐』のシステムを介して、機動支援艦隊全体迄通信が伝わる。


『ツユキ宙佐。機式宙兵分隊は、これより貴官の指揮下に入ります』


 分隊指揮官のクサブエが敬礼をし、その背後で九人の宙兵がワンテンポ遅れて敬礼をする。


『よろしく頼む。とはいえ、俺は付き添いみたいなものだ。ヤマト宙佐に話を通して、あとは安全そうなところをブラブラしつつ宙兵隊の捜索の漏れを探すような行動になると思う』

『承知しました!』


 クサブエは、自身が指揮するアーマロイド宙兵を俺とデブの護衛に残し、

トガリとイビガワの指揮する班が交互に前進する形で安全を確保しつつ内部を捜索することになるようだ。


 俺はデブとクサブエ班と一緒に、安全の確保されたのちに前進することになる。





 前線指揮所にヤマトを訪ねる。大型のディスプレイ上には、階層化された要塞内部の断面図が表示され、掃討作戦の遂行状態がひと目でわかるようになっていた。


『どうした。機式宙兵の稼働検証か』

『お察しの通りだ。宙兵隊の邪魔をしに来たわけではない。迷惑にならない程度に、要塞内の掃討作戦のフォローをしたい。内部情報はこれで全部なのか?』


 ヤマトはそうではないと言う。何箇所か内部から物理的にも情報的にも遮断されたブラックボックス的空間がいくつかあるという。


『反撃はほぼない状態だが、言い換えれば、戦艦の防護区画内には今の機材では入れそうにもない』

『レーザーブレードでも切裂けないのか?』


 ブレードの刃の長さ以上の防御隔壁を有しているらしい。それは切裂けないよな。


『ツユキ司令。意見してもよろしいでしょうか』

『勿論。ヤマト、今回の機式宙兵分隊指揮官のクサブエ宙尉だ』


 クサブエとヤマトは軽く敬礼を交わし、会話を続ける。


『我々の部隊のアーマーロイド兵の装備する機体の中に、試験用ですが物質の結合を緩める照射装置を備えたものがあります。結合を緩めたのち、パイルバンカーで隔壁を破壊すれば内部に侵入することは十分可能ではないでしょうか』


 俺は視線でヤマトに反応を促す。視線を受けたヤマトが頷き返し、クサブエ宙尉の提案を宙兵隊指揮官が受け入れたとこと示した。


『俺も一緒に案内がてら防御隔壁に向かおう』

『そうだな。宙兵隊の指揮はお前が、機式宙兵の指揮は俺が取る形になるから、同格の指揮官二人雁首揃えて前線に向かうしかない』


 一々連絡を取り合って確認し合うような事も出来ないし、前線で調整官がするような仕事を担う人間もいない。宙兵と宙雷戦隊で異なる指揮系統が並び立つなら、指揮官同士現場で調整するしかないってことだな。


 何かあったら、ヤマトに丸投げしよう。そうしよう。




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