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097 全艦出撃!!―――『航宙駆逐艦』(弐)

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097 全艦出撃!!―――『航宙駆逐艦』(弐)


 地球における歴史年代において、その最末期、『核兵器』が登場することにより、総力戦と呼ばれる国家の全国力を上げた戦争形態が後退し、情報戦や経済戦といった形態に戦争が変貌していったとされる。直接戦火を交える『熱戦』に対して、『冷戦』と称される戦いである。


 その実、代理戦争として『熱戦』は行われており、陣営を異にする小国内の勢力同士が殺し合ったり、経済的なつながりで束縛されどちらかの陣営に組するのが当然とされる時代があった。


 その陣営として残ったのが、現在のUC時代における『USA』『ルーシ』『ヒンドゥ』『宙華』と『ニッポン』ということになるだろうか。ニッポンを除く四地域は、それぞれ盟主となる国家が核兵器を持つ超大国であり、軍事的経済的人口的な面で巨大な国家を形成していた。


 ニッポンはその四つの勢力の中ではUSA圏と最も近く、それ以外の勢力とも経済的なつながりを持って関係を形成していた。また、USAの軍事的保護下にあったとも言える。


 それ故、ニッポン以外の四勢力は核兵器という最終破壊兵器をそれぞれが有した状態で、核を用いない形での闘争を行っていたと言える。同じ惑星上でたくさんの核兵器が使用される事で、文明が崩壊し多くの国民を死に追いやると考えられていたからだ。


 使う事をためらう兵器、相互確証破壊的理解により、自動的喧嘩両成敗が発生する兵器として地球時代には認識されていた兵器だが、宙域国家時代においても、あまり使用される事はない。


 惑星上に向け使用する為には、それぞれの星系内に核兵器を運搬する宇宙船を持ち込まねばならないし、発射してから惑星上に降下する迄迎撃できないようにする必要がある。


 もしそれが可能であるなら、そもそも核兵器を使用するまでもない勝利状態にあると言える。亜光速で星系間、宙域間を移動する星系間ミサイルと言うものがないわけではないが、到達時間を考えればあまり意味がある兵器とも思えない。


 また、占領し経済的資源として惑星なり要塞なりを使用する場合、核兵器により破壊・汚染されたなら利用価値が相当下がると考えられる。また、宙華帝国であれば、新たに組み込まれる宙域の臣民が減少し、皇帝の威光が損なわれると考えられる場合もある。


 つまり、今も昔も核兵器は使い所が難しい。


 が、目の前の要塞なんかは……どうでもいいから、使い所というわけだ。


『どう? 驚いたかしら』

「まあな。砲撃の統制・管制にダメージが入るだろうな。反撃されにくくなる。それが、この攻撃の意図か」

『大体正解ね。それと、作ってからたまに使って効果検証しないと、使用期限切れになるからってのもあるみたいね』


 なのその冷蔵庫内の残り物的扱い。確か、その昔大国が十年ごとに戦争を起すのは、ミサイルや兵器の更新のためって話があったらしいな。


 画面上では、要塞の表面が爆散し、中から何かが噴き出している場所もある。おかげで、観測用の電子機器は破損するか、まき散らされた瓦礫の影響で観測できないか、陽電子砲などは拡散して威力が減退してしまうのではないかと思われる。


「第一戦隊、全速前進。前方、要塞から飛来するデブリに注意しつつ、接近する」

『第一戦隊前進。艦首シールド展開』


 第一戦隊の四隻は、最もデブリや小天体の多い場所を選び、捜索の目を逃れるように密かに接近する。ここではレーダー波も乱反射し、指向性の高い索敵設備も相当近づかなければ発見されない。はず。


 その代わり、速度を出す事は出来ないし、デブリを対宙パルス砲などで破壊することで発見される愚を犯さぬようにしなければならない。


 本隊は航宙機の攻撃を何とか防ぎながら砲撃を継続しているし、割って入った第二戦隊はジリジリとその位置を要塞に近づけつつあるが、要塞の陽電子砲の威力が高まる距離から踏み込むことができずに前進が停止しているように見て取れる。


『気が付かれたかも』

「要塞にか」

『いえ、コルベット……宙雷艇が四隻潜んでいたわ。こちらに向かってくるようね』


 宙雷艇はスループと呼ばれるJD機関を持たない小型コルベットよりさらに下の艦種であり、航宙機より二回りほど大きな内航船サイズのそれである。『艇』と呼称しているが、超大型の航宙機と言っても過言ではない。サイズとしてはPFSクラスだが、形状は航宙機に近い。


 その武装は、連装対宙パルス砲が一二基と航宙機用の中型宙雷を二ないし四発搭載している。要塞に接近する揚陸艦や小型艦艇を襲撃するために用意されたものだろうと推測される。


「これも無人機か?」

『さあね』


 考えている暇はない。57式陽電子砲はこういった小型舟艇を迎撃する用途に適した砲だ。直ちに射撃開始を命ずる。


 とは言え、こちらもあちらも、デブリだらけの宙域で回避行動も難しければ、命中させることも難しい。


『もっと寄せるわよ』

「えー」


 我がAI副官殿には秘策でもあるらしい。各艦、『雪嵐』とリンクしての攻撃を行うよう指示を出す。四隻の同型艦で、決まった装備であればカスミの能力でも十分に統率された攻撃を行う事ができる。


 四隻の宙雷艇は、こちらの砲撃をかいくぐるように接近し、一気に合計十六発の宙雷を発射し反転するところを狙われ、次々撃墜されていく。航宙機でもそうなのだが、直進しつつ加速してそのまま突き抜けるように逃げる方が被弾面積が少ないまま逃げ切れる可能性が高い。旋回する際に側面を晒し速度も低下するため、そのタイミングで反撃されると簡単に被弾してしまう。突入する迄は勇気を保てても、発射後はホッとして心が弱くなり退避行動をとってしまうのかもしれない。


 ん? AIにはそんな発想無いだろ。


「人間が操縦しているのか」

『旋回した機体はそうかもしれないわ。何か躊躇するような挙動もみられたし。そのまま突っ込んできたのは無人でプログラムされていたかもしれないわね』


 本来であれば、突っ込んで来る機体に関心と砲撃が集中し、その間に反転して逃げ出せると考えていたのだろうが、残念、同時並行処理する単一のAIによる統合射撃にその手の攪乱は通用しなかったらしい。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 我がAI副官曰く、レールガンにより発射された『反応弾』・核砲弾の威力はヒロシマ型原爆の威力の五分の一、3kt程度の威力であったという。三千トン爆弾だな。


『要塞ごと消し飛ばす威力は求めていないから、この程度で十分よ』

「けど、捜索するのに問題ないのかよ」

『あると言えばあるでしょう。けど、NBC対策くらいしているわよ普通』


 核兵器と言えば、熱と爆風と放射線による破壊になるわけだが、岩石と宇宙戦艦を組み合わせた要塞では、爆風と熱による破壊効果は限定的であると言える。強い放射線による電子機器の不具合に関しても、相応に重要区画は防護を施されている為、抵抗の致命的な排除まで至らないだろうということだ。そうだよな、効果あるなら、頻繁に使うだろう。


 だが、到達時間の問題や弾薬を確保しておくスペースの問題から、巨大な戦艦が一部搭載するならともかく、巡洋艦以下の艦種ではあまり装備しているという事はニッポン宙軍以外においても聞かない。


 ヤマトが艦内回線を用いて話しかけてきた。なんだよ、今忙しいんだよ、気持ちが。


『それでも、突入が多少楽になったという事実はある』

「宙兵隊がそう思うなら、それが正解だな」


 爆発直後であるならともかく、施設に残る残留放射能程度なら、装甲服や強化服を装備した宙兵にとって影響があるとは思えない。むしろ、破壊され無かった場所だけ捜索すればよいから、仕事が減って良かったくらいの感想かもしれない。


 ほぼ無人であるとはいえ、AIやアンドロイド兵による反撃が想定される。相手をする範囲が少ない方が良いと思うのは指揮官として当然だ。


 艦首を要塞に正対させ、俺達はデブリの多い宙域を抜け、目標へと急速に加速するのであった。





『宙兵隊 PFS発進許可求めています』

「発信を許可する。発進後、支援射撃開始。主砲で迎撃砲台に向け制圧射撃を行え」

『各艦承認。「雪嵐」に主砲のコントロール回せ』

『『『了解』』』


 ショボい主砲でも、近寄った十二門からの斉射が集約されれば、相応に威力を発揮する。


「制圧射撃終了後、第一戦隊は要塞に接舷する。本隊・第二戦隊に位置を通達、味方撃ちされないようにしてもらってくれ」

『要塞の背面に回るのは、残存している防御火器の餌食になりそうだから止めておきましょう』


 そうそう、ニュークリアでクリアされた地点に接舷するのが一番でしょ。苦労は買ってでもしろって、マゾじゃないから俺は。安全第一で活動するよ。


 PFSには尖兵小隊が移乗。強化装甲服を装備した宙兵が格納庫に収まり、複合要塞の開口部、恐らくは連絡用のハッチに向け進んでいく。散発的に要塞に配備された対宙パルス砲などの砲座から射撃されるものの、その都度、即反撃し沈黙させる。


「何が潜んでいるんだろうな」

『パワードスーツなら御の字ね。多脚戦車なんか出てきたら、苦戦するでしょうから、支援砲撃できる範囲を伝えておかないと、全滅しかねないわよ』


 確かに。パワードスーツは歩兵相手には十分な装備だが、要塞防御用の移動砲台・多脚戦車など出てくると非常に危険だ。また、さきほどの宙雷艇クラスのパルス砲の射撃でも大打撃になり得る。


 艦砲って、人間相手に撃ったら粉々になる威力があるもんな……人に向けてはいけませんてなもんだ。





 偉く長く感じたが、宙兵を載せたPFSが接岸。中央部の格納庫が開き、中から強化装甲服という名のマッチョスーツを着込んだ宙兵が飛び出し、周囲を警戒する。最後に降りたのは、俺達の着用する『パワードスーツ』

とは一線を画する禍々しい角ばった黒い機体。


『新型ね』


『16式宙兵隊装甲パワードスーツ』は、分隊支援火器に相当する機体で、尖兵小隊は、二体それを有している。主にベテラン兵が着用するのは、身体的な能力よりも、独立した判断が求められる機体であるからと言われる。要は、体を痛めたベテランが使う用ということだな。


 生き残りの対宙機銃がその装甲パワードスーツを掃射する。


「あれで耐えられるのかよ」

『本当に仕上げてきたんだわ。デーブに転送してあげないとね』


 人型兵器及び、宙兵の使用する兵器はデブとは別部署なんだが、折角ついてきたんだから見たいと思うよね。


 そんな事を呟きながら、『夕凪』の主砲で反撃してきた対宙砲を砲撃し沈黙させるカスミ様。


 周囲を警戒しつつ、パワードスーツ二体を先頭に、開口部から内部へと侵入していく。ついで、接岸した『雪嵐』から次々に後続の宙兵が下りていく。


『ツユキ、一旦離れてくれ。俺達はこの位置に前線指揮所を置く』

「助かる。ここだと回避行動もとれんからな。支援火力が必要な時には……」

『いつでもあたしに言いなさい。以上!』


 なんで被せるかね我が副官は。


 各分隊に一機ないし二機のパワードスーツがあるため、四個小隊でニ十機のパワードスーツが要塞上に降り立っている。これは、楽勝なんじゃないでしょうか。と無責任ながら思ってしまう。


 順調に思える時ほど、リスクを抱えていたりする。好事魔多し。


『後退しろ!!』


 開口部から噴き出す爆炎。そして、ワラワラと飛び出してくる宙兵の兄さんたち。そして、後方に吹き飛ばされる装甲パワードスーツ。


 開口部から顔を出したのは、二脚式の無限軌道の足を有するパワードスーツと戦車の中間のような車両であった。



【作者からのお願い】

更新できるように頑張りたいと思います。応援していただけると嬉しいです。


 一日一(・∀・)イイネ!!もお願い申しあげます!


『わりと読めた』、『この続きを読みたい』と思われましたら下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。よろしくお願いいたします!



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