激突
「食うって言ったって口はどこにあるんだ?引き裂く手も無いし・・・」
窓から外を見ていた栗原がぶつぶつと言った。
その目は動き高さを落とし礼司たちの正面を向いてきた。
「すみません、11時です」
栗原が窓を開けて恐々言った。
「さあ、鬼退治の時間だ!」
「ママ、お願い」
「はい!」
由美は勾玉に手を当てると
三人とタクシーがバリアに囲まれた。
「ゴー」
強大な目が血の色に染まり名その中心から光を放った。
バリアに囲まれているにも関わらず、
三人は飛ばされタクシーが大きく揺れた。
「キャー」
由美の座っていた車いすが倒された。
地面に転げ落ちた
「由美さん」
礼司が車いすを起こすと再び目玉が赤くなった。
由美は勾玉を右手で囲むと後ろの社殿が光りだし
まぶしいほどの光線が鳥居の中を通り抜けを
眼鬼に向かって行き目玉は黒い霧で囲まれた。
「魔美、いまだ」
魔美は弓を引き目の中央に向かって矢を放ち
矢が刺さるとそこはさらに黒くなり空高く上がっていた。
「くそ!逃げた!」
魔美が弓を引いたがあきらめた。
「止めて魔美、届かないから矢が無駄になる」
魔美は由美の方を振り返った。
「はい!」
「俺の刀じゃもっと届かない」
「礼司さん九字切れる?」
「いや、もう11時だ」
「違うわよ、何言っているの殺すぞ!」
魔美が怒って亮に弓を引いた。
「待て待て!魔美」
「礼司さん、いい?続けて言って」
「はい」
礼司は由美には妙に素直だった。
「臨」
「臨!」
「兵」
「兵!」
「闘」
「闘!」
「者」
「者!」
「皆」
「皆!」
「陣」
「陣!」
「烈」
「烈!」
「在」
「在!」
「前」
「前!」
「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前」
礼司は九字を切ると刀にありったけの気を送った。
礼司の両腕からまるで血液が飛び出しそうに何かが
刀に伝わるとそれが七色に光り輝き刀の先(鋒)から
放電しているかのように見えていた。
「おおおお、来た来た」
「まだよ!」
由美が勾玉を手で囲み祈ると社殿から光が礼司の刀に向かって輝いた
すると刀から延びる光はだんだん長くなっていった。
「由美さん、いいか?」
「はい!」
「おりゃ~~~~~~」
礼司は雲に向かって大上段から振り下ろすと
「ギャー」
雲は空に大きく広がった。
「手ごたえあり」
「うん、すごい!」
礼司は魔美の声に勢いに乗って何度も目玉を切って行った。
「ハッハッハッ、どうだ参ったか?」
「まだだよ」
大きく広がった雲に全く反応が無くなっていた。
「どうやったらいいんだ?」
体力に自信があった礼司だが1kg以上あった日本刀を振り回して
腕が疲れ息が切れていた。
礼司が休んでいる間に雲はあっと言う間に復活し目の形に戻り
赤い光線を放った。
「ハッ」
由美は右手を上げてバリアを張った。
「キャー」
ショックが三人とタクシーを揺らし礼司は魔美の椅子をしっかり持った
魔美も礼二も飛んできた小石で顔に傷り血を流していた。
間髪入れずに目玉は再び赤い光線を放った。
「ハッ」
由美はバリアを張ったがその力弱く、礼司は由美を抑えるのがやっとで
魔美が地面を転がり、タクシーが横倒しになった。
「俺、食われる!」
栗原は悲鳴を上げた。
「馬鹿。お前だけじゃない俺達も目が合っているから食われる」
礼司は由美の車いすの前に立ち大股で立った。
「もう許せねーぞ!来るなら来い!」
赤い光が礼司に光を放った。
「夜野さーん」
魔美が赤い光に囲まれた礼司の名を呼んだ。
礼司は刀を縦に持ち光線を反射さると
服がボロボロになっていた。
「制服は会社の支給品だ!弁償しろ!」
礼司は今まで倒してきた鬼を頭に浮かべた。
「天の力よ、地の力よ、風の力我に力を・・・」
礼司は気を刀に溜め大上段から大きく振り落とし
刀の先から光を放っていた。
「ゴゴゴゴゴ・・・」
目玉が音を立てて小さくなって行った。
「魔美、矢をよこせ」
怒った礼司は矢を持ってグルグルと回し
気を矢に送ると魔美に渡した。
「魔美、やれ!」
魔美が放った矢は目の中央の黒い部分にあたるとそれが突き刺ささり
どす黒く変化した、
「反応ありだな。矢は後三本か?」
「うん」
礼司は三本の矢を持って祈ると腕から血がにじんできた。
「夜野さん、腕から血が出ている」
「気を入れているんだよ」
「どう見ても血なんだけど・・・」
そう言うと魔美の矢は真っ赤になっていた。
「魔美、目玉が復活して来たら弓を放て!」
「うん」
礼司は振り返って社殿に向かった。
「鏡、鏡」
礼司は靴を脱いで社殿に奥に行き鏡を見つけそれを手に取って
戻った。
「礼司さん何を取って来たの?」
「さっき、刀であの光線を反射させたから今度は銅鏡で反射させる」
「なるほど・・・」
「魔美、残りの矢は?」
「後一本」
「魔美、ちょっと待てやる事がある」
「早くしないと復活してしまう」