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地獄タクシー Ⅳ  作者: 渡夢太郎
眼鬼
6/25

「ママ、赤い雲が大きくなって追ってくる」

赤い雲は次第に楕円形に変化してその中央は黒い丸に変化していた

「やはり、ターゲットは栗原さんなのね」

由美は目を閉じて口の中で何かを唱え始めた。


「魔美、手伝ってもらうわ」

「わかっている。弓は大丈夫よ」

「眼鬼は私の体を奪った鬼じゃなわ、だからかなり強いわよ」

身体が万全じゃない由美は眼鬼と一人で戦って勝つ自信が無かった。

「体を奪った鬼ってなんだ?!」

礼司は事情が読めなかった。


「私たち巫女はこの世の鬼を退治する力を持っているの、

 それが三年前、一挙にこの世界に鬼がやって来て

三人の巫女が戦った。

仲間は次々に倒れ勝てそうになかった私は

自分の体の中に鬼たちを封印したの」


「それでママは全ての機能が奪われ生きる屍になっていたの」

由美は耳も目も口も聞けず食べる事すらできない、

髪も抜け手も足も体も動かす事が出来きず

まるで壊れたマネキンのようになっていた。

「まさか内臓も?」

「うん、動いていたのは心臓と脳だけだった」


「それで魔美は俺に鬼を退治させていたんだな、

鬼の情報も知っていたのも納得した」

「そうだよ。夜野さんが鬼を退治してくれたおかげで

ママはここまで動けるようになったの」

礼司はうなずくとある記憶がよみがえってきた。


「そうか、思い出した最後の力を振り絞ってあんたの

ダンナを俺の世界に飛ばしたんだな」

「そう、あなたに鬼を退治してもらって私の体を取り戻してほしくて」

「そうだったのか」

礼司は何故自分の世界に魔美が来たかやっと理解した。


「魔美は巫女じゃないのか?」

「今は巫女の修行中、三年前はまだ14歳の子供だったので能力が無かったの」

「魔女宅のキキは13歳だったな」

「何言っているの」

魔美が後ろから怒鳴った。


「すると由美さんが封印していない鬼はもっと強いと言う訳か」

礼司は急にまじめに由美に話しかけた。

「そうよ」

「なるほど、考えてみれば今までの鬼はあまり強くなかったな。

 巫女でもない俺ごときが退治できたんだから」


「すみません、それで俺は鬼に食われるんですか?」

栗原は恐怖でシートに体を丸めて座った。

「私たちが負けたら食われちゃう、

生きながら裂けるチーズみたいに体を引きされて」

「マジか!」


礼司たちは高尾山口に着いた。

「こんな夜遅く山登るんですか?ケーブルカーも

リフトも止まっていますよね」

栗原がビビっていた。

「大丈夫、俺の世界では1号路は全面舗装で車で登れる」

礼司は躊躇なく山道に入った。


「由美さん上がったらどうするんですか?」

「薬王院まで行ってください」

「了解です。猿園の向こうですよね」

礼司は誰もいない暗闇の登山道を登って行った。


「薬王院は真言宗の修験場で有名だけど

飯縄権現いずなごんげんも祭ってあるの」

「ん?権現(仏が神や人間になって現れそれを祭ったのが

徳川家康大権現を祭っている東照宮、根津権現、春日大社、

日吉神社、箱根神社、厳島神社(三鬼堂)など数多くある)」


「神仏習合、神と仏を同時に祭ってあるの、

昔はうちの大鳥神社と善念寺は一緒だったのよ」

「なるほどな、一神教の外国人には説明が難しい」


「ここなら、パワーが強いので鬼と戦いやすいわ」

礼司は薬王院の前に車を止めると外に飛び出し

赤い雲を睨みつけた。

「私も降りるわ」

「了解」

礼司はトランクから車いすを出して由美を降ろした。


「魔美、あなたは弓を使って!」

「はい」

「礼司さんはうちの神社で使っている刀」

「付喪神ですか?」

「良く知っているわね。残念ながら付喪神はついていないわ」


※付喪神(つくも神)は使った道具に精霊が

宿り強いパワーを発揮すると言われている。


「私は勾玉でバリアを張ってあなたたちにパワーを送って援護するわ」

「わかった」

礼司は由美の力が心強かった。

魔美は弓をタクシーから降ろし礼司と二人で弦を張った。

「弓って大きいんですね」

栗原が驚いて弓を見上げた。


「日本の弓は世界一大きいのよ」

「他の国は?」

「日本以外の国は複合弓と言って木を合わせて小さくて強力な弓を

戦いに使っていたみたい、弓と言う字を見ればわかるでしょう」

「ああ、なるほど」


「日本ではこの大きな弓は戦いより精神的なものを追求していたみたい」

「ですよねこんな大きなもの持って戦ったら矢を放つ前に斬られてしまいますよね」

「だから、場を清めたり悪魔を祓ったりすることもあるのよ。相撲の弓取り式も

 土俵を清めると言う話もある(諸説あり)」

「という事は鬼に効果あると言う訳ですか?」

「そりゃ、石ころ投げるより効果があるだろう。あはは」

礼司がそう言うと魔美は睨みつけて礼司に弓を向けた。


栗原に弓を持たせると魔美は矢筒に矢を6本背中に担ぎ、

右手に弽(ゆがけ、弓用の手袋)をして弓を持った。

「かっこいい」

栗原と礼司はセーラー服魔美の凛とした姿に引き込まれた。

「やはり、夜野さんJK好きだったんだ。変態!」

魔美は礼司を冷たい目でにらんだ。

「で、では俺も・・・」

礼司は鬼の根付をチャランと鳴らすと120cmの大刀を手に持った。


「おい、栗原。何時だ!」

「10時50分です」

「来るぞ!車の中に居ろ」

「は、はい」

弓を持った魔美と刀を持った礼司は並んで鬼に向かって立ちその後ろに

由美が座っていた。

赤い雲は高尾山を覆いつくすと完全に目玉を作っていた。


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