表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄タクシー Ⅳ  作者: 渡夢太郎
眼鬼
4/25

逃げる

「首謀者は?」

礼司は魔美の手を掴んでいた梨田の奥襟をつかんだ。

「すみません」

梨田はうなだれた。

「みんな家庭は?」

「俺だけ結婚しています」

運転していた栗原が答えた。

「ひょっとしたら鬼と目が合わなかったか?」

「あっ、合いました。ジロッと見られました」


「魔美、そういう事だ!」

「気の毒にあなた殺されるわよ!」

「だ、誰に?」

「あなたと目が合った鬼に・・・殺されると言うより食われちゃう。

生きたままボリボリとね。信じる信じないは勝手だけど」

「ええ!」

鬼と目が合った栗原は魔美の言葉にガタガタと震えだした。


「助けてください。お願いします」

栗原さん手を付いて頭を下げた。

「栗原さん、鬼ってどんな感じ?」

「やたら大きい赤い目がギロッと見ていました」

栗原が大きく手を広げた。


「眼鬼か・・・」

「魔美、眼鬼ってどんなんだ?」

「にらんだ者を動けなくして手足を引き裂いて最後に頭を食う」

「あはは、結構残酷だな、栗、梨、柿だから食べやすい」

礼司は笑いながら栗原を見た。


「その鬼がこっちに現れるか向こうに現れるかどっちだ?」

「わからない、でも私帰らなくちゃ。ママが心配する」

魔美は冷たい返事をした。

「魔美、つれない返事だな?いつもは鬼退治に夢中なのに」

「眼鬼は私に関係ないの」

「関係ある鬼と関係ない鬼が居るんだ」


「そうよ。じゃあ帰るね」

「オイオイ、こいつらを見捨てるのか?」

「だって私を襲った男なんて・・・鬼に食われて死ねばいい!」

「わかった、皆さんに提案だ。私が君たちの世界に送り届けよう」

「本当ですか?」

「その代わりこの車は届けられないから預かっておくぞ」


「えっ??」

「OK、じゃあお墓に行こう」

礼司は魔美が出入りしていた墓の前に行った。

「魔美、以前この墓が壊れてこっちへ来れなかったんだよな」

「ここは私の能力があるから使えるの、誰でも通れるわけじゃなわ。

 三人とも無理だと思う。バイバイ」

魔美は墓の前に立ち手を振ると姿を消した。


「消えた!」

三人は礼司の言っていた事を本気で信じていた

「俺たちも帰りたいです」

礼司は腕を組んで考え込んだ。

「ここは無理だから俺にタクシーに乗ってくれ」

礼司は三人を車に乗せた。


礼司は三人を乗せて運転席で腕を組んだ。

しばらくすると後ろから声が聞こえた。

「夜野さん、寝ています?」

「い、いや。考えていたんだ」

「どうするんですか?」


「SSATの夜野礼二と魔美の父親は死んで俺と合体した、

俺はそのせいで能力が強くなった。俺の中には二人の記憶がある

思い出せ!魔美の父親の記憶」

礼司がそうつぶやくと魔美と由美の顔が次々に現れた。


すると目の前に神社が見えてきた。

「ここ、どこだ?」

礼司はつぶやくと振り返ってにっこり笑った。

「お客様~向こうの世界、近くに神社がありますか?」

「はい、善念寺の隣に大鳥神社があります。 

ほらさっき行ったお墓の向こうに神社のあるんです」


「そう言えば彼女あんなところ歩いていたから神社の娘かもしれない」

「でも高校はミッションスクールだぜ」

「そうか・・・なんだかんだと言っても魔美の家も知らなかったんだな」

礼司は寂しい気がしていた。

「ふう」


礼司はため息をついて鬼の根付をチリンチリンと鳴らせ

目を閉じて、頭の中でイメージを膨らませた。

「もう一人の夜野礼司さんあんたの世界に行ってくれ」

三人を乗せてメーターのスイッチを押してアクセルを踏むと

タクシーは金色に光った。

数秒後光が消えると礼司は後ろを振り返った


「はい、お待たせしました」

「走っていないじゃないか?」

魔美の腕を掴んだ梨田文句を言った。

「でも、元の世界に着きましたよ」

「確かに元の世界だ」

タクシーから降りた三人は周りを見渡して喜んでジャンプをしていた。


「夜野さん、本当に来れたんですね」

暗闇から出てきた魔美が礼司に声をかけた。

「ああ、魔美のオヤジさんの力を借りた」

「ママに会っていく、会ってみたいと言っていたよ」

「いや、やめておく。仕事があるんでね」


礼司は自分の世界で死んだはずの由美に会うのが怖かった。

「そう、また来てね」

魔美は嬉しそうに手を振った。

「ああ、その前にやる事が出来たみたいだ」

礼司は空を見上げると月に照らされた真っ赤な雲が

渦巻いてゆっくりと降りてきた。

「来るぞ!」

礼司は栗原の前に立つと魔美の顔を見た。


「魔美!武器が無い」

「今日は何の準備もしていないわよ」

「鬼のノブも無いのか?」

「あるよ」

一度家に戻った魔美はノブを礼司に見せた。

「栗原君はタクシーに乗って残りの二人は善念寺に逃げろ!

 早くしないと食われるぞ」


「は、はい」

二人が逃げていくと礼司はシフトを鬼のノブに交換をしていた。

「魔美、まだ23時前なのになぜ鬼が出る?」

「わからない。ママに聞いてくる」

魔美は走り出した。

「ど、どこへ行くんですか?」

「あの雲から逃げる!」

「どこまで?」


「向こうの世界に戻ってもいいが

もう一度こちらの世界に戻れる保証が無い」

栗原は後ろを振り返って空を見上げた。

「だんだん大きくなっていますよ」

栗原は雲を指さした。

「わかっている。まだ大丈夫なはずなんだが・・・」

礼司は時計を見ながら雲の様子を観察していた。

「時間が関係するんですか?」

「うん、関係する」


「夜野さん私の家に来て!」

魔美から電話があった。

「おい、携帯電話通じるのかよ。家ってどこだ?」

「善念寺の隣の大鳥神社」

「ん?」

礼司はタクシーを走らせると

墓地の向こうに鳥居があり社殿があった。


「本当だ、神社がある」

礼司は神社脇の自宅にタクシーを寄せると

車いすに乗った由美が居た。

「あっ、お久しぶりです」

礼司は車から降りて由美に深々と頭を下げた。


「うふふ、夜野礼司さん。こんばんは」

向こうの世界の由美と同じ顔をしていたが

こちらの由美は車いすに乗っていた。

「ママを車に乗せて」

魔美は車いすを押した。

「は、はい」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ