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地獄タクシー Ⅳ  作者: 渡夢太郎
眼鬼
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眼鬼

1章 眼鬼


魔美は大きな窓があるキッチンで朝ごはんを作っていた。

「乱丸ダメよ、じゃまよ」

足元には巨大な猫が魔美の足にしっぽを絡め

魔美は乱丸を跨ぎテーブルに皿を並べると

母親の由美が車いすで入って来た。


「おはよう魔美」

「ママ、大丈夫?」

キッチンで車いすの脇に膝を着いた魔美が由美の額に手を当てた。

「ちょっと熱があるみたい」

「ええ、今日は体が熱いの」

魔美はトーストとベーコンエッグとサラダと豆乳をテーブルに出した。


「魔美のお陰でずいぶんよくなったわ。

こうして自分で車いすにも乗れるようになったし、

声も出るようになったわ」

魔美は冷たい豆乳を呑んだ


「後、どれくらいかな?」

「左足と左手と目だから・・・」

「あの戦いに負けなければこんな事にならなかったのに・・・

 パパも死ななかった」

「うふふ、パパは死んだわけではないわ、私がパパをあっちの世界に飛ばしたのよ」

「ごめんね、あの時はまだ私が子供だったから能力が無かった」

魔美は笑って由美に顔を寄せた。


「ママ。パパに会いたい?」

「もちろんよ、向こうのパパは元気?」

由美は美味しそうにトーストを食べた。

「うん、ちょっと性格が変わってチャラくなって

パチンコや競馬で遊んでいるけどだんだん能力が強くなってきている」

「まあ、まじめなパパも良いけどチャラいパパも可愛くて良いわね」

由美は目を輝かせた。


「もう一つの世界のパパは警察の特殊部隊の隊長さんで

そっちはめちゃくちゃかっこいいのに・・・」

「じゃあ、後三匹倒したらこっちへ来られるかもね・・・会ってみたいわ」

「どっちの方?」

「どっちって?三人が合体しているんだから一人でしょ」

「うふふ、三人分の記憶があるので本人も戸惑っているみたい」


「あら、大変」

「じゃあ、行ってきます。後大丈夫ね」

魔美は食べた物を片付けて立ち上がった。

「大丈夫よ、午後にはヘルパーさんも来るし、おじいちゃんも朝のお勤めが

終わったら戻って来るわ」

「はーい、学校の帰りにアルバイトがあるから遅くなります」

「ええ、あなたもその力があるから気を付けて、鬼が出ても一人で戦っちゃだめよ」

「はーい」


~~~~~


私、オオトリ魔美17歳高校二年生、高円寺の大鳥神社の孫。

おじいちゃんが宮司をやっている。

そして隣には善念寺がある。

神仏分離される前はお寺の中に神社があるし神社の中にお寺がある。

日光東照宮は神社だし赤坂の豊川稲荷はお寺、

浅草の浅草寺の隣は三社祭で有名な浅草神社、

江戸時代お寺が住民の戸籍管理をしていたので

お寺の力が強かった。

お正月は神社で初詣、結婚式は教会、死んだらお寺

12月25日はクリスマス最近はハロウィンまでやっている

日本の宗教は複雑!


古代、巫女卑弥呼は神の力を得て様々な奇跡を民にみせ

政治を行い、それ以降も巫女は政治に大きくかかわっていた。

世界的に女性は謎の力を持っていてその能力は世界では魔女と呼ばれ

日本の巫女もその類である。


私とママは巫女で神の力を得てこの世にある魔と戦う力を持っている。

向こうのパパは夜野礼司でタクシードライバーだけど、こっちのパパはお婿さんで

鳳礼司と言う名前で自然科学学者の幸せな家庭だった。


三年前のあの事件が無ければ・・・


「おはよう、魔美」

高校の門の前でセーラー服の女の子が魔美に声をかけた。

「おはよう千枝」

「ねえ、今日学校終わったらケーキ食べ放に行かない?」

「ごめん、今日もフェミレスでアルバイトなの」

「どうして?お金持ちなのに・・・」

千枝は大きな神社の孫だから魔美はお金があると思っていた。


「ちょっとタクシー代を稼がないと」

「えっ?タクシー代?」

「うふふ」

「じゃあ、来週中間試験が終わったら行こう」

「そうだね。それならいいよ」


「ねえ、魔美のママ元気?」

千枝は聞きにくそうに聞いた。

「うん、車いす生活だけどかなり動けるようになった。

 また遊びに来て」

「良かった。また一緒に勉強したい」

「そうだね、中学の時は一緒に勉強したね」

魔美は三年前を懐かしく思った。


「アルバイトの帰り気を付けてね。最近痴漢が多いらしいから」

「うん」


ママが休業中なので鬼は何日かに一度、

この世に現れ人間を食っているが

それは鬼の仕業だと誰も知らない。

鬼が出て人が食われて行方不明になり

警察が出動するが犯人の目途はつかず、

捜査は行き詰まり犯人の手配もできない。


私たち神社の神職者が鬼を封印しているだけど、鬼を退治できるのは

能力を持った巫女と鬼退治を手伝う鬼人だけ。

決してお正月のアルバイトの巫女には出来ない。


「おい、鳳いるか?」

昼休みにトレパン姿の男が教室に入って来た。

「はい、後藤先生どうしたんですか?」

「今日は部活あるんだっけ?」

「はい、お裁縫部です」

「今度の日曜日弓道の試合出てくれないか?」


「わかりました」

「鳳、弓道部で本気でやらないか?段が取れるぞ」

「すみません、ちょっと家庭的に無理なので・・・明日練習に参加します」

魔美にとって段などどうでもいい話で矢によって鬼を倒せればよかった。


「ああ、お母さんの介護か残念だな」

弓道部の顧問の田代は魔美が参加してくれることが決まって

ニヤニヤして戻って行った。

「ねえ、魔美。スポーツ万能だから運動部の方が向いているんじゃない。

 合気道部にも誘われているんでしょう」

千枝が興味深そうに近づいてきた。

「うふふ、私は裁縫が好きなの」


放課後、裁縫部に行った魔美は袴を縫いだしていた。

「鳳さんは運針が上手よな」

顧問の田代が話しかけた。

「ありがとうございます」

「今どき和裁がそこまで出来る人は居ないわ」

「袴は家業なので・・」

「うふふ、そうだったわね」


「あら」

窓の外にCD大の黒い影が見えた。

魔美は長い針に絹糸を通しそれを持った。

「ちょっとトイレ行ってきます」

魔美は立ち上がると校舎の裏に行き

狭い通路を歩くと1mの高さをそれが漂っていた。


「あんた何者!」

糸の付いた針をそれに放り投げると黒い物に

突き刺さって糸が絡まり消えて行った。


「来るのかな?」

巫女の修行中の魔美は何の予兆か分からず

空を見上げた。


魔美は五時からファミリーレストラン・スティックに入った。

「おはようございます」


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