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赤の書  作者: AIR
8/27

王都、炎上

「おき、 お   ろ  リ、、ャ」


「起きろ、二 とも」




「あれ?誰か呼んでる? …………


お父様の声?



それに暖かいわ~



「起きろティターナ」



「起きるんだ、早く」


すごい勢いで体を揺らされて私は起きた。



私テーブルで寝ていたの?

あれ?ここベッドじゃない、



ん? 辺りが赤い……



な、なに、   こ、れ、…………





私は今何が起こっているのか全く分からなかった。


周りは赤くてとても暑い。

これ火の中に、いる?


何がどうなっているのか全く状況が見えない。

燃えてるの?


お母様も私の目の前で寝ていて、

なに? 何なの? 何がどうなっているの。 悲鳴が、悲鳴が聞こえるわ



「お父様!」


「早く部屋から出て、脱出しないと」



「これ何、どうなっているの」


お母様も慌てて起きた。

私と同じように状況が読めていない。


それに今までこんなお母様見たことがない。

必ずベッドで寝ているのに、お母様までテーブルで寝ているなんて。

羽目の外しすぎッてこと?

そんなお母様を見るのが初めてで違和感しかない


「あなた、これは? 」


「敵軍だ。攻めてきたみたいだ」


「そんな、」


「とにかく早くティターナを連れて安全な所へ」


「えぇ、そうね


行くわよティターナ」



私はお母様に手を取られて走り出した。


あまりの出来事に頭がついて行かない


いったい何がどうなっているの?




「いたぞ、こっちだ」


「や、止めろ、止めてくれぇ


ぐあぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁあっぁっぁぁ」



どうして、苦しそうな声が聞こえるの。



「皆急いで!こっちよ、まだ火が回ってないわ。急いで逃げて」


メイドさんが急いで部屋中に声をかけている。



「こっちだ進め」


兵隊さんが戦っている

知らない兵隊さんとここの兵隊さん。


廊下にも人が寝ている。兵隊さんが何人も。いや、倒れてる、血まみれで。

死んでいるの?



あまりの光景に目を塞いだ


「ティターナしっかり走りなさい」


お母様。


部屋が少し熱い、体が熱いわ。

私たちの部屋にも火が移っていてい、掛物が燃えている。


「とりあえずこっちだ、行くぞ」


扉を開けた先も火がついている。


「すごい煙だ。口を塞いで行くんだ」



「あなた、早く下に降りたほうが。 」


「あぁ、そうしたいんだが、ダメなんだ。

下手に降りると敵兵につかまってしまう。

それに火の手は下のほうが強いんだ。

道を誤ると逃げ場がなくなってしまう 」




「そんなにたくさんの兵隊が?いったいどうすればいいの? 」


二人の顔、二人の話し方を聞いているとどうにも解決策が無いように聞こえて仕方がない。



「この城は包囲されたも同然だ」

くそ、何か打つ手は、」



「居たぞ、ここにいる!」


人の声


「まずいこっちに兵隊が近づいて来ている。」



「とにかく兵隊に見つからないように、上に上がるしかない」



「上に上がったら逃げ場なんてないわ」


「くっ」



「きゃぁぁあぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁあぁ―

いやっ、お願い、止めてく、」


「あああぁぁぁあっぁ、あ、あ、あ、あ」


「そっちにも行ったぞ」


「助けて、助けてぇぇ、」


「いやあぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」



もう聞いてられない。

耳を塞ぎたい。


「こっちの兵隊はどうなされているの? 」


「わからない。だけど、兵舎が吹き飛ばされている。ほとんどが黒焦げだ。」


「それって……」


「兵舎がまず一番に爆破されたらしい。

酷い事をする。


さぁ、 とりあえず、上へ行くんだ」


父様に従って部屋から離れる。




「おい、止まれ」


兵隊二人に行く手を塞がれた。

この人たちはここの兵隊さんじゃない。


「きゃああああ」


「お前たちなんでこんなことを」



「黙れ、死ねー」



お父様?!


お父様は相手の槍を抑えた。



「行けぇ――。 お前たちは早く逃げろ 」


「お父様! 」


「行くわよティターナ」


「お母様待って」


私はお母様に手を強く引っ張られていった。



お父様は可憐な身のこなしで槍を奪うと、槍を持っていた兵隊さんを一突きして、床に転がした。


もう一人の兵隊さんが、剣を掲げてこっちに走ってくる。


見開いた目は恐ろしいの一言だった。


後ろに付いて走る私に、剣は降り降ろされた。


大きく振りかぶられた一撃は間一髪、スカートの裾が二つに切れるという空振りで終わった。


この時始めて私は殺されるんだという感情に畏怖した。

途端に全身の筋肉が硬直していく。

夢じゃないの? そうよ、きっとこれは悪夢を見ているに決まっているわ。

私は何度も自分にそう言い聞かせて後を走る。


剣士は、後ろを向いて走る私の目の前で血しぶきをあげて失速していった。


喉を何かが貫通している。


人の血。生暖かい。いいえ、とても熱い。



「大丈夫か!? ティターナ」



お父様が全速力で駆け寄ってくる


お父様の投げた槍が彼を殺した。

私は、お父様が人を殺すところを見たわけではない、


だって私が見たのは、ただ剣を振り回しながら追いかけて来る兵士と、その兵士の喉から急に飛び出してきた血と槍しか見てないもの。


そうあれはお父様ではない。ただ偶然槍が飛び出してきてこの人が倒れただけ。

そうよ。そうに決まっている。お父様じゃ…ない…わ。



私は怖くて言葉も出なかった。

ただ、首を縦に振る事すらもできない。



人が、人を殺し合う。昔話で聞いたことはあったけど、それは昔話。おとぎの話ではなかったの?

こんなの、こんなのって、



「待てー、止まれぇ! 」



まだまだ後ろから、そこに倒れている兵隊と同じ格好の人が走ってくる。


もう私たちは終わりなの?助からないのかな……



「死ねー」


私は目を瞑った。



あれ? 当たってない?



恐る恐る目を開けるとお父様が剣を振る手を掴んで私の前に立っていた。


「私の大事な娘を殺らせるかぁ―」


お父様そういって兵隊さんを押し返すと、剣を奪ってその兵士を叩いた。


「貴様ら、俺たちの仲間を殺しやがったなぁ!

絶対に、許さねぇ!」


他の兵隊さんは倒れている二人の兵隊さんを見て目を血走らせた。


お父様は剣先を向けてきた兵隊さんと押し合っている。

その後ろに仲間の兵隊さんが沢山。

いつ後ろから他の人がお父様を切りに来てもおかしくない状態。


お父様も動けない。きっとあの手を離して体をそらしたらそのまま切られて倒れるわ


嫌、嫌よ、お父様、お父様を殺さないで。止めて。


他の人がお父様に襲い掛かる。

お父様!







でも、お父様の動きはは私の想像をはるかに超えていた。


どれだけこのような場の経験を積まれてきたのだろう。

例え三人が束になってきたところで、お父様は負けなかった。


剣を抑えたまま、一人目の攻撃を交わすと、二人目の人が剣を振り下ろす前に、お父様は足を使って兵隊さんを蹴り飛ばした。

呆気にとられたその一瞬で、お父様は剣を奪ってお父様の前に立つ兵隊さんを切り倒した。



また、血が飛んでる。

その人は床に倒れた。


すごく痛そう。可哀想だわ。早く手当てしてあげないとあの人死んじゃう。

床に倒れた男の体はぴくぴくと動いている。

あの動きは何をしてるのかしら?ただ、とっても苦しそうなのだけはわかる



「貴様、よくも」


後ろの大きな男が声を荒げて前に出てきた。


お父様はその男の一撃を剣で受け止めた。


「絶対に許さん」


男とその左右からも私たちを取り囲むように展開する。


4対1なんて卑怯すぎるわ。


私たちは壁に追いやられて、囲われた。


お母様の手も震えているのが伝わる。


助けて、お父様。



私の方を見た兵隊さんは

私と目が合うとにやりと笑って見せた


「嬢ちゃん、怖いのか?」


私は訳も分からずただ首を横に振っていた

何の思考も働かない。


「じゃあおめぇに選ばせてやろうか?

お前のパパとママ、それかお前。どっちを先に殺したらいいかな? 」


なんてことを聞くの。

私は恐怖のあまりただ唾をのんだ。

そんなの、答えなど出てくるわけもない

もう、いいから早く目が覚めてほしい。


「何だ、答えないのか?」


死にたくない、殺されたくない。お母様もお父様も失いたくない。色んな感情が出てきた。


「そうか。答えないのか?

ならもういい、お前から死ね」



驚いて目を見開いた

私から死ぬの?答えれれないから、答える言葉なんてないから、戸惑っていただけなのに、

私死んじゃうんだ。

嫌だな。


剣はまっすぐ私に下ろされた。

何の躊躇もなく。


これで目がさ覚めたら嬉しいのにな。


お父様はまた私の前に立って剣先を防いでくれた。

剣を奪って相手に向ける


「ほぉう、」


「お前たち、こんな子供から殺そうと……」


「子供?

子供も大人も関係ねぇ。ここにいる奴は税員殺せ。

それが命令だ。お前たちは死ぬしかないんだよ。

悲惨な光景を目にして死ぬより、先に送ってやるって言うのは優しいってもんだろう」


一人の兵士が剣を渡し、お父様が奪った剣を弾き飛ばす。


いやぁぁぁぁぁぁぁぁ、


お父様の右肩を刃物が割く。


お父様……、血が……


「お前からでもいいんだけどなぁ!先にいくか?

後ろの二人は俺たちがゆっくりと可愛がってやるからよぉ」


お父様は隙を見て大きい男の人を交わすと、通路側にに立つ一人の兵士を切った。


「今だ、走れ。急いで走れぇ―」


お父様は死ぬ気だわ。


でもダメ、逃げたくても、体が動かないの。死にたくないけど、逃げ出したいのに、恐怖が勝つ。

お父様もおいても行きたくない。


私の体は強く引っ張られて動いた。


お母様。

お母様は走り出した。とても強く踏み込んで私を引き離そうとしている。


「逃がすな、追え」


兵隊の一人が追いかけて来る


お父様は後ろからもう一人の兵隊に足をけられ、跪く。

目の前の男がお父様の前髪をつかんで引っ張る。


お父様が殺されるわ!



お父様ぁ――――。



いやぁぁぁああっぁぁっぁあぁ



私の視界はそこでお父様を捉えられなくなった。

丁度曲がり角を曲がったから。


「しっかりしないさい。ティターナ! 」


怒られたような言葉に私はドッキとした。

そうだ、とにかく今は走ろう。



兵隊さんはまだしつこく追いかけてくる。



こんな時どうすればいいの。

そうだ、あの夜の時の様に兵隊さんを撒けば逃げ切れるわ。

実際に私は兵隊さんを撒いた。

それまであきらめなければ、きっと助かる。

だったら、



急に走りが止まった。


お母様?



前にはたった今メイドさんを切る兵隊2人が映った。


後ろからメイドを引っ張って連れてきて、2人の前へ抛り投げた。


「もう一人いたぜ

女だ。」



「お前、生きたいか? 」


メイドさんは涙ぐんで首を縦にした。


「お願い。殺さないでください。 」


「みろ。殺さないでくださいだってよ。 

可愛いなぁ。 」



そういってメイドさんのお腹を鉄の履物を履いた足で蹴りつける



「ぐほっ、げっほっ、」


メイドさんは苦しそうに吐くような咳を何度も繰り返している。


「いた、い……、も、う止め、……て、下さい…」


「可哀想に。ほら、行けよ」


「はぁ、はぁ、」


メイドさんの背中に切り傷がある。きっと逃げる途中に切られたのね。

あまりの衝撃だったのか体を起こそうとしない


「おいおい、大丈夫か? ほれ、起こしてやるよ」


メイドさんは男性に思いっきり引っ張られた。

とても痛そうに立たされると、思いっきりその男がメイドさんに抱き着いて

彼女を締めた。


「ああっ、あぎぃゃぁぁぁぁ―」


悲痛を上げてメイドさんの背中から血が流れだす。


「悪ぃ、悪ぃ、あんまりかわいいからつい愛おしくなっちまって」


「おいおい。こいつ可愛い物を見ると何でも抱き着こうとしやがるんだよ、ほんと悪い奴だぜ

嬢ちゃん大丈夫か」


「また抱きしめたくなった」


「止めとけ」

楽しそうに笑う兵士


20代ぐらいだろう、若いメイドさんは腕をほどかれるとすぐさま床にずり落ちた。

こんなに細く小さなパーツでよく耐えれたものだわ。


でも彼女は必死に生きようとしていた。そのか細い体を這って動かしていく。

お姉さの顔は歪みきっていた。


「ちょっとどこ行くの? 姉ちゃん。 もっと俺たちと遊ぼうよ」


お姉さんのか細い足をつかんで、前に進もうとするお姉さんを引き寄せる。


「おい、こいつ血吐いてやがるぜ」


「嘘だろう。もうだめじゃん」


引きずられた後を赤い血が辿る。


メイドさんは這って逃げようとする


「じゃあもう楽しめねぇな」


「おい待てよ。」


急に兵士の声色が変ると、お姉さんの脹脛に長剣を突き刺した


「いやあぁぁぁぁぁ――――――――」



「もううるさいから殺せよ」


そう言って背中から一直線に剣がささる。

何度も何度も。


声がだんだんと小さくなって、しまいにはお姉さんは声すらださくなった。

ぐったりと横たわっている。叫んだ口は空きっぱなし。


私は両手で自分の口を押えた。


この人たちに捕まるとこうなってしまうの?



「あぁん、なんだ、まだいるじゃねぇか」


彼らが私たちに気付いた!?



後ろからも兵隊が追いつく。

挟まれた。

お父様も来ている様子がない。

お父様……


「またいるな。今度はお前らかな。

ちゃんと逃げ切れるかな。 」



こちらに向かってくる

どうしようお父様。



お母様のは私の前に立った。後ろから追いかけてきた兵隊は私の手をつかんだ。



「いやぁぁぁあぁ」

私は手を振り払おうと渾身の力を込めたがびくともしなかった。


お母様を殺さないで。


私はそう思いながらお母様の方へ反対の手を伸ばす。

決して届かない手。


お母様の目はとてもまっすぐした目で話す


「私はどうなっても構いません。

ただし、この子だけは。この子だけは見逃してください」


そうお願いしていた。

お母様?お母様まで。

諦めないで、お願いだからこの状況を何とかして。


兵士はお母様を見回して笑みをこぼす。


後ろから猛スピードで矢が飛んできた。


一本は一人の兵隊さんの顔面に、もう2本はもう一人の兵隊さんの胸と腕に刺さって二人は倒れた。


そして私の手を掴んでいた手は解放される。

私の手には強く握りしめられている兵隊さんの腕だけがくっついていた。


「きゃあああああ」


私は急いでそれを払いのけた。


「無事ですか。

今お助けします!」



それは青い服に甲冑を付けた兵隊さん達


剣や槍、弓を持った人が目の前にいた兵士達を一掃した。


「お母様―! 」


助かった。私はこの危機を脱したうれしさと恐怖でお母様に抱き着いた。

お母様も私を強く抱きかかえてくれた。


「お怪我はありませんか?

この辺りの兵隊を一掃します。

あなた達は早く下へ。」


「こちらからどうぞ」


この方はこのお城に到着した時に、お父様に話しかけていた兵隊のおじさん。

知り合いの人に会えると少しは心が落ち着くものなのね。


そうだ!お父様!


「兵隊のおじさん。助けて! 

お父様が、お父様があっちで」


兵隊のおじさんはお父様と聞いて強張らせた顔を緩ませた。


「大丈夫でございます。


アルスレット卿ならば今我々に仲間がお救いいたしました。

もうじき我々の仲間とこちらに来ますよ。

だから安心して」


お父様を助けてくれた?




「兵長―――――! 」


「ほーら、言ってるそばから」



見上げると、5人ぐらいの兵士さんと共に負傷したお父様の姿が見えた。


あぁ、お父様。

私の目から涙が零れ落ちて止まらない。




「あっ、お父様! 後ろっ」


敵の兵隊さんがお父様を切りつけようとしている


危ない。


「アルスレット様―――――! 」


おじさんが声を荒げる。


また矢が今度はお父様を切ろうとする兵隊を射抜いた。

矢を放ったのはとても若いお兄さんだ。

とても清楚そうな顔立ちをしている。鼻は高く女の人にモテそうな、美男子といったとこかしら。



おじさん達が加勢に行く。



お父様を護衛していた兵隊さん達が迎え撃った。


「貴様ら観念しろ!」


生々しい肉の立たれる音と痛そうな声。

血が沢山飛び散って、敵の兵隊さん達が倒れていく。


「大丈夫ですか アルスレット様!」



「おらぁ―!」


「ぐあっ」


「な、止めろ

ぐはっ」


敵の兵隊さんはおじさんとお父様達の手ですべて横たわる結果となった。


その犠牲としてアングリアの三人の兵隊さんが殺された。


「すまない。助かった。」


「お父様!」


私たちはお父様に駆け寄る。


「お前たち」


お父様が生きていた。

アングリアの兵隊さんが私たちを助けてくれた。


私たちはまた再開することができた。

彼らのおかげで。

おじさん達にとても感謝をした。


「再会を喜んでいるところ申し訳ないのですが、ここはもうだめです。ついてきて下さい。


安全なところまで護衛いたします。


「ありがとう。頼む」


少しほっとはしたけれど、曇った顔まではぬぐい切れなかった。

味方の兵隊さんたちと合流できたことはとても頼もしい。

だけど、見渡す限り悲惨な光景が目に焼き付く。


建物は燃え、さっきのメイドさん。そして沢山のメイドさんや兵隊さんが血を流して死んでいる。

辛うじて息がある人もいるけれど、もう自分では体すら動かせない人ばかり。

彼らを助けてあげられることはできないの?何かしてあげられないの?

少しでも、生きている人がいるなら何とかしてあげたい。


だけど、私に何ができるの?

今私は彼らに何をしてあげられると言うの。

兵隊のおじさん達と彼らを引っ張て安全な場所まで移動させる?

そんなの何日かかるの?

私は彼らに何もしてあげれることがない。

手を差し伸べてあげる事さえ。

ただの一つも手助けする事すらできない。

私に出来るのは逃げる事だけ。




「さぁ、また追手が来る前に、早く! 」



「兵長、行ってください」


「うむ。お前たちはここで、まだ残っている者たちを頼む」


「わかりました。それではまた後で」


「行きましょう。アルスレット様。 こちらです。」

私たち家族はレビンおじさんの後を追った。



「いったい何事なの?」


「わかりません。どこの連合軍なのか。 ただ、ノーサンブリアが攻めてきたとしか。

しかし、それしては兵士の規模も大きすぎるのです。

これはどこかが結託しているとしか思えません。」



「やはり。遅かったか」


「そうですね。現状は絶望的です」



「ぐあっ」


「兵長!?」


レビンおじさんが矢を受ける。

甲冑が幸をなしておじさんの身を守ったみたい


また大量の兵隊が押し寄せてきたものだな。


「兵長達は行ってください」


ここは我々が食い止めます。


「すまない。絶対に死ぬなよ」


「こっちです」


とにかく私たちは下へ続く階段を目指した


「王様は無事なのですか? 」


「それが……


わからないのです」


どういう事?

アーネちゃんたちは?無事なの?



「どういうことです? 」


「我々も心配して王を探しに来たのですが。

どこにいらっしょるのか、姿が見えないのです。

まさか敵に……」


「それは無いと思います。

もしそうであるなあらば、このような被害はとっくに終わっているかと

だとすると、まだ、何処かに隠れられているも」



「ええ、そうであってほしいのですが」


扉を抜けた先に上と下に階段が続く塔のようなものに入る。


「ここから下に降りてください」


「レビン、君は?

一緒に行か無いのか?」


「わたしは王を探しに行かねばなりません

さぁ、早く。敵の手が回る前に

護衛に彼らを同行させます」


「兵長! 」


「頼む。彼らを守ってくれ」


「こっちには後二人付いてきてくれれば十分だ」


そんな待って。アーネちゃんたちはまだこの中であんな惨劇に脅えているというの?

だったら直さら早く見つけてあげないと。


「おじさん。アーネちゃんたちはまだこのお城の中なんでしょ?」



「あぁ、そうだろう。まだ、誰も姿を見ていないらしいが、仲間からも保護したという連絡もないんだ。 

きっとこの中で助けを待っているに違いない。

心配しないで、ティターナ嬢。

我々が必ず、命に変えても助け出して見せますから

さぁ、早くいってください」




そんなアーネちゃん……

逃げたい、すぐさまこの城から離れたい。

この階段を下っていけば安全な所に出られるのでしょう?


だったら早く降りたい。





でも、アーネちゃんたちをほおって置けないわ。


「お前たちはこの階段を降りろ。

私も王様を探しに行く

すまないが彼女らを頼む」


お父様は兵隊さんに私たち頼むとお願いする

そんなの嫌よ

どうして私たちだけ逃げなきゃいけないの?



「嫌よ、私もアーネちゃん達を探しに行くわ」


「馬鹿を言うな。

これは遊びでは無いんだぞ。

ふざけるのはいいからお前は行け。

後はお父さんたちが解決するから」


「ふざけてないわ、真剣よ。

アーネちゃん達は私にとっても大事な家族よ。

それにお父様も、死んでほしくないわ。

ここにいる誰もが。

行くなら私も行く、一緒に探しに行くわ。

大勢のほうが早く見つかるわ」



お父様は兵隊さん達を見渡した。


その瞬間私の体がふわっと浮いた。


「ちょっと、何するの止めて! 」


私は兵隊さんに無理矢理持ち上げられた。


「こんなことしたら、お父様でも私許さないんだから」


「すまないな、ティターナ。

リリシア、後は頼む」


お母様も覚悟決めたようにお父様に従う。



どうして、私も探しに行くわ。

何故、私たちだげ逃げなければならないの?

死ぬときはみんな一緒でいい。

私たちだけ生き残るなんてそんなの嫌よ。

考えて、考えるのよ、連れていかれる前に。



「ねぇ―――――!」


ダメだわ。私の声には耳すら貸さない。

だったら。



「きぃやぁぁぁぁぁあぁぁぁ―――――!」



皆は驚いたようにこちらを見た。


「どうしたの?ティターナ! 」


「本当に安全なの? 」



皆がきょとんとした



「どういうことだ?」



「この下は本当に安全だと言えるの? 


誰かこの下から上がって来たの?


火の手はしたから回っている、この下にはあの残酷な兵隊さん達が全くいない保証なんてどこにあるの? 」


「兵長! この下は安全なんだよな? 」



「安全かと言われると、確証はありません。 

ただ、ここにはまだ、火の手が上がっていないとしか。」



「もし仮に大勢の兵隊に出くわしてしまったら私たちと兵隊さんを合わせても10人もいないわ

これで、安全と言えるのかしら? 」


「この城にいるよりは安全です」


「そうかしら? 」


「ここで大勢で敵を迎え撃つほうが、少人数で行動するよりもはるかに安全だと思うわ」



「ぐむっ、」



兵長が言葉を詰まらせている。

もう一押し。



「それに、まだ3階まで沢山の兵隊は上がってきていないんでしょ?降りて出くわすより上がったほうが出会う確率は少ないわ」


「ダメだ。

じきににたくさんの兵隊が城へ流れ込んでくる。そうなっては逃げる手段すらないんだ!

言う事を聞きなさい!ティターナ! 」



「嫌よ!聞かないわ 

それって単純にお父様は死ぬ覚悟ってことじゃない。

そんなの行ってらしゃいなんて言えないわ。

それに、下に行ったって安全の保証なんてどこにもないんじゃない」


レビンのおじさんを見る


「それは、そうだが…」


「だったら、別々に死ぬより、お父様のそばで、みんな一緒でいさせて。

あなた達も王の為に死ぬと覚悟を決めているのでしょ?だったらわかって。

この事態がどれくらいの事か、私にも嫌でもわかる。

助かる確率なんてほとんどないんでしょ?


私も同じだわ。お願い、あなた達と同じ大事な王様を、私の親友でもあるアーネちゃんを一緒に守らせて」


「子どものお前に何ができるとい、」


「子どもとか関係ないわ!

意志の問題よ!

お父様は私にそう言ったわ」


「ティターナ……」


「あれは、嘘なの? 」


「いやっ、それは、」


「お願い。 」



「わかった。

レビン殿。

下に行っても、安全の保障は無いのだな? 」


「えぇ、保証はないです。どこにも。

あくまで可能性が高いだけとしか言えません」



「分かった。 だったら皆で王様を探しに行こう」


「しかし、アルスレット卿! 」



「ティターナの言う通りだ。

ここまで言い出したらティターナは言う事を聞かない。

それに、うちの家族はみんな同じ気持ちのようだしな」


お父様!



「わかりました。では皆さん私についてきてください

王様を探しましょう。

ただし、絶対離れないでください。

行くぞ、皆の者! 

王を救出しに行く! 」


私たちは誰一人下に降りることは無く、皆が上へと目指した。


待っててね。ターニャちゃん。私たちが助けに行くから。

無事でいて。



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