お姉さまはどこ?
あの後、アーネちゃんはお父様と自分の分、それから、残ったお食事をすべて平らげて帰っていった。
帰りは別のメイドさんが迎えに来ていたので、お二人とも忙しっかのね。てっきりマリアさんが迎えに来るのだろうと思ってたんだけど。
マリアさんは怖かったけど、実はいい人ではないのかなと、私は思う。
だから、お友達になりたいと思ったわ。
けど、怒らせないようにはしたいわね。なんだか怖いもの。それだけはわかるわ。
で、今私は部屋を抜け出してきてリリアお姉ちゃんを探してる。
やっぱりどうしても会いたくって、気持ちが抑えられないわ。
もし私にお姉さまがいたらこんな感じだったのだろうかしら。
お姉さまって頼れてなんだかとても好きな存在だわ。
んー、でも闇雲に隙をみて飛び出しては来たものの、どこを探したらいいのか。
確かにメイドさんの部屋に行けば会えるかもだけど、もう時刻は10時を回っているもの。
大人に見つかろうものなら、私は部屋に連れ戻されてしまうわ。
どうにかして大人には見つから無いようにしないと。
ひっぃ、物音!
誰か来るわ。隠れないと。
私は急いで柱に身を隠した。
ふう。やり過ごしたわ。
こんな時間でも大人は出歩けるのだもの。うらやましいわ。
そうだ、そういえばこっちのほうに、酒場みたいなお部屋があったような。
そこでお仕えしているとかかな?
ちょっと覗いてみる価値はありそうね。
見つからないようにそっと覗けば大丈夫。
でも、どのあたりだったかしら?
ってまた足音。
私は曲がり角の一角の壁を盾にしてやり過ごそうとした。
「たく、中将は扱いが酷くてやだねぇ。
俺たちの事を何だと思ってやがるんだ。全く。
」
「しかたねえよ。このご時世だ。どこもかしこも、争いごとで収まらねぇ。
俺たちが俺たちの居場所をしっかりまもらねぇと」
「ねしてもだぜ、あの言いよう、あのしゃべり方。俺たちを完全になめ切ってやがるぜ
あんにゃろう、ふざけんなってんだ。」
「確かにな、言い方には難があったが、俺たちもこうして、ここで酒とか食らわせてもらえるわけだ。
それには感謝しなきゃなんねぇ。」
「そりゃそうだけど、でもよ、」
「まぁまぁ、愚痴ならこれから、酒飲みながら聞いてやるからよう――」
兵隊さんかしら。
お酒を飲みに行くって言っていたわよね。
これはチャンスだわ。彼らの後ろについて行けば、目的地にたどり着けそう。
さぁ、尾行よ。待っててねリリアお姉ちゃん。
「こら、お嬢ちゃん。こんなところで何やってんだい」
ひぃっ。
見つかった!
「何だい迷子か?こんな夜中に出歩いちゃあぶないよ」
「あはは、すいません。そのお手洗いに行っていて、今帰るところでして」
「そうかい、気を付けて帰んなよ」
「はーい おじさんも気を付けてね」
おじさんは後ろ手に手を振って去っていった。
ふう。びっくりしたわ。危ない危ない。
連れ戻そうとする人だったらどうしようかと思ったわ。
まぁ、お母様が疲れて寝ていた隙に抜け出しのだけど、起きたとしてアーネちゃんの様に騒ぎにはならないから大丈夫。
なぜなら、ちゃんとお母様の前に書置きをしてきたからね。
『アーネちゃんと遊んできます。アーネちゃんのお母様のところに行ってます。
だから、心配しないでください ティターナ』
ってね。
これで完璧よ。
私はアーネちゃんみたいに、ただ闇雲に飛んできた訳ではないわ。
それにこういうことはアーネちゃんのおかげで学んだもの。
対策はしてあるから大丈夫だけど、お城の兵隊さんや、特にメイドの人に見つかるのだけはダメだわ。
何としても避けないと。
って、しまった。
今の人のおかげで、あの人たちを見失ってしまったわ。
どうしよう。
せっかくのチャンスだったのに。
仕方がないわ。この辺をうろうろするしかない。
まずはあそこを左に曲がってみるわ。
と曲がった先にいきなり兵隊がいるじゃない。
この道は通れないわ。
だったらこのまままっすぐ行こうにも、気づかれないようにいかないと。
何かいい策は無いかしら。
例えば石とかを投げてみるとか、それを見て拾ってる隙に通る。
いやダメだわ。そんなものを投げたりでもしたら、飛んできた方向を真っ先に伺うはず。
それでもって、お城のどこにそんな都合のいい物が転がっているというの。
だったら書物でも読んだ動物の鳴き声を出しってその隙に……
音なんてだしたら、音の鳴る先、つまり真っ先にこっちを向くわね。
問答無用で却下だわ。
しかたがない。こうなったら、私は物音を立てないように、普通にに通ってみた。
あら、意外に気づかれないものね。
すんなりと通ることが出来た。
良かったわ。
そのまま奥に進むと、何やら灯りが漏れた騒がしい声の漏れる場所が。
ここだわ。
そろりと中を覗いてみると、男の人たちがお酒を飲み、歌い、踊り、騒いでいる。
女の人もいるわね。
酒場はここに間違いないみたい。
でもここからじゃ良く見えないわ、もう少し中に入ってみないと、
きゃあ、
私は何かに押されるように無理矢理部屋に押し込まれた、
「おっとぉ、なんだぁ、なんかにあたっちまったかぁ~、
おんぃえ、嬢ちゃん、こんあところで寝てちゃあぶないぜぇ~
はっはははははっ 気ぃつけぇなぁよぉ、」
痛たたたあ、 どうやら酔っぱらわれている方に押されたみたい。
勢いで中に入ってしまったわ。ちらっと周りを見渡したけど、すごくうるさい場所。
耳がおかしくなりそうだわ。
こんなところに本当にリリアお姉さまがいるのかしら。
「おい! なんだ、こんなところにガキがいるぞ、
、誰の子どもだぁ」
大声で部屋中に呼びかけんばかりに大男が声を上げる
ヤバいわ。そんな大きな声出さないで、
私はすぐさま、その場から逃げ出した。
なんてお下品な人なの。声が大きすぎるにもほどがあるわ
見つかってしまうじゃない。
暫く部屋を出て様子をうかがってみたけれど、酔っぱらっていると思われたのか、特に何事もないみたいね。
もう全く、嫌だわこんなところ。
ただリリアお姉さまにお会いしたいだけなのにこんな事だったらアーネちゃんも誘うんだった。
後ろから男性の話声。また人
ヤバい隠れなきゃ。
とりあえずそこの扉をゆっくり開けてみた。
もう中に人がいた時はその時で何とかしよう。
そう思って開けてみたら見事に誰もいない。
チャンスだわ。私はゆっくりと扉を閉めて中に入った。
部屋は薄暗い。
幸い窓のカーテンが空いていたの部屋の中を見渡すことはできる。
「で、どうするんだ」
「しっー。ここじゃまずい」
声が近づいて来る。
早く通り過ぎて。
「だけど、もう明後日だぜ」
「黙れ、静かにしてろ、聞かれたらどうするんだ」
ドアノブが回る
嘘、こっちに来るの?
なんでぇ、ヤバい隠れなきゃ。
私は奥の部屋に入って扉の横の木棚に身を寄せる。
「あほかお前は。
周りを考えろ」
「悪い、でも、俺、落ち着かなくて」
「わかってる。手順間違えりゃ俺たちゃ一瞬で終わりだからな」
早くどっかに行って。私の心臓が早く鼓動を打ち続ける。
息を止め、心臓の音を殺そうと必死で、涙が込み上げてくる。
「とりあえず、ここで話そう、ここなら人がいなさそうだ
あいつら呼んで来い。」
「俺はちとトイレを済ませたら、ここに戻るからよ」
そういって男たちが出ていったみたい。
はあぁー。
何?あの人たち?本当にお城の人?
とりあえず、今のうちに出ないと。
後30秒くらい空けててから出れば、あの人たちの姿も無いはず
……。
よしたった。
扉を開けて外の様子を見る。よしいないわね。
そっと扉を閉めて酒場のほうに戻ろう。
はぁっ、、はぁっ、
2階、3階を軽く探し回ったけどいないわ、てか、広すぎるのよここ。
どうしよう、地下とかもあるみたいだけど、あんなところにお姉さまがいくとは思えないし。
しかも一人で行くのは怖いし。そこは止めとくとして
やっぱり今日は会えないのかな。そろそろ戻らないとさすがにヤバそうだし。
とりあえず酒場のほうから帰ってみようかしら。
ほんとしょぼんよ。
とぼとぼ歩いていると、もう一回かけてみたくなって見える範囲で酒場を覗いてみた。
あれ?お父様?まずい。
すぐさま頭を引っ込めたけど、奥の席にお父様とその他たくさんの兵隊さんやいろんな人がいた。
またお話かしら。大人は自由な時間がたくさんあっていいわね。
仕方がない。今日は帰ろう。
お父様に見つかっては嘘がばれてしまうわ。
「あぁ、そうか、そうだよな」
また男の人の声。遠くからだけど聞こえてくるからきっとこの近くに誰かいるのね。
もう別に見つかってもいいわ。
このまま歩いて行こう。
って女の人の声、これって……
聞き覚えがある。
さっと柱の後ろの隠れて覗いてみると、男とリリアお姉さまだわ!
男の人3人とリリアお姉さまが何やらお話しているみたい。
やっと会えたわ!
やったわ。お姉さま。お姉さまよ。
今すぐ行きたいけど、なんか入りずらい会話をしているわ。
行ったらまずそう。
あのマークにあの服装2人はここの兵隊さんみたいね。
もう一人はお客さん?かしら。マントで顔が見えないのだけれど
リリアお姉さまと何話しているのだろう。私も話したいのに。
でも楽しそうな話ではなさそうね。お姉さま笑ってないし。
それにしてもあの男の人の声どっかで聞き覚えがあるような。
あ、あの時あの部屋に入ってきた男の人の一人だ。
間違いない。ここの兵隊さんだったんだ。
な―んだ。
でもなんか、嫌な感じで思ってしまうのはなんでかしら?
私嫉妬しているの?いや、まさか、もしかすると、最初の出会いが悪かったから悪い印象が勝ってるだけかも。
せっかく隠れたのに、わざわざ私のいる部屋に入ってくるんだもの。
他にもへやがあったのに、何故わざわざ私の隠れた部屋を選んだのか。
それでちょっと嫌な人とと、思ってるだけかも。
最低ね私ったら。ダメダメ、そんなんじゃ素敵なレディにはなれないわ。
マントの人と目があった?!
恐怖のあまり私は壁に引っ付いたけど、あの人私を見てた?
どうしよう、こっち来ちゃうかな。
せっかくリリアお姉さまと会えそうなのに。
どうしようどうしよう、どうしよう。
でも、私の気のせいかも、結構距離離れてたし、顔見えないから、私がそう思い込んでるだけかも。
こっちに来る足音も聞こえないし。
もう一度顔をのぞかせてみる。
あれ?いない。
あーリリアお姉様が行っちゃう待って!
私はお姉さまを全速力で追いかける。
「お姉さまー、
お姉さまー、待ってください」
「た、ターニャちゃん?」
「お姉さまー」
アーネちゃんじゃないけど、あまりの嬉しさに私もお姉さまに飛びついてしまった。
いつもならこんなことしないのに、今日の私ったらどうしちゃったのかしら。
でも、どうしてもリリアお姉さまに抱き着きたくなったの。
「ちょっと、どうしたの、こんな時間に?
もしかして、何かあった?」
「ううん。違うの。
お姉さまに、リリアお姉さまにどうしてもお会いしたくてそれで」
「もうティターナちゃんったら」
リリアお姉さまは私の頭を優しく撫でてくれた。
「でもこんなところ見られたら大変だよ」
それはそうなんだけど
「おいで、とりあえず、送って行ってあげるから。
ね。 」
「うん」
私はお姉さまの手を握って一緒に歩く。
「ねえ、お姉さま、今日はどこにいらしたんですか? 」
「んーそうね、今日はすごく大忙しだったのよぉ。
まぁ、いつもここでは忙しいんだけど、
さっきまでアーネ様のお召し物を整理したり、寝かしつけていたのよ」
お姉さまは楽しそうに笑っていた。
てか、アーネちゃんのところにいたの?
なら、すぐにアーネちゃんのところに行けば会えたんじゃ?
私の苦労はなんだったのぉ。
「ねぇ、さっき少し見えたのだけれど、お姉さまとお話ししていた兵隊さんたちは、お姉さまと仲がいい人なの? 」
「ん?誰の事かしら?
さっきの兵隊さんご一行の事かな? ターニャちゃん近くにいたの? 」
すこし驚いてるお姉さま。好きだわ。
「別に知り合いってほどでもないんだけどぉ。
どうして? 」
「ううん。何でもないの。ただ、なんかあの兵隊さん達、向こうの部屋でなんか話すとか言ってたから。」
「えぇー? どこのお部屋?居酒屋さんかな」
いつものように笑っているお姉さま。
「ううん。なんか使われてないお部屋でしたわ。」
「もう。どこのお部屋よ。
このお城にはお部屋なんてたくさんあるわよ」
お姉さまはいつも優しい笑顔だから一緒にいるのがすごく心地が良い。
もっと一緒にいたいわ。
あぁ、この時間の一時がずっと続けばいいのに。
「ねぇ、お姉さま、少しだけ星を見に行かない?」
またいつもみたいに屋上で星を見上げたい。
「ダメよ
お母様に嘘ついてきたんでしょう?
私もお部屋に戻っていないと、またメイド長に怒られちゃうんだから」
お姉さまが頬を膨らませていた。
メイド長に怒られるのは大変みたい。
「それもこれも、誰のせいで一番怒られてるとおもっているのぉー」
「お姉さま止めて、くすぐったいわ」
やっぱり楽しい。
「ねぇ、お姉さま、だったら、少しだけお姉さまのお部屋に行かせて」
「え、それはいいけど」
「それだったらお姉さまはお部屋にいるし怒られないはずよ」
「もぉ、ターニャちゃんたら、でもあなたがお部屋にいるところを知られたら、私また怒られるんだからね?
わかってるのー?」
「うん。もし誰か来たらちゃんと隠れるから。
ね。お願い、少しだけ」
すがる様な目でお姉さまにお願いしたら、あっさり部屋に入れてくれた。
ふふっ。お姉さまの扱いは慣れたものよ。
お姉さまの部屋はちゃんと整理されていて物があまりないからとてもきれい。
それでいて、やっぱり女の子っぽい物で飾られている。
「そういえば明後日はターニャちゃんの誕生日よね?」
「そうみたいなの。私全然忘れていて」
「私もお邪魔させてもらってもいいのかしら?」
「お姉さま来ていただけるなら私はとてもうれしいわ。
ぜひ来てほしい」
「ありがとうございます。 ティターナ様。わたくしのようなものまで呼んでいただき、光栄の極みでございます。」
「んー、もぅ、どうしてそんな話し方するのよ」
「だってこれが普通でしょ」
「普通じゃないよ、そんな話かたされたら嫌ですわ」
お姉さまはまた私をからかっている。ふふと笑って語りあうお姉さま。
「ティターナ様なんて余所余所しいのはいやだわ」
「でもターニャちゃん、皆さん前ではこうでいないと、私が変な人に見られて、お仕置きまでされちゃうんだから!」
「どうしてなの?こんなに仲が良くて、私たちはもうお友達以上の関係なのに」
「それが、メイドという私と、ターニャちゃんという地位の格の差なのよ」
お姉さまは笑顔で訳の分からない事を言うのね。
「んーなんか納得いかないわ それが礼儀みたいなものなのね? 」
「まぁそう言う事ね
えらいなーターニャちゃんは。 よしよししてあげる」
「もぉお姉さまったらー」
髪がくちゃくちゃになるまでお姉さまとじゃれあって沢山笑い合ってお話居した。
「ターニャちゃん、もうこんな時間だから、そろそろ戻らないと」
「えぇ?、じゃあ今夜はここで私も寝るわ」
「ターニャちゃん」
お姉さまが困っている。
困っているお姉さまを見るのも好き。なんだかとてもいじめたくなる人なのよね、リリアお姉さまって
他の人もよくからかってるとこ見るし。人気者だから仕方ないわよね。
「わかりましたわ。戻ります。
ねぇ、お姉さま? 」
「ん? 」
「せめて誕生日の日くらいは、今見たいにじゃれ合っていたいですわ
その時ぐらいかかしこまらないで欲しいのだけれど」
「あっははっー、
別にかしこまってるわけじゃないけど。
そうね、それは難しいかもしれないわね。」
お姉さまは人差し指を頬に充てて想像しているみたい。
私もターニャちゃんたちとこうして話しては居たいけれど、私の立場では皆がいるところでは……」
そうですわよね、、、、
仕方がないですわ。
「だけどこうしてアーネちゃんや、ターニャちゃんと二人でいる時とかはうんとたくさん話しましょ。
誕生日会も、隠れてこっそり話せる場所がきっとあるわよ」
「うん!そうね、絶対抜け出しましょうお姉さま。
約束ですよ
絶対連れ出して見せるわ」
「えぇ、楽しみにしてるね。
そっか~、ターニャちゃんが私を連れ出してくれるのか~
楽しみだわ。期待しているね王子様」
「任せて、お姫様」
「それじゃおやすみなさい」
「まって、私送っていくから」
「ダメ!お姉さまはここに居て」
「ダメよ、ターニャちゃん今日は遅いから」
「何の為にお姉さまのお部屋に来たのかわからないわ
流石にもう出歩く人も少ないと思うしここまでは一人で来たのだから平気よ
お願いだからここにいて
絶対、こないで。約束よ
じゃないとここで私泊るから」
私は目を細めてお姉さまに言い聞かす
「それじゃね。お姉さま」
お姉さまに力強く抱き着いて私はリリアお姉さまの部屋から出た。
さぁ帰るわよ、って、人気がなさすぎると、とても不気味ね。
だんだん怖くなってきたわ。
あれっ?しばらく歩いてるけど、こんな道通ったかしら……、
完全に道に迷ってる気がしているのだけれど。
ところで私どこにいるのかしら?
お姉さまの部屋ってどこだったけ?
そう思ったら余計怖くなってきた。
取り合えず地下に降りるであろう階段みたいなのがあったらから、
落ち着いて考えよう、ここをこう行って、こっちに曲がって、えっと、
そうだわ、ここを抜けると上に上がる階段がそこに、
無いわね……
どこよここ??
あれ?、この壁の模様覚えてるわ。私が隠れた部屋の近くかも。
ってことはこの扉が私の入った部屋で、
声が聞こえる。誰かいるのね。さっきの兵隊さん達かしら?
で、奥から聞こえるこの騒がしさは。
丁度曲がり角の左側を見る。あの漏れた光。間違いない。酒場ね。
よっかったー。これで帰れるわ。
と同時に扉が開いた。
「おまえ、 ここで何しやがる、」
えっ?
「い、いえなにも、私道に迷ってしまって。」
「へぇ~、そりゃ大変だな。こんな夜に」
「えぇ、でも大丈夫ですわ。やっとわかる道に出てきたのでご心配頂いてありがとうございます」
「お前、何か聞いてたか?」
「いえ?何も聞いていませんわ
たった今通っただけですもの
そ、それでは失礼あそばせ」
なんか怖いから私は足早に去った。
「待てこら」
ひいぃぃー、何で追いかけてくるのぉぉぉぉ!
いやぁー。
とにかく私は泣きながら廊下をかけた。
ありとあらゆる角を曲がって何とか撒けたみたいだけど。
また迷子だわ。何階かもわからない。
ううぅぅっ。
とほほほっ。
「くそっどこに行きやがった」
うっそ、近にいる。
とりあえずあそこの大きな扉に入ろう。
たぶんこの部屋には入ってこないはず。
てか、誰でもいいから居て。
私は大きな扉を閉めた。
立派なお部屋だわ。大きな扉にあったお部屋ね。
「どなた?」
誰かいた。それもそれでなんて言おう。
「あなた、ティターナちゃん? 」