第40話 逃走計画 結果 表
駆けつけた先は驚きの光景に包まれていた。 私が彼に呼ばれた部屋。 そして、その扉を思いっきり開ける。
「すみません。ご主人様! 失礼し……ま、……」
そこに広がっていたのは、レニの体が曲がったまま食卓に乗っており、首だけが、包丁で刺されていた。 貫通しているのだ。 テーブルに乗せられた体とつながっている首は、丁度垂直に、首めがけて刺されており、テーブルに貫通しているのだ。 そしてちょうど刺しているところを目撃した。
その包丁を持っていたのはシェアだった。
「シェ、シェア……」
「レ、レニちゃん……」
私たちは驚いて立ちすくむ。 そうだ、この部屋にはご主人様がいたはず、もし殺したのであれば、ご主人様が張り倒しているはず。 なんせ彼は大人だ。 子供の私たちが敵うはずがない。 自分の奴隷を奴隷が殺して、怒らない飼い主はいないはず。
だけどご主人様の姿は見えない。 それに気づいたのはそう思ってすぐだ。 彼もまた、首を横に切られ倒れていた。 大量の血が噴き出し、息ができないのか、苦しそうに、ぴくぴくと、空気をを必死に取り入れようとしている様だった。
これはいったいどういう事のなの?
「あ、あなた達…… ち、違うの、これは……」
シェアが私たちに気付いて話し出した時だった。
「シェアぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁ!」
ミレイが激動の突進をシェアにかますと、彼女は思いっきり吹き飛んでいって壁に激突していた。 だけどそれよりも私たちはレニのところへ駆け寄った。
急いで首に刺さった包丁を抜く。 その包丁が栓になっていたのか、血が噴き出して止まらない。 ミレイは必死でレニの名前を呼びながら、ゆすり起こそうとした。
だけど、何をしたって起きるはずはない。 だってもう、死んでいるんだもの。 それでも懸命に起こそうとするミレイを私は止めた。
「もうやめて 」
「だって、だってぇ、……れにがぁ、 レニがぁ。 一緒に逃げようって約束してたんだよ。みんなで、助かろうって」
「わかってる。……わかってるけど、レニはもう、息もしていないの……」
ミレイは大声をあげて泣いた。 私は、小さな涙がこぼれそうになったのをぐっとこらえた。 しばらくして、シェアが声をかけてきた。
「あ、あの、」
ミレイはすかさず、立ち上がると、シェアを思いっきり殴り飛ばした。
「この人殺し。 なんの恨みがあったか知らないけど、ここまでやるなんて、許せない。 どうせ、地下室のルミネもあんたの仕業なんでしょ」
シェアは目を大きく見開いていた。 彼女の口が震える。
「あの、聞いて、私は、私はただ、」
「お前の言葉なんて聞くものか! 今度は私たちか? ティターナもルミネも、絶対に殺させない」
熱くなるミレイを止めて私は聞いた。
「どうして、こんなことを……」
「こんな事になるなんて思っていなかった…… 私は、私なら、もっとうまくできるって……」
「何が私ならだ!! レニにあれだけ酷い事をして!!」
ミレイは馬乗りになってシェアをぼこぼこにした。
殴られながら必死にシェアは弁解をしようとしてる。
「ちが、聞いて、わたっ、私っ、」
だけどそんなのお構いなしだった。
「もういい、もういいよ。やめてミレイちゃん」
「だけど、こいつ。 私許せないよ。 殺してやりたい。 ルミネにしたことも許せない」
私はミレイを引きはがすと、説得した。 今すべきはこの事態にルミネたちを安全な所まで逃がす事。 早くしないとルミネちゃんも危ないのだから。
彼も再起不能な今なら、これはこれでチャンスでもあるんだから。
そうこうしている内にシェアちゃんが急に笑い出した。 まるで壊れたおもちゃのように、ただ笑っていた。楽しそうでもなく、悲しそうでもなく、わけのわからない笑いだった。 まるで何もかもがどうでもよくなった顔。 そんな風に見えた。
「あいつ、」
「ミレイちゃん。いいから放っておいて、 ルミネちゃんのところへ」
私たちはまだ口をパクパクさせている彼のポケットから鍵を探す。 だけど、ない。 反対側にも。
上着から鍵が見つかった。きっとこれだろう。 それにしたってこの人はまだ生きているのね。 レニはすぐだったと言うのに……
私たちは急いで地下室に向かう。 カギを開け、囚われた二人を開放すると、ルミネの元へ。 そして息絶えた彼女の姿を見る。
「ど、どういう事……、どうして……」
ルミネちゃんは、すでに、切り刻まれた後だった。 刃物でたくさん切られて横たわっている。
「あいつ、」
ミレイは怒っていた。すごく、すごく
「運ぼう、きっとまだ、可能性はある。 とにかく、私たちならルミネちゃんを運べるはず。 捕まっていた二人は、そこの水を飲んで、出る準備を」
ルミネが持ってきていた水を二人に与える。 わたしはルミネちゃんの頭を膝の上にのせて、水を飲ませてみたが、飲む気配はない。 それでも無理やり、口の中に水を注いだ。 かすかにだけど、鼻から弱い空気の排出を感じたからだ。
「ルミネちゃんをお願い」
そういって私はミレイに託した。
「おい、ちょっ、お前は、どうすんだよ」
「私はこれから戻って、火を放ってくるわ」
「燃やすのかよ」
「えぇ、 あのまま見つかったら、きっと私たちは指名手配されるわ。 それなら、火事ってことで、なるべくなら事件の痕跡は残らない方がいい気がする」
「レミも、……燃やすのか?」
私も顔が曇る。
「えぇ、そうね。 燃やすわ」
「そっか、わかった。 気を付けてな」
「ありがとう。 先に、食料のある所へ行きましょう。 二人に食事をさせないと」
ルミネを運んで、二人には家の食べ物を食べさせた。
「じゃあ、行ってくるわね。
火を放ったらもすぐここに向かうから。 火が上がったらゆっくりはできないから、食べ過ぎだけはしないでね」
「お前の分多めに詰めておくから」
「ありがとう。ミレイも食べ過ぎないでね」
そういって、私は少しだけ食料をつまむと、歩いて、あの惨劇の家へと戻る。 まずは、燃えるものを探さないと。 幸い、一番燃やしたい部屋には暖炉があったから、あれは使えそうね。
あとは、キッチンから、油と、燃えるものならなんでもいいわ。 大量の服なんて入れちゃ後で放火したと思われるから何枚かだけね。 油に浸しておきましょう。
とりあえず、薪をくべないと。 私はせっせと薪を運んだ。 これがまた、結構しんどかった。 何往復しただろうか、 家の油を惨劇の部屋中にまき散らした。 その間も、シェアちゃんは、……、どこを見ているのか、ただ上を向きながら笑っていた。
それがどうしてか近寄りがたかったが、お構いなしに私は作業を進めた。 ちょっとは手伝っては欲しかったけど、声をかけたところで、逆に襲ってきたらどうしよう。そう考えるだけで、少し怖かった。
勿論レミにも油はかけた。 それから、この人にも、まだ意識があるみたい。
私はしばらくこの光景を見て、一息入れた。 そしてマッチに火をつけると、 それを投げ落とした。 みるみる火の手が上がる。 気づかれて人が来るまでに急いでみんなと逃げないと。
シェアちゃんは全く動じることなく火の中で笑っていた。とても嬉しそうに、きれいなものを見るように。 やがて火はレニにも燃え移る。 彼は完全に火に包まれていた。 机に座っているレニは、まだ火が覆うことはなさそうだ。
その時だった。 そんな部屋を見て私の体が震えた。 あの時の、光景そのもので、私は具合が悪くなった。 足が震えて動けない。 腰が抜けたように、座りこんで震えた。
早く出ないといけないのに、。 あの時のあの場所が頭から離れない。 お父様、お母様……。 私……。
「何しているの!! 早くいくわよ!」
やってきた人の手に引っ張られて私は熱い部屋から出ることができた。 きっともう少しで私も火に包まれていたのだと思うと私のしたことにぞっとして、燃える館を見る。
「遅いから行ってみれば、あんた何やってんの!」
それでも恐怖に包まれていた私は彼女には上の空に見えたのだろう。 思いっきり頬を叩かれて、目が覚めた。
「ねぇ、ティターナ!! しっかりして」
心配そうに涙ぐむミレイ。
「ごめん。 もう大丈夫だから。 行こう!! 3人はルミネちゃんを抱えて先に行っていて。 私もすぐ行くから」
「今度は何なのよ!! 忘れ物なんて今更行ったら、あんた、」
「大丈夫。 もう、目は覚めてるから。 大丈夫。 絶対に追いつくから、先に行ってて。 早く!!」
そう。もう火の手はすごく上がっている。 黒い煙は夜であれど、誰かにはじき気づかれるだろう。
だから、早く助け出さないと。
シェアはまだ火の中にちょこんと座っていた。 誰も助けてはくれない、火の中で。 あの時の私のように。 絶望の中で、彼女は抗うこともせず、飲まれようとしていた。
「行くわよ!シェア!」
私は、シェアちゃんの腕をつかんで、さっき私が助けられたように彼女を引っ張りだした。 だけど、彼女の心はどこか壊れてしまっているようで。私を認識などしてはいなかった。
それでも笑う彼女をつかんで走った。 部屋のど真ん中で狂い笑うシャアの手を引いて、火の海から飛び出し、ミレイたちの元へ。
幸い、三人は荷物も運んでいるので、追いつくことができた。
「ちょっ、なんでそいつがいるのさ。 あんたまさか、こいつを連れてくるために!!? なんでよ!!」
「シェアちゃんにも何か訳があったのかもしれない。 それに、ほっとけないから」
「ほっとけないって。 そんな話じゃないよ!! レミもルミネだってこいつが……」
「だけど……、だめだよ。 シャアちゃん一人をあそこにおいてはいけない」
シェアはみんなと合流したとき。笑いを止めていた。 まるで驚いたように、そしてただ、合わせる顔がないように、静かにそこに立っていた。 いずらいのはわかるけど。 でも、そんな話じゃない。
「そいつこそ。燃やしてくればよかったんだよ。 一緒なんて、また誰かが殺されるのに」
「そんな事言わないで。 シェアちゃんはそんな事しないよ」
「何言ってるんだティターナ。 お前、レニが刺されてた所見ただろ。 ご主人様だって死んでた。 そいつこそ、あそこで一緒に死ぬべきだ」
私はどう言えばいいんだろ。 返す言葉が、納得させる言葉が出てこない。 でも、絶対に、シェアちゃんをあそこに置いてくるのは間違っている。それだけ絶対に変わらない。
「早くそいつを捨ててきて!!」
「くっ、ははあはははは、あははあはははははは」
シェアちゃんはまた笑い出した。 とても大きな声で笑い出した。 涙をこぼしながら大きな声を出して。
「とりあえず急がないと。 人が来ちゃう!」
私の一声でみんなは走って森へと姿を眩ませた。
翌朝、私たちは町に出て服を買いに行った。 奴隷服でいるのも考えものだからだ。 ルミネちゃんを見るのにひとり、キミーが残って。 お金は勿論、彼の物だ。 私たちが服を買って店を出た後すぐ、4人組の男たちに捕まった。 私たちは買った服と、お金を取られた。 それだけならまだ良かった。
だけど、私たちはぼこぼこに殴られた。 シェアちゃんはくるってると言って途中から相手にされなかったみたいだけど、私たちは、気が済むまで道のど真ん中で殴られた。
誰も助けてはくれない。 ただ面白そうに見て、また。見えてないふりをして。 人々は笑う少女とそのいたぶられる光景を、黙認していた。
ダプネは助けてもらったという恩を強く感じており、私たちを庇って、彼らの前に立ってしまった。 だから彼だけが最後まで暴行を受けた。
これ以上受けたら、彼は死んでしまう。 それでも、彼らは決してやめようとはせず。楽しそうに殴り続けた。
私たちは、傷だらけで動かないからだで、必死にやめるように訴えかけた。
「誰でもいい。・ 誰か助けてください。 お願いします。 彼が死んでしまう」
だけど、私たちに手を差し伸べてくれる人は誰もいなかった。 彼らはまるで、当然のように、彼らの日常を続けていた。 私たちが死のうがどうでもいいのだ。
騒ぎを駆けつけた兵たちがやってはきたが、現場を見るなり。
「ほどほどにしておけよ」
そういって。彼らは去っていった。
どれぐらい彼は殴られたのだろう。 朝だった空が、今ではオレンジ色になっていた。 私たちは痛い体を起こしたがダプネだけが起き上がらない。
彼は死んでいた。
私たちは、気を落として、ルミネたちのいる場所へと戻った。
「お帰りなさい! あれ? 服はどうしたの? それにその傷! ダプネは!?」
私たちは息絶えたダプネを下すと、事情を話した。 シェア相変わらず、壊れて笑っていた。
悲しむキミーは私たちの手当てをしてくれながら、ダプネの死を悲しんで泣いていた。
その夜は、彼を埋葬した。 手を合わせるたびに、なぜ助けてくれないのか? なぜ。彼が死んでも罪にならないのか? なぜ。人々とはあんなにも酷い者たちばかりなのだろうか。 私の知っている『人』ではない。 私が見たのは人の行いとは思えない。 この湧き上がる気持ちは何なんだろう……。 それは何といえばいいのだろう。 これを憎しみと言うのだろうか。 私は、助けてくれなかった、見て見ぬふりをする人たちが許せないでいた。
困ったのはお金がないという事だ。 ある日ミレイが食料と服を盗んできた。 私は罪悪感と、盗まれた人の気持ちを考えて、返してくるように言ったが、ミレイはそれを断固として拒否した。
私たちはしばらく何も食べれていない。 持ってきた食料、2日分も底をつき、みんな空腹だったのだ。 ミレイは言った。 こんな汚い世界でまじめにやってたら、いくら命があっても足りないと。
だけど私は両親から、自分がやられて嫌なことは絶対に人にしてはいけないと教わってきた。 そうでなくても、相手の気持ちを考えれば、やはり、そんな非道な行為はできない。 やってはいけない行為だ。
「じゃあ、これからどうするんだ? ルミネもやっと回復しかけているのに、このまま弱らせて、はいさようならっての?」
空腹時の我慢はみなをイラつかせる。 ミレイも相当なのだろう。 確かにミレイちゃんの言う通り、私にはなすすべはない。 私たちが生きるには、それしか今は思いつかない。 だけど、私の良心がそれをよしとさせない。 どうすればいいのお父様、お母様。
何もしなければ、みんなが死んじゃう。 守るために私は人から、盗んだものをもらうしかないの??
こうしてミレイに習って少しずつ私たちは盗んで暮らすようになった。 服も、お金も、そして、食料も。
幾日か経って、キミーがしくじったらしく、 私たちの居場所が特定されてしまった。 私はルミネを背負って走る。
「はやく!急いで。 ここに人が来る! 逃げないと」
私たちは急いで逃げた。 追ってくるのはたくさんの大人だ。 それだけ被害にあった人が怒っているという事。 罰が当たったと言えば当然の事だわ。 私たちは悪い事をしたのだから。 だけど誰も助けてくれなかった。 もし誰かが手を差し伸べてくれたのなら、結末は変わっていたいのかな……。
暗いじめじめとした雨の中。 私たちはまるで私たちの行いを反省させられているかのように、冷たい石の地面の上に座って、膝を抱えた。
「これからどうするの? 」
キミーは心配そうに問いかけてきた。
「また、街を探して、食料を調達するしかないよ 私たちの顔が割れてないところなら」
ミレイはみんなの事を必死に考えていたんだと思う。 こういう時はきっと経験者であるミレイの方が何かと思いつくのだろう。だけど、私はもういやだな。 誰かから奪ってこそこそと逃げるのは……
私たちはエリアを移動した。空き家になっている家を見つけてそこで暮らすことにした。 寝床があるのはありがたい事だ。 私たちはその時ばかりはぐっすりと寝た。
そのころには、私たちの服も、どこからか見つけてきたものになり、奴隷服ではなくなっていた。 町の人たちはそんな私たちを哀れな家族の子と言ってみるようになっていた。
◆
アングリア王国内に一人の青年がいた。 青年の名はトット。
彼は貧しい家の子であったが親友がいた。 だから生活もそれ相応楽しかった。 ある日、国が攻められたことによって、暮らしは一機に一変した。 彼の父と母、多額の借金に追われ、返済できず、彼を売ったのだった。 しかも、彼らの両親はそれを望んではいなかったが、兵隊は断固として、条件を変えなかった。
何一つ出来ることさえさせてもらえない、そんな世界を憎んだ。
彼は奴隷となりかけたのだが、いや、少しは奴隷でいた。 市場へ連れていかれ、見世物として売れない奴隷生活を送っていたのだ。 だが、すぐして、一人の男が彼を救うと言って買い取った。 彼の名はシェコブフ。
トットは根がいい青年であったために、とても感謝した。 この恩は必ず返すと言って。彼と生活を共にした。 父と母の元に帰ることはできなかった。
兵隊にばれるとまずいからだ。 その生活は、いつもの貧しい生活とそんなに変わらなかった。 変わるとしたら、シェコブフがイラついている時にほんと1、2回、手を挙げられたぐらいで、それ以外はなにも不自由していなかった。 だがある日、トットが二階にいた深夜。シェコブフの家に兵隊がやってきた。 あの時と赤い兵隊。 シェコブフは困った顔をしていた。 その話し相手は、とても低い声でまるでシェコブフを脅しているようだった。
見た目がスキンヘッドで刺青が入っている。
「それなら、やることはわかっているよな??」
「わかっています。 何とかして金を作りますから」
「どうやって、作るってんだぁぁ! あぁん!!」
「色んな物を売って、なんとかしますから」
トットは怖くて部屋から出れなかった。 勿論出たところで、余計シェコブフを困らせることになっても大変だ。
「まぁ、売るってんなら、いい商売をお前にやる。 この辺に沢山の、アングリア人がいるだろう。 お前は、そこから奴隷に使えそうな上玉を捕まえてこい。 そうしたら最低この額で買ってやる」
何を見せられているのか、トットにはわからなかったが、その瞬間、シェコブフの目が変わった。
「ほ、ほんとですかい。 こんなに……。 人をさらうだけで」
「当たり前だ。 俺は優しいから気前がいいだろう。 どうだやるか?」
「わかりました。 ……やります」
そしてトット達は人さらいをすることになった。
嫌がる人を、無理やり連れ出し、トットも罪悪感でいっぱいだったが、生きるためには仕方がないと、それを差し出す。
「そんぞそこらのガキじゃ、これくらいだ 」
しかし、そんなに金にはならなかった。 そんな日を続けるうちに、子供 を捕まえて売ることがあった。 どうやらお金持ちの子だったらしく、それに言い値がついた。 確かに肌もきれいで、人形のように可愛かった。 味を占めた彼らはそれを幾度とやった。 彼らの生活にはいつしか余裕の金が生まれ、生活が一変した。しかし、また事件を起こしたシェコブフによって、兵から徴収され、借金を背負わされることになった。
スキンヘッドの兵隊にも売らねばならない。
さらに借金の返済。 期限までに作れなければ、死刑だと言う。 今となっては人をさらう事は日常になっていた。 だが、借金返済をできるような上玉はもう売りつくしたのか、まったく見つからないまま。後1週間ぐらいという期限まで迫っていた。
そんな絶望のさなか、街を一人歩いていたトットはティターナ達を目にした。 隠れてつけると、何人か子供がいることが分かった彼は、仲間に連絡してしばらく、彼女らを見張る事にした。
◆
そんなある日、彼らがやってきた。 兵隊だ。 あの事件の事がばれたのかわからないが、私たちのいる家のドアを叩き壊してきた。
私が驚いたのは、そこにあいつらがいた事だ。 アングリアの城で、私の大切な……、 第三小隊と呼ばれていたやつら。 憎くてしょうがなかった。 なんでこいつらが、
「おうおう、ほんとにいたいた」
「てめぇら、ここで勝手になにしているんだ? てめぇらの家じゃないだろう」
私たちはただでさへ、人と会うのが怖い。 兵隊なんてもっと恐ろしかった。 隙を見て逃げようみんなが目で合図した時だった。
キミーの腕をつかみ上へ持ち上げる兵士。 キミーは痛そうにしていた。
「おい! ガキは見つかったのか? ウロチョロ汚いのがしてるって通報があってきてみれば」
「へぇっ! ボス いましたよ。 ここに3匹も」
その低音の声聞き覚えがある。 まさか……
奥から出てきたのは、あのスキンヘッドの男だった。 こいつがボス……
スキンヘッドの男は私の事を覚えていないようだった。
今は湧き出る憎しみを忘れて、私は億でルミネちゃんと一緒にいるミレイちゃんに合図を送って、先に逃げるように伝えた。
ミレイちゃんはルミネちゃんを連れて裏口から出た。 これはチャンスだ。 後は私たちがどうやって逃げるかだけ。
「てめぇら、街でめちゃくちゃ悪さしてくれてるみていじゃないか。 覚悟できてんだろうな? 親はどうした!? 親は!!」
その時、裏から大きな物音がした。
「ボス!! 裏からガキが逃げてる!!」
ミレイたちだ!! 見つかった。 !! 兵隊とスキンヘッドの男たちは外へ出たのを見て、 私はキミーの腕を持ち上げてる兵隊にタックルして、キミーを下した。
「キミーちゃん急いで!」
私たちは倒れてる隙に、今しかないと小屋を飛び出した。
兵隊は追って来た。 さすが大人と言うところか、みるみる距離が詰められる。 だけど、ここは入り組んだ町々。 私たちの逃げるスキルも向上している。 嫌だったことだけど、その行いが、こんなところでは役に立つなんて。 ここでは日々逃げ隠れしてきた私たちの方が地形も味方して、なんとか撒くことができた。
ミレイちゃんは大丈夫かしら……
「おっとぉ、そこまでだ!!」
キャーという甲高い悲鳴に、私は驚く暇もなく、ラリアットを食らって倒れこんでいた。




