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赤の書  作者: AIR
14/27

出荷

「ようしお前ら、一列に並べー」



一つの檻に入っていたグループが順番に並ばされる。




私は選別人と言う人を見た。

それは少し小太りの背の小さいおじさんだった。


鼻の下から両脇に伸ばされた髭。

そして丸眼鏡をかけていた。


どういう訳あ、鼻は尖がっている。




彼はまるで物色するように私たちを見ていた。


「やぁ、みなさん、こんにちわ

これから皆さんのデータを取らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」


そう言って入ってきたおじさんは、一番手前の牢をみて、全員を立たせて並ばせたのだ。



「ねぇ、ミゲル。

あれが選別人って人なの」



「あぁ、そうだよ……


最悪だ」




何が最悪なのかしら?


「あの人たちはどこへ連れていかれるの? 」


「じきにわかるよ

僕たちも連れていかれるから」




ん? 何があるのだろうか?


皆は良さそうな顔をしてはいないみたいなので、良くない場所なのはわかった。



「おぉ、逸材じゃないのか!

君みたいな、若くて美しい女性は素晴らしい。

彼女の準備を」



選別人が別の房から女性を見つけると、兵士に無理矢理引き出されていった。


女性の人はとても嫌がって房に戻ろうとしていたが、兵隊二人組が彼女を連れ出した。


「それから、それからそこの男性諸君はいい働きをしそうだね

これと、それから、これと、そんでこれとこれとこれ。


うん。これらは地下に連れて行きなさい、いい仕事をしてくれるだろう」



「ひぃぃ、嫌だ」


「頼む、止めてくれ」


「何でもします。 お願いします」


そんな声が飛び交っていたが、さっきの女性と同じように彼らは連れていかれて行った。



どうやら、彼に選ばれたら、嫌も有無も無いらしい。だから選別人なのかしら?


「それと、確かアビリアン伯爵の貴女が一人遊び相手を欲しがってたんだが、ん?」



選別人と呼ばれる人がこちらを覗いた。

彼は何故か私たちの房を覗いて暫く黙っていた。

にやりと口角を上げたまま。


ちょっとして選別人が話し出す。

「おぉ、おぉ、可愛いのがおるではないか。

丁度いい。 お前さんがぴったりだな 

ここを開けろ」



扉が開くなりマルクを連れ出した。


「止めて―」


アルヤが全身でおじさんを止めに行ったが、足蹴りを食らって、強く壁に激突した。


「えぇい、鬱陶し、家畜風情が、わしに触るな」


礼儀のいい人でも何でも無かった。



「ようし、連れていけ」



マルクは大泣きしながら、右足を持たれ、逆さづりの状態で兵士に連れていかれた。


「マルク―、マルク―」


アルヤが叫び続けていた。


「うるさいぞ、ガキィ」


看守が房の檻を殴り、その勢いに驚いてアルヤは声を引込めた。


何て酷い事が起こっているの。



「ねぇ、ミゲル!

マルクは? マルクはいったいどこへ連れていかれたの? 」



「くっ。」


ミゲルはただ、悔しそうな顔だけをしていた。



「ようし、次はお前らだ。さっさと並べ」


私たちは一列に並ばされた。


「やばい、やばいよ

逃げ出さないと、逃げ出さないと」


「ミゲル? 」


どういう事なの? 


とにかく私は、流れに乗るしかなかった。


並んで着いた先は何もない部屋


ここに私達は入れられてた。



いったん部屋に集められると順番に奥の部屋へと呼ばれていく。

扉は二つ。

奥の部屋に呼ばれる前にたくさんの人が聞き取りを受けていた。

名前や、生まれ年に出身血、持っている病気などだ。

私もされた。


そうこうしている内に、泣きながら、ミゲルが部屋から出てきた。


「次ティターナ・ルイア」


呼ばれた。

私は奥の部屋へと通された。

ミゲルとは違う方の扉だった。


中に入った先にはさっきの選別人と一緒に、別に男の兵隊さんが沢山いて、扉の前には強固な人が2人居た。



「そこの壁に立て」


そう言われて立った先の壁には、線が引いてあり、その壁に立つ事で、測りのような大きな物差しになっていた。

これで私たちの身長を見ているみたい。


ここには女の人ばかり集められていた。



「何やってる。服は脱げ

全部だ。」


他の人も同じように立たされ調べられている。



あまりにも屈辱的だった。

男の人の前で服を脱げだなんて、そんな事できない。


「い、嫌です」


平手打ちが飛んだ。


「早く脱げ。脱がないとお前の服が無くなるぞ」


それは破いてでも脱ぎ捨てさせるという意味だ。


「お前このまま貰い手が見つかるまで裸で過ごすつもりか? 」


選別人のおじさんが慌てて言う。

「こらこら君、ダメだよ。 手を上げたら。

もっと、大事に扱ってあげて」


「何だと、 こいつが言う事を聞かなかったんだぞ」


今度は私に近づいて来る選別人のおじさん



「んー、


お嬢ちゃん、悪いようにはしない。

だから、今後はちゃんと言う事を聞きなさい。


わかったね。

そうすれば、おじさんたちも何もしないから」



顎を持たれた。ものすごく顔が近い。


さっきの平手打ちの恐怖のあまり、私はただ頷いていた。



「お前らも、彼女を殴るな」


そういって検査と言うやつが始まった。

体重や、視力、聴力などいろんな事を見られた。

私の事はすべて知っておかなければならないとかなんとか。


どんな性格を知る為に、色々お話もさせられた。

お話と言えど、楽しい会話の弾む内容ではない。

そして、向こうからの一方的な質問攻めだ。



他にも後から次々に女の人が入って来て、抗う人がいた。

その人たちは、蹴って殴られ、最終的に必ず裸にされていた。

彼らに対抗できる人は誰一人いなかった。


私は体の隅々まで調べられた。

あれは何時間ぐらい調べられたのだろう。



こんな屈辱を受けたのは生まれて初めてだった。


泣いている人もいれば、怒りに耐える人もいる。

嫌々されながら、自分を押し殺す女の人。


それを気にせず楽しそうに、めんどうそうに調べつくす男の人。

横には何かを記録しているのだろう、タイピングする男がいる。


調べが終わり、最後は服を着て、私は房に返されたが、しばらく何も話せなくて虚ろになった。



長い時間帰ってこなかった人もいれば、そのまま何処かへ連れていかれる人もいた。


この日は何もできないまま次の日を迎えることになった。


房の中は、静寂で静まり返っていた。




翌朝


朝食が置かれた。

もう私たちが房の外に出られる機会はないみたいだ。

挙句の果てに、ごはんまで、以前より、粗末なものになっていた。


冷めたスープのみだった。


お腹がすいた。


私たちはそれでもあきらめず、ミゲルと脱出する隙を観察していた。

それがあったからか、ミゲルとも会話ができたが、マルクを失ったアルヤは元気が無く、黙んまりだった。


私は何か、声をかけたかった。

ただ、そんなに話せる話題は無い。

それでも、そのままにして置く事が出来なかった。



「ねぇ、アルヤ」


アルヤはうつむいたままだった。

私はそんなアルヤをぎゅっと力強く抱き寄せた。


「大丈夫、大丈夫だから」


アルヤは泣いていた。


とにかく私は励ましたくて、泣き止んでほしくて。

ただそれだけ

だって、辛いでしょ? 一人で泣いているなんて。

泣いている人をほっておけない



      何が大丈夫――――― 


       なんだろう?


いい加減な事ばかり言うのね、私。




ギギギギ

扉が開く。


看守が扉を開けて、色々な人が入ってきた。


「こいつらがそうか」


「えぇそうです。

まぁ、見て行ってくださいな」


選別人が先導して、手を拱きながらにやにやと話している。



「あれは何なの?」

アルヤを抱えながらミゲルに聞いた。



「あれは、 売買人だよ……」



売買人?つまり私たちを売るってことかしら。


「引き渡されたら、俺たちはどこかへ行ってしまう。


どこに行くのかも、わからない。全く知らないところで一生を終える事になるんだろう」



とにかく危険な人たちと言う事だけはわかった。



「よう。

いいね。決めたよ。こいつをもらってく

あと、こいつと、こいつもだ」


「へぃ、ありがとうございます」


「じゃあ、俺んとこは、こいつ、こいつだ」


「まいどあり

いやーあなたもなかなかお目が高い」


選別人はうれしそうにしている反面、選ばれた人の連れていかれ方はまるで人権などないような連れていかれ方だった。


「さぁ、お買い頂いた方々には、リストをお配りしております。

また、選びかねている、事業主様も、こちらのリストを見て、選ばれてみるのもいかがでしょか?」


選別人はさらに呼びかけた。


「おい、こいつが良い

この赤毛の奴だ」


一人の男の人が、私の目の前に立って指をさした。


「はいはい。どちらでー」


選別人は飛び跳ねる様に高揚しているのが窺える。


「いや、これは、ちょっと、おやめ頂いたほうが良いかと」


選別人が急に冷や汗でも出すように、顔を引きつった。



「こんなやつは珍しい。

それに、なんて綺麗な瞳なんだ。

これは、もはや、ガーネット。


パイロープガーネットの様だ」



え?私なの…………?



「いや、こいつは今回のとはちがうんですわ。

それに見て下さい。この汚らしい姿なりを。

仮に、売り物だったとしても、こんなに傷だらけでぼこぼこの体をした奴ですから。

価値にも値しませんぜ」


「あぁ、売るつもりもねぇ。

譲ってくれねぇか?

目だけでもいい

片方だけ俺に譲ってくれ」


なんですって?

私の目を欲しいと言っているの?


しかも私の体の事を、全くの他人に許可を得てもらおうだなんて、お願いする相手もおかしいわ。


それに、そんなことしたら目が見えなくなっちゃう。


そんなの嫌よ。


「ですから、何度も言っているように、これは売りもんではないんですよ」



「じゃあ、なんでここに入ってんだよ」


「訳あって、ここにぶち込んでいるんですよ」

これ以上勘繰りを入れると、あなたここのオーナーに殺されますよ? 」


選別人の人相が変わる。冷たく鋭い目が、その場の空気を一気に切った。


「わ、わかったよ。もういらねぇよ。」


「お解り頂けて良かった。

ささ、こちらへ、こんなくずではなく、もっとオススメできる素材がありますから」


選別人の表情がころりと変わる。


私を守ってくれたの?

とりあえず、目を取られなくてよかった。

言い方はすごく聞いていて腹立たしいものだったけど。



にしたって、売るのが仕事なら、どうして私を?


こうして、気づけば牢にいた半分以上の人がいなくなっていた。


いなくなった人たちは皆彼らに買われたのだそうだ。

そして、彼らの乗ってきた馬車に押し込められ、ある市場に向かう。

そこで、買われた人たちが競売みたいなものにかけられるのだそうだ。

自分の主が決まると、後は彼らの言いなりになるのだと、ミゲルが震えながら教えてくれた。


「もう、終わりだ。 奴らが来た。

俺たちも終わりなんだ」


「まだ終わってないわ。

これから、逃げ方を探せばいいじゃない」


「見ただろ。それに、俺たちのリストが作られた。

もう、どうしたって終わりなんだよ 」



ミゲルは嘆いて、諦めていた。


お母さんに会うんじゃなかったの?

そんなに簡単にその思いを捨てれるモノなの?


私には、どうしてそんなに簡単に諦められるのか、そこはわからなかった。


あんなに、私と同じ思いをした人だと思っていたが、私なら、そんなに簡単に諦められない。


だって、一生離れ離れになっちゃうんでしょ?

どうしたって逃げようとすると思うんだけど?


私たちは言い争うように話ていたが、それ以上お互いの気持ちを理解し合える事は無かった。



そして打って変わって静寂が続いた。

なんだか気まずい。

私、間違ったことは言ってないと思うんだけど。


ディアンカとレベッカの方を見たが、相変わらず彼女らは話に入って来ようと言う素振りすらない。


そんな静寂が何時間も続いて、ミゲルが謝って来た。


「ごめん。ティターナ。

お前に当たってしまって」


「ううん。私こそ言い過ぎたかも。

ごめんなさい」


「お前の言う通り、まだあきらめず、何か掴んで見るようにするよ」


「うん。一緒に探しましょ

離れ離れにならない為にも」



なんだか、ミゲルとまた、少し絆が深まったような、お互いの事を理解し合えるような存在になれたような気がした。


それが、私にはうれしかった。



それからミゲルは、自分の住んでいた町の事や、自分のお母さんの話を語ってくれた。

これには房の皆が耳を傾けた。

レベッカたちも、話には入ってくる気は無いが、静かに聞いていた。


「お前も、来いよ。もし、家がないならさ、うちに住めばいい。

一緒に住もう。きっと楽しいぞ」


私に住むところができた?

いいの?私が住んで?

確かにここを出たら、私には帰れる場所など、無い。

私のお家はあるけれど、きっと私は独りぼっち。

そもそも家まで帰る手段も、道もわからない。


「私なんかが住んでもいいの?」


「もちろんだよ、困った時はお互い様だろ。

それにおまえなら、うちの親も大歓迎だ」


嬉しかった。ただ、私にも一緒に入れる居場所があるかもしれない。

それだけでうれしかった。

「うん。ありがとう」

私はすごくうれしかったんだ



「でな、

あっ、やばい、看守だ」


扉が開く音。

その音と共に楽しい会話は終わった。



入ってきたのは看守ではなく、選別人だった。


看守もそばにいたが、どうやら今回私たちに用があるのは選別人の方みたいだ。

不敵な笑みを浮かべながら、彼は名前を呼んだ。

なんて顔をしているのかしら。まるで人の不幸を喜ぶような笑顔。



「ミゲル。

ミゲル・ロシュナウテ」


それは、私たちの房にいる、彼の事だ。



「ミゲル・ロシュナウテ、」


彼はこちらに近づいて来るでもなく、扉の前の階段の上から、語り掛けた。

まるで、じらすように、話す内容を、ゆっくりと楽しんで味わうように。


「喜べ。外に出れるぞ。

よかったなぁー」



えぇ?どういう事?

ミゲルは解放されるの?

それは嬉しいけど、そうなったらまた、私は一人か。わかってはいたけど、なんだかちょっと寂しいな。


ミゲルは驚きと、期待にあふれたような反応で、選別人の言葉の続きを待っているようだった。


もしかしたら、話に聞いていたご両親が迎えに来てくれたのかも。

良かったわね。ミゲル


「おうおう、そうか、そんなに嬉しいか

そんな顔をされると私までうれしくなるじゃないか


さっさと出ていく準備をしなさい」


ミゲルのあふれ出るほどの喜びが、漏れ出して表情にでている。


「喜べ。

お前の飼い主が決まったぞ」


ミゲルは一瞬にして凍り付いた。

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