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敵があまり出ない時は大抵ボスの手前

 開けた先の裏庭は静かで――よく整備された植木とフナのような魚の泳ぐ池がある以外――何も見当たらない。


「――姫、後ろに下がって下さい」


 そう言って前に出ようとするケイトよりも前に俺が割って入る。


「癖かもしれないが、無理だろ?」

 

 俺は杖を構え、前に出る。今回のフォーメーションは先ほどまでと真逆だ。俺、ケイト、レオーネ姫の順である。


「――分かった、しかし、扉は私が開けよう」

「ああ、頼んだよ」


 真正面に見える大きな白い扉にケイトは手を掛け、ゆっくりと押し開ける。

 その隙間から俺は顔を出して、中を確認する。

 覗いた先は左右に分かれる石畳の廊下になっていて、何も見当たらない。


「――何もないな。行こう」


 俺は扉の隙間から体を滑り込ませ中に入るとすぐに二人も入って来る。


「右が宝物殿、左が宿舎兼仕事場、中央が礼拝堂よ」


 俺が質問するより早く姫がそう答える。


「宝物殿――には当然聖結晶ありますよね?」


 武器になりそうなら回収したい。当然姫も賛同するかと思ったのだが――


「現状を見てからじゃないと盗賊行為で死罪よ? そもそもここは王族の管理下じゃない。勝手に持ち出せるわけじゃないの」

「え? 非常時でも駄目なんですか? そもそも――王のものじゃないって……」

「政教分離――って知ってる?」

 

 現代でもその単語は聞いたことはある。正しくは、政教分離原則、と言ったか。


「国家と宗教は原則として関わらないという――建前、ですか?」

「ふふ、はっきりと言ったら怒られるかもしれないけど、その通りね。建前ではこの国は王族が統治し、六教会がそこに併設され、人民の教育に関わり国教とされている。一応は――民とそのための王が国家を運営している体を成している。でも、教会は――私たちを陰から支配しようと常に手を回し続け、密接につながっている。だから、財産も独立しているし、強い力を誇示している。ある意味――この国を支配しているのはその『宗教家』なのよ。おいそれと私たちが手を出せる相手じゃないの」


 国家が堂々と特定の宗教を庇護していたらそれは権力を持つと同義だ。日本国憲法も国からの特権は認めない――と明記してあるし、国として肩入れし宗教教育を行ってはならない、とされている。この国も一応は宗教が蔓延しているが――国とは直接のかかわりはない、と建前では運営しているようだ。


「――詭弁ですね。つまりは――責任だけ押し付けられているわけですか」


 思ったままの言葉を言うと、ケイトが眉を顰める。


「そうね、ある意味はお飾り――国家運営のための共生関係、でも私がいつか――」


 先を期待したが、姫の言葉はそこで途切れる。


「――なんにせよ。借りるなら借りるで許可を貰わないと駄目ね」

「じゃあ、宿舎ですか」

「そうね――いや」


 彼女は考え込むように顎に拳を当ててから、こう言った。


「礼拝堂を見ましょう」


      ◆


「本日は宜しくお願いします」


 お父さんがそう言って、教会の入り口で偉そうな白服のおじさんに頭を下げる。そしていくらかのお金を渡したのを見て、私はその後を付いていく。


「何をするの?」


 私がお父さんにそう訊ねると――


「説明しただろう? 今日がリョカの6つの誕生日だからね。洗礼――リョカがきちんと六大神様の加護を得られるようにお願いするんだよ」


 ああ、そう言えばそんなことを父が言っていた気がする。私はただ単に、母に今日の誕生日にケーキを作ってもらえることが嬉しくて、そんなことは忘れていた。


「ふうん――それで加護を頂けるとどうなるの?」

「リョカが健やかに、幸せに包まれて生きていけるようになる――そんなところかな」

「そっか、楽しみだね!」


 楽しさの半分以上はケーキに占められていたけれど、私はそのことは言わなかった。六大神様には悪いけど、お父さんとお母さん――三人のいつもの暮らしの方がずっと――幸せだと思ったから。

 私はそう思いながら――礼拝堂の大きな扉を通り抜けた。


次の更新は木曜日あたりで

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