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ライフルらしきものを手に入れると急にパワーアップする


「――何だこれ?」


 それは――有体に言えば杖の様だったが、先端部分にスロットがあり、何かが嵌っていた。


「――聖……結晶よ」


 レオーネ姫が息も絶え絶えにだが、そう俺に伝える。


「これ――嵌っているやつが?」


 彼女は頷くと、さらに目線で俺に棚を示す。そこには――5つの鈍く光る同じ大きさの石が見つかる。


「――なるほど、これが」


 発動体と、そのバッテリーみたいなものなのだ。この存在があるかもしれないと知っていたからケイトは俺を先に行かせたのだ。そうか、これがあれば――。


「戦える――」


 俺の言葉に姫が頷き、顎で外へ――と示す。俺はそれをすべて抱えて外へ出る。間に合う――だろうか?


 俺が小屋から出ると、もうその広場の階段までゾンビの大軍が押し寄せてくるのが見えた。その先頭にいるのは――


「ケイト――!」


 俺は杖をクルっと回転させ、握りの方を銃のグリップを掴むように構え――先端を奴らに向けた。

 数が多い――。これじゃ一発一発撃っていたら間に合わない。

 ――もっと、大量に。

ケイトに襲い来る無数のゾンビに対して俺は――『単発銃』ではないものをイメージする。イメージしたのは『散弾銃』だ。

 やれるかやれないかはわからない。だけど――やるしかなかった。

杖の先端に魔力が集まっていくのが分かる。そして俺は脳内にあるイメージをそのまま形に変えて――ゾンビにぶっ放した。

 

 バシュ――


 イメージはそのまま無数の光の粒になり、ケイトをすり抜け彼らに炸裂する。もう一度――もう二度、ケイトに襲い来る奴らに容赦なくたたき込む。

 本物の散弾銃だったら彼にもあたってしまうところだが、これは回復魔法のそれである。その点は非常に便利だ。

そしてそのまま5回たたき込んだら――もう杖の先から反応が無くなった。


「――もう尽きたの?」


 もう一発撃とうとしてスカってしまい。俺は慌てて聖結晶を入れ替える。そのまま散弾を撃ち込み続けながら、彼に叫ぶ。


「ケイト――こっちへ!」


 俺の言葉に、疲労困憊したようにゆっくりと彼は反応し、こちらへ歩いてきた。


「――姫様は?」

「無事だよ、ってか自分の心配しろ! まず生き残ることが大事だって言ってたろーが!」


 俺の檄に彼はふっと鼻で嗤い「そうだな」と自嘲気味に呟く。


 ゾンビは一気に片付けられた先頭の群れが積み重なりつかえているようでまだこちらに来られない。今のうちに――逃げるべきだった。


「今度は俺が殿しんがりだ。姫様を担いでくれ」

「――ああ、言われずともな」


 小屋の中で横たわる姫を彼は背中に担ぐと再び階段を昇り始める。俺は後ろを振り返りつつ、ゾンビの追手に備えその後を付いていく。

 ――それにしても、これは便利だ。

 俺は手に持った発動体の杖と聖結晶を眺める。これは銃と弾のようなものだ。魔力消費を抑えてイメージ通りの攻撃を相手に加える。そして自身の魔力が無くても聖結晶さえあれば無限に撃ち込めるのだ。

「散弾だと5回――単発だと……20発はいけるか?」


 残りの聖結晶は4つ。1つは使いはしで容量は半分程度だろう。単発70発。散弾15~17回程度までは撃てる。


「――なあ」

「分かっている。ありそうな場所があれば補給しよう。あそこは――僧兵が詰めている場所だったからな。あるとは思っていた」


 先を行くケイトが察したように答える。

 聖結晶さえあれば俺は某ゾンビ乱射ゲームの主人公のように無双できるはずだ。その事実はこの絶望的な状況で一筋の光明である。


「――無駄口を叩いてる場合じゃないな」


 階下を確認すると再びゾンビの群れが追って来るのが見える。いくら無双できるとはいっても――弾があれば、の話だ。無限に湧く敵にすべて対応できるわけがない。物量こそが生ける屍共の強さだということは痛いほど分かっていた。


「もう少しだけ――時間が稼げぬか!?」


 前を行くケイトが俺に指示を飛ばす。姫を担いでいる彼の額からは大粒の汗が噴き出し、見るからに辛そうだ。そりゃそうだ。あれだけ剣を振り回して一人で耐えていたのだ。今にも倒れたいほど体は酷使されているに違いない。

 もっと――効率よく、か。

 ダメージを目的じゃなく――足止めを主体にした――。俺は少し考えて再び杖を構えた。


「――イメージ、そう、炸裂――拡大」


 倒すほどのダメージを与えなくてもいい、兎に角――範囲が広がればいい。視覚――聴覚――一体ゾンビが何を感知して俺達を襲っているのかわからないが、ゾンビ映画で多くみられるのは大抵――音に敏感な姿だった。

 人間並みの視界と敏感な聴覚――恐らくそれがゾンビの知覚である。というか、そうであってくれ。


「ケイト、絶対下を向くなよ!」


 俺は魔力とイメージを込めた弾を発射する。俺はそれを撃ってからすぐに瞳を閉じた。


 バシュウウウウウウウウウウウウウウウウ!


「ガッ――」


 瞳を閉じていても眩く感じるほどの光があたりを包む。

 ゆっくりと瞳を開けると――無事効果は発揮されていた。ゾンビはその場で立ち尽くし――盲人のように彷徨い、階段を転げ落ちる者で溢れかえる。


「よっしゃ」


 閃光手りゅうスタングレネードの応用である。弾自体の回復作用は極小になる代わりに拡散作用を強くイメージして、出来るだけ広範囲に回復光を飛ばす。瞳や耳にそれが入った彼らは一瞬だけかもしれないが回復の刺激も相まって知覚を消失する。

 階下は混乱の渦が巻き、ゾンビの大半の足が止まっている。


「――残弾は無くなってるか」


 半分の容量が残っていた聖結晶の魔力が尽きている。俺はそれを入れ替え、先を急ぐ。

 俺とケイトは休むことなく階段を駆け上り――ついに――階段を昇り切った。


「ぜ――は――」


 二人とも精魂尽き果て、昇り切ったところで石畳の上に倒れ込む。


「まだ――奴らは、来てないか?」

「……ああ、まだ下の方でごちゃごちゃしてるみたいだ」


 ケイトは下を見る余裕も無く、四つん這いのまま俺に訊ねる。


「――お疲れ。ケイトのおかげだ」

「……ふん、助かったのはこちらもだ。礼を言わせてもらう」


 お互い汗だくの顔を見合わせて、同時に笑った。


「――良い、チームになりそうね」

「姫!? ご無事で――」


 姫は弱弱しくも――自ら身体を起こそうとする。


「まだお休み下さい! 私がちゃんとお連れしますので――」

「……その台詞はあなた自身がちゃんと立ち上がってから言いなさい?」


 立ち上がった姫と違い、ケイトは未だ片膝をついたまま起き上がれない。そりゃあそうだ。軽装とはいえ金属鎧も身に着け、姫を担ぎよくこれだけの距離を昇り切ったものだ。


「――大儀だったわ、二人とも。心から礼を言います」


 姫は深々と俺達に頭を下げる。ケイトはそれを見て「勿体なきお言葉――」と涙を流す。


「特にマクリ――」


 ――ケイトを救ってくれて、ありがとう。顔を寄せ、そう彼女は俺に耳打ちする。


「さて」


 そう言ってから姫は目の前にある鉄の扉に向かい合う。


「この開けた先は――教会の裏庭よ」

「裏庭――ということはすぐに地上ですか?」

「そうね。でもすぐ外と言うわけじゃないわ。外壁は石壁のはず。出たらまず……教会裏門から中に入ることになるわ」

「……あの」

「……言いたいことはわかるわ、マクリ。ゾンビがいたら、でしょう?」


 その通りである。聖職者の群れ――アンデッドの専門家が多くいるはずの場所だ。持ちこたえてくれている可能性は高い。それでもゾンビが溢れかえっている可能性は否定できない。


「――大丈夫。仮にそうなっていたとしても人数はそこまで多くないはず。何より教会付きの騎士団は演習中で出てたわ。つまり、メインで残っているのは事務方と数人の上級職のお偉方――多くても50名ぐらいよ。魔力は足りているかしら?」


 持っている残弾は単発で60発ほどは撃てる。全部ヘッドショット可能なら――まあ足りなくもない。


「まあ一応……でも理想の三倍は持っているべきだと思いますけどね」

「聖結晶の補給も出来るはずだから、それに期待しましょう。ケイトの剣も、見つけないとね」


 その言葉にケイトがようやく身を起こす。行けます――というようにその瞳は輝きを取り戻していた。


「宜しい――さて、まだ何かある?」


 彼女は俺の瞳を見て訊ねる。


「あの――病気は……」

「ああ――」


 俺は一応、このパーティーの心配の種について質問する。


「あれはね、呪いのようなもの――一度出たら暫くは出ないはずよ。だから気にしないで」


 もしかしたら喘息かもしれないと俺の現代知識が言っているが、仮にそうだとしても今打てる手はない。彼女がそう言う限り、それを信じるしかない。


「――じゃあいいわね? 開けるわよ」


 彼女が扉に手を掛けると魔法陣が浮かび上がり――ゆっくりとそれは開き始めた。



※※※



 杖があれば消費は約半分。

 回復小の消費は2なので1で弾を生成している。


 聖結晶(小)

 容量:MP70

 


 単発弾 MP1


 閃光弾 MP35


 散弾  MP15~17(調整難しいのでランダム気味)


ヒャッハー!

やっぱりぶっ放している時が一番楽しいですね。

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