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詰んでるときには大体抜け道がある


「と、言うわけで取っつかまったのです」

 

俺の身の上を含めたこれまでの経緯を聞いた二人の反応は、というと。


「馬鹿ね」

 

姫様の言葉にケイトが頷いただけで片付けられてしまった。


「いやいや、しょうがなくないですか?」

「馬鹿を馬鹿と言って何が問題なのかしら? それとももっと別の罵り言葉のほうが良かったの?」


悪びれる様子もなく、彼女はそう答える。俺は閉口して、彼女らから顔を反らす。


「――でも、ということは貴方、本当に異端だったのね」

「え?」

「異端信者――あなた六大神の宗派じゃないわね」

「六大神?」


俺が再び質問を返すと、そんなことも知らないのかと二人はあきれ顔になる。


「六大神、この世を作ったとされる六柱の神よ。その宗派によって、使える回復魔法も違えば、特色も違う」

「へぇー」


初耳である。よくよく考えたら宗教本らしいものは、死んだ爺さん何一つ持っていなかった。よっぽどの破戒坊主だったのかと思ったが、もしかしたらそういう類をわざと置いておかなかったのかもしれない。


「貴方の特色――ええとなに、その回復魔法を遠くに矢のように飛ばす?――そういうのは、どの宗派にもないわ。多分、貴方の仕えている神のオリジナル――だと思うのだけど」


平たく言えば、俺だけのチート能力、ということになるのだろうか? いや、別に普段使いではまったく役に立たないのだが。


「異端信者は公に存在を認められていない。見つかれば即、改宗されるか――」


彼女はそう言ってから、首を切るような仕草をする。あらやだ、野蛮。


「あの……やっぱその、約束は反故にします?」


恐る恐る訊ねてみるが、彼女は鋭いまなざしを再び俺に向けた。その瞳からは、ぎらつく様なプライドが迸っていた。


「すいません――疑いません、はい」

「――よろしい」


いくら生意気に見えても、彼女は約束を破るような真似はしない。それだけは、信じられる気がした。


「兎も角、その力は使えるわね。最大限、利用させてもらうわ」


そう高らかに宣言した彼女はニヤリと口元を歪めた。俺は諦めて彼女にその続きを訊ねることにした。


「では、具体的にはどのように?」

「正面玄関から出たいところだけど……それはさっき試して無理だったのよね」


彼女の言葉にケイトが頷く。


「正面玄関付近は衛兵が多かったからな。その分ゾンビになったものも多い。その上――都合の悪いことに今日は教会所属の騎士団の演習があって訓練が正門近くで行われていた。流石に……100名近くいるゾンビの軍団を相手には出来なかった」

「他に出口は?」

 

その問いに二人は首を横に振った。姫――レオーネが補足するように口を開く。


「王族用の秘密の脱出口は確かにあるわ。でもね――使えないの」

「使えない?」

「そうよ。その緊急脱出口は王族――父の身に着けている腕輪が鍵になっているの。王を見つけないと――使えないのよ。探したけれど……見つからなかったわ」


 嫌な沈黙が場を支配する。空気を読む日本人らしく沈黙を守っていたが、言わねばなるまい。


「そもそも――このゾンビの群れはどうやって産まれたんですかね?」

「――わからない。急に叫び声もなく――いきなり突発的に皆が生ける屍に変化していたのよ」


 通常現代のゾンビセオリーでは噛まれて感染して被害が広がるものだが、ここはあいにくファンタジーだ。通常とは違う広がり方を見せたかもしれない。


「となると――魔物による呪いだの、色んな可能性が考えられますけど――」

「一番の問題は……どこまで広がっているのかわからない、ってことね。最悪城を出ても城下町までゾンビまみれってこともあるわ」

「じゃあ――」


 最終的にどうすべきだろうか? 逃げた先も安全な場所はなく――ということになりかねない。


「――最悪隣国まで助けを求めに行くことになりかねないわね」

「姫様――しかし」

「最悪の場合、よ。今のところは……教会に向かうべきね」

「もしかして――あの城から見えるでかい塔の?」

「そうよ。あそこなら聖職者が沢山いる。ゾンビに対抗できる人物だらけ――きっと安全よ」


 なるほど。目標は定まったようだ。今のところ――そこが目指す第一ポイントだろう。 

 俺はドレス姿の彼女をもう一度よく見る。凛々しい横顔――所々服はほつれ、擦り傷も付いているが、それを気にする風でもなく、風格を滲ませている。そんな風に思って見続けていたら――彼女に睨まれた。


「何よ、何か文句でもあるのかしら? そもそも私は部屋で休んでいたところで突然こんな目に遭ったのだから準備なんて何もできなかったし、とれる方策もほとんど無かったんですからね?」

「ああいやそんなつもりじゃなくてですね……その、せっかくお綺麗な肌が傷ついてるので治しますか? みたいな」

「別にいいわ」

 

 俺の言い訳のような申し出を彼女はさらっと断る。


「少しでも魔力は取っておきなさい。まず生き残る。次に安全な場所まで逃げる。最後に余裕があったら治せばいいのよ」


 本当に徹底的なリアリストだな――と思う。死んでしまっては何事も出来ない。そのことを熟知しているような口ぶりだ。そのリアリストがこの後どうするのだろうと思っていると――


「と、言うわけで――早速行くわよ」


 彼女はそう高らかに宣言すると、ビリビリとドレスの裾を破き始めた。


「え?」

「姫様、その……」

「五月蠅いわね。このままじゃかさ張って逃げられないんだからしょうがないでしょう? 逃げる際中は脱げなかったんだから、今やらなくてどうするの?」

 

 レオーネ姫の格好はやたらミニスカで、露出度の高い状態になっており、ケイトが頭を抱え苦言を呈したところだった。


「さて――私たちはいまから地下牢を抜け、教会を目指します。ここまでは質問はないわね?」


 姫様リーダーの弁に俺達は頷く。というか、頷く以外の選択肢は恐らくない。


「あの――一つ良いですか?」

「マクリ、手短にね? 夜になったらもう――逃げれないわよ?」


 ゾンビに限らずアンデッドは夜の方が凶暴だ。日没になれば再び朝まで動けなくなってしまう。


「ええと、姫様はここで待っていればいいのでは? わざわざ危険を冒して付いてこなくても――」

「そうです。姫様はここでお待ちになれば――」


 俺達の心配を他所に彼女は短く「却下」と言い放つ。


「行ったまま戻ってこられる保証はないわ。帰還もリスクを伴います。なら一緒に行動した方がマシでしょう? それに――何より一人で待つのは嫌よ」

 

 そう言うと彼女は自身の右腕に付けている腕輪を示す。


「それに、私が居ないと通れない扉がいくつもあるわ。これは王族だけが反応する――場内何処でも通行できる鍵よ。鍵は常に一緒のほうが良いでしょう?」


 現実的な話と、自分の気持ちを同時に語られてしまっては俺達もハイと言うしかない。

 そう言うと彼女は俺に向けて右拳を差し出す。俺はやれやれ、と思いながらその拳に自分の右拳を合わせた。


「――宜しい」


 何にせよ――か。

 目的無くただ逃げようとしていた時に比べればなんとも状況は改善されたように思う。こういう時にリーダーというのは重要だ。俺にはその資質は恐らくない。言われたことをこなす方が百倍楽だし、有能リーダーに従って生きていきたいと常日頃願っていたのだから。

ただ――状況は未だ厳しい。


「――それで、どうやって教会まで?」

「地下牢の先で繋がっているはずよ。貴方が昇ってきたここと反対の扉――教会関係者専用の通路があったはず」

「え!?」

「そもそも宗教関係の罪で投獄されるものが大半なのだから教会の人間がここに自由に来れないのはおかしいでしょう? 城の人間とは別にここまで来て罪人を吟味するために通路を作っていたはず」


 そんなものがあったのか? それなら――案外安全にたどり着けるかもしれない。そう期待を膨らませていると――。


「問題は――」そう言うと彼女は声を潜めてこう続けた。


「地下墓地を通らないと行けないことよね」


※※※


 レオーネ=クロノス


 ゲリノス皇国第二王女16歳

 

 HP15

 MP100


 幼い頃から素養のあった魔法使い(主に探索系や便利系に特化している)

 なお神聖魔法も使えるのだが――(以下禁則事項)


 装備 高価なドレス


ブクマして下さった方ありがとうございます。3~4日以内に更新はしていきます。

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