表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花に口なし  作者: 桃崎 白
8/9

第8話_第一印象とのギャップ


時刻は17:05。



私の姿は学校にはなった。

私がいる場所。それは、彼らと出会った公園にあった。





季節は初秋。

17時になれば、あたりの景色はオレンジ色に包まれる。

その景色の中、私は彼岸かれの姿を探していた。




彼に会ったら何を伝えたいのか

自分でもよく分からない。




けれど、なぜか必死に彼の姿を探していた。_____





公園の入口。

今日の昼、タンポポたちが座っていた場所だ。

しかし、もうそこに、彼女達の姿はない。



「いなくなってる…」






夜になると帰る家でもあるのだろうか…

クローバーの言葉を思い返す。





____「じゃあ、僕はこれで行くからね!」____





花の姿が見えるのは明るいうちだけなのか…

そんなことを考えていると後ろから怒鳴り声がした。




「おいっ!」




聞き覚えのある声に後ろを振り向く。

パンジーだ。




目の前にパンジーが立っていた。




どうやら私の予想は違うらしい。

そんなことよりも、昼間、彼岸に怒鳴り散らしていた人物が目の前に立っている。

謎の緊張感が私を襲う。



「おいっ!」




返事をしない私を注意するかのごとく、再度、私を呼びつける。




「はいっ!!!!」




先輩に呼び出された後輩のような返事をしてしまった。




「あのぉ…なんだ。そのぉ…」




急にパンジーの様子がおかしくなる。

しきりに前髪を整え、かしこまっているようにも見える。



「クローバーは一緒じゃないのか?」




クローバー?なぜ、急に彼の話?




「クローバーなら帰りました。」





「帰ったぁ?」




「はい…どこかは知りませんけど…家とか?」




「家?」




「お前、何言ってんの」そういわれる気がした。

けれど_____





「あっそ。まぁ、いいや……。 ん゛ん!!」




”改めまして”と言わんばかりにパンジーが咳払いをした。



「悪かった…」




風が吹けば、かき消されてしまいそうなくらい小さな声だった。

急な謝罪に話が読めなくなった。



きょとん顔で彼女を眺めていると



「今日の昼は悪かったね…」



薄紫色のロングヘア。

その毛先を猫の尻尾でを触るかのようにいじりながらそういった。



「へ?」



言われもない謝罪に間抜けな声が出た。



「だから、昼間は八つ当たりみたいになって…その…」







_______「はぁ?誰だそいつ?」______________





どうやら、彼女はその一言を気にしていたらしい。

それは、私にというより、クローバーへ向けて言い放ったような気もしたが、

彼女はそのことを気にしてくれたらしい…。







本当は、優しい子なんだ。





第一印象との大きな差を感じた。

初対面は喧嘩の最中。良い印象ではなかった。

だけど。こんな繊細なことを気にする人だったんだ…。

なんだか、そのギャップが可笑しかった。




「ふふっ」




「何笑ってるんだよ!」




少し悔しそうに恥ずかしがっているパンジー。

よく見れば、彼女は普通の女の子だった。






「結構、可愛いところがあるんですね。」






彼女に本音がこぼれ出た。

だって、わざわざそれを言うために私に話しかけてきたのだから___





「う、うるさいな!ちょと、気になったんだよ!」





たじろぐ姿も昼間の彼女からは想像できないものだった。

第一印象と見た目で決め付けた彼女の性格イメージは崩壊した。




「話は以上。じゃあね!」





「ふん!」と拗ねた顔がくるりと後ろを向いた。





「あの、ありがとうございました!」



彼女へお礼を言った。

理由は何だろう…。



こんな私のを気に留めてくれたこと…だろうか…。





彼女がちらりとこちらを見た。

その顔は心なしか口角が上がっていたように見えた。



薄紫色のロングヘアを揺らして去っていく。

風になびくその髪はとても綺麗だった。



その後ろ姿をボーっと眺めていた。




____結構、良い人じゃん______





彼女はきっと素直な人なのだろう。

なんだか、そう思えてきた。




サーーーーーー




秋夜の冷たい風が、公園の入口にいることを思い出させた。




「彼岸を探しに来たんだ…」




思いがけない出来事で、何をするために公園にきたのか、忘れていた。





パンジー(かのじょ)は意味もなく人に怒りをぶつけるような人ではないだろう。

なぜだか、そう思えた。



きっと、彼岸かれがああ言ったのは何か理由があるはずだ。




私は再び、園内を探すことにしたのだった。


____________________________




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ