第8話_第一印象とのギャップ
時刻は17:05。
私の姿は学校にはなった。
私がいる場所。それは、彼らと出会った公園にあった。
季節は初秋。
17時になれば、あたりの景色はオレンジ色に包まれる。
その景色の中、私は彼岸の姿を探していた。
彼に会ったら何を伝えたいのか
自分でもよく分からない。
けれど、なぜか必死に彼の姿を探していた。_____
公園の入口。
今日の昼、タンポポたちが座っていた場所だ。
しかし、もうそこに、彼女達の姿はない。
「いなくなってる…」
夜になると帰る家でもあるのだろうか…
クローバーの言葉を思い返す。
____「じゃあ、僕はこれで行くからね!」____
花の姿が見えるのは明るいうちだけなのか…
そんなことを考えていると後ろから怒鳴り声がした。
「おいっ!」
聞き覚えのある声に後ろを振り向く。
パンジーだ。
目の前にパンジーが立っていた。
どうやら私の予想は違うらしい。
そんなことよりも、昼間、彼岸に怒鳴り散らしていた人物が目の前に立っている。
謎の緊張感が私を襲う。
「おいっ!」
返事をしない私を注意するかのごとく、再度、私を呼びつける。
「はいっ!!!!」
先輩に呼び出された後輩のような返事をしてしまった。
「あのぉ…なんだ。そのぉ…」
急にパンジーの様子がおかしくなる。
しきりに前髪を整え、かしこまっているようにも見える。
「クローバーは一緒じゃないのか?」
クローバー?なぜ、急に彼の話?
「クローバーなら帰りました。」
「帰ったぁ?」
「はい…どこかは知りませんけど…家とか?」
「家?」
「お前、何言ってんの」そういわれる気がした。
けれど_____
「あっそ。まぁ、いいや……。 ん゛ん!!」
”改めまして”と言わんばかりにパンジーが咳払いをした。
「悪かった…」
風が吹けば、かき消されてしまいそうなくらい小さな声だった。
急な謝罪に話が読めなくなった。
きょとん顔で彼女を眺めていると
「今日の昼は悪かったね…」
薄紫色のロングヘア。
その毛先を猫の尻尾でを触るかのようにいじりながらそういった。
「へ?」
言われもない謝罪に間抜けな声が出た。
「だから、昼間は八つ当たりみたいになって…その…」
_______「はぁ?誰だそいつ?」______________
どうやら、彼女はその一言を気にしていたらしい。
それは、私にというより、クローバーへ向けて言い放ったような気もしたが、
彼女はそのことを気にしてくれたらしい…。
本当は、優しい子なんだ。
第一印象との大きな差を感じた。
初対面は喧嘩の最中。良い印象ではなかった。
だけど。こんな繊細なことを気にする人だったんだ…。
なんだか、そのギャップが可笑しかった。
「ふふっ」
「何笑ってるんだよ!」
少し悔しそうに恥ずかしがっているパンジー。
よく見れば、彼女は普通の女の子だった。
「結構、可愛いところがあるんですね。」
彼女に本音がこぼれ出た。
だって、わざわざそれを言うために私に話しかけてきたのだから___
「う、うるさいな!ちょと、気になったんだよ!」
たじろぐ姿も昼間の彼女からは想像できないものだった。
第一印象と見た目で決め付けた彼女の性格は崩壊した。
「話は以上。じゃあね!」
「ふん!」と拗ねた顔がくるりと後ろを向いた。
「あの、ありがとうございました!」
彼女へお礼を言った。
理由は何だろう…。
こんな私のを気に留めてくれたこと…だろうか…。
彼女がちらりとこちらを見た。
その顔は心なしか口角が上がっていたように見えた。
薄紫色のロングヘアを揺らして去っていく。
風になびくその髪はとても綺麗だった。
その後ろ姿をボーっと眺めていた。
____結構、良い人じゃん______
彼女はきっと素直な人なのだろう。
なんだか、そう思えてきた。
サーーーーーー
秋夜の冷たい風が、公園の入口にいることを思い出させた。
「彼岸を探しに来たんだ…」
思いがけない出来事で、何をするために公園にきたのか、忘れていた。
パンジー(かのじょ)は意味もなく人に怒りをぶつけるような人ではないだろう。
なぜだか、そう思えた。
きっと、彼岸がああ言ったのは何か理由があるはずだ。
私は再び、園内を探すことにしたのだった。
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