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花に口なし  作者: 桃崎 白
7/9

第7話_イメージ


私たちは公園から帰ってきた。




家の壁掛時計は16:00の10分前をさしていた。

あと1時間後には学校へ行かなければいけない。




「花のイメージは、ご想像通りでしたか?」




一緒に帰ってきたクローバーが今日の感想を求めてきた。

今日会った彼らのイメージ…







___8割が違和感___






そう思った。






花に対して具体的な”誰か”を当てはめて想像していたわけではないが、

今日会ったのは、ふわふわ女子、クール女子、ギャル、ヤンキー…。




4人中、3人の第一印象は”怖い”だった。___





「いやっ、想像通りかって聞かれるとちょっと違ったかも…ですね。」

「花が喧嘩している場面なんて見たこと無かったし…ってか、花って喧嘩するんだ…」



クローバーは肩を軽くすくめて笑った。

”そういうと思ったよ”そんな笑顔だ。




「嫌なことをされたら誰だって怒るし、嫌な気分になる。」

「それは、人間だけじゃないんだよ?」




道徳の授業で先生の口から飛び出してきそうな言葉だ。




嫌なことをされれば怒る。___当たり前だ。

けれど、それは、感情をもっているものが抱く心情だ。




「でも、人間の姿の花が見えるようになるまで花の喧嘩なんて見たことなかったし…」

「怒っている花とか、泣いている花とか、悲しんでいる花だって、見たことないし…」




花はきっと感情を持っていない。

誰かに踏まれても、茎を折られても、花びらをちぎられても、何も感じない___





____少し、羨ましい_____








「目に見えるものが全てじゃないんだよ?」



「聞こえてくる声もそう。自分が見て、聞いて、知った情報せかいだけが”全て”じゃないんだよ。」








さっきまで笑っていたクローバーが、私の瞳をしっかりと見つめそう言った。

何が言いたいのだろう…。

直接的な言葉はない。しかし、その言葉には他の意味が込められていることが分かる。




ふふっといった柔らかな笑顔で少し首をかしげクローバーは続けた




「では、問題です!」



真剣な話をしていたと思ったら、急にクイズが始まった。




「そこにあるのにどこにもなくて、大勢に認識さられるとそれは存在することを許される。」

「それってなーんだ?」




コレも何かを遠まわしに言おうとしているのか…

さっきから、伝えたい内容ことの結論を言おうとしない。

そのもどかしさが少しイラつきにも似た感情を沸き立たせた。




「なぞなぞですか?」



「なぞなぞ…ではないかなぁ。」




少しぶっきらぼうな態度でクローバーに質問をした。

けれど、当の本人はそれを気にも留めない。




「まぁ、いいや!コレは僕からの宿題ね!答えが分かったら教えてね!」




イライラオーラに臆したか?急に話を切り上げられた。




「もう少しで、学校だね!」



そう言われ再度、壁掛け時計に目を向けた。

時刻は16:30。あと30分で家を出なければ…



「あぁ、もうこんな時間になったんだ…」




「奈々ちゃん結局、昼ごはん食べられなかったね。」



哀れみの笑顔でクローバーが言う。

今日の公園は最初から最後までゴタゴタ続きだった。飯を食べている暇など無かった。


コンビニ袋は私の右手にぶら下がったまま。



「もう、この時間だし、学校の給食でいいや…」



定時制の高校には晩御飯がある。今日はそれで食事を済まそう。

そう思い、コンビニ袋ごと冷蔵庫にしまった。

すると後ろから、



「じゃあ、僕はこれで行くからね!」



突然、クローバーがそう言った。



「えっ!」




突然の発言に、思いもよらぬ言葉が口をついた。




その言葉を聞いたクローバーはニヤニヤした顔で



「何?まだ、僕にいて欲しいの?」



嬉しそうなその顔がむかついた。

その怒りは私の思考を冷静にしてくれた。


彼が消えて困ることはない。むしろ、嬉しいではないか。

突拍子の無い言葉に反射してしまっただけだ。



「いや、結構です。」



普通に考えれば四六時中クローバーが自室にいた方が嫌だ。

クローバーから解放される。

1人の時間がようやく戻ってくる。それが妙に嬉しかった。




「あら、残念。じゃあ、またね。」



またね???



少し困り笑顔で彼はそのまま家を出て行ってしまった。



家の中が一気に静かになった。

家の中にいるのは私1人。




リビングは私、1人がくつろぐには広すぎる。

自室へ行こう___





朝から帰宅までの出来事は約4時間弱だっただろう。

しかし、小旅行にでも行ったかの様な疲れっぷりだ。



「疲れたなぁー」



ベットに横たわると同時に勝手に口が動いていた。





時間は16:50_____


もうすぐ家をでなければ…。



迫り来る本日のミッションの面倒臭さを押し殺し、10分だけは心安らかに休もう。

そう決めた。






____「別にいいんだ。俺のせいにされても。それが、勘違いだったとしても___」





急に彼岸のことを思い出した。

その言葉をいっている彼の寂しそうな顔がはっきりと脳裏に思い出された。




「大丈夫かなぁ…」




初対面の人の喧嘩が気になるなど、とんでもない野次馬ヤロウだ。

しかし、私が気にしているのは喧嘩の行方はない。




彼岸のことが妙に気になる。




パンジーから怒られてしまうのではないかという心配ことではない。

なぜ、その問題は自分が原因ではないと反論しないのだろうか…




_______________________




「ねぇ、見てあれ!かほちゃんのノートが破られてる!」


「あぁ!本当だ!こんなひどい事、普通出来なくない?」


「夏川さんじゃないかなぁ…?夏川さんなんか、やりそうだもん…」


「えぇ!怖っ!そんなことするの!?」


「まじ最低じゃん…クソだな」


「気にしないほうがいいよ。あんな奴____」




___________________________







________私じゃないよ…_________















気がつけば天井を眺めていた両目から涙がこぼれていた。




彼が気になった原因が分かった。

昔の自分を眺めているような気になったからだ_____




時刻は17:00.

学校へ向かう時間だ。しかし、私の自転車は学校ではない方向へ向かっていた。



__________________

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