第4話_大きな温度差
「おぉ!本当に5分で用意してきた。結構素直なんだね。」
その顔は今にも「ふふっ」という声が聞こえてきそうなものだった。
クローバーと名乗った謎の男は玄関を出た先で私を待っていた。
得体の知れない謎の男の指示を実直に私は遂行した。
なんだかそれが妙に恥ずかしく思えた。
「すみません。これからどこに行くんですか?」
恥ずかしさを紛らわすように彼に話しかけた。
「そうだなぁ…やっぱり、ここは住宅地だし、まずは公園へ行ってみよう。」
彼曰く、自分は四葉のクローバーの化身で私に花の友達を紹介してくれるというのだ。
そんな馬鹿げた話がどこの世界にあるのか。
とりあえず、部屋から彼を追い出したい一心で指示通りに動いてしまったが次はどうすればいいのか…。
面識の無い男を振り切る。
次は、どうすれば____
「あっ。朝ごはん、まだだよね?」
不審者もどきを振り払うべく、次の一手を熟考する私とは裏腹に彼は何も考えていない様子でそう言った。
「はい…何せ、5分で飛び出してきたものですから…」
「そうだよね!じゃあさ、コンビニで買って、公園で花たちと喋りながらでも食べようか!」
___公園で、お花と、お話をしながら、食事をとる。___
その光景を他人が見たらどう思うのだろうか。完全にやばい奴を見る目が私に向けられるだろう…。
想像しただけでも悪寒が走った。
「はい?」
あなたは何を仰っているのですか?さっきから。
その「はい?」にたくさんの含みを凝縮させて言い放ってやった。
「今日は天気もいいし、ちょうど昼になるし、ブランチってことでさ!」
全く持って効果なし。
というかこの気持ちの温度差は何だ。
私ばかりが頭をグルグル回転させ続けているこの状況はなんなんだ。
この危機感の温度差はなんなんだ。
なんだか、バカらしくなってきた…。
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考えるのは止めだ。
こんなに心臓を激しく使ったのは何年ぶりだろう。もぅ、疲れてきた…。
大人しく、謎の男について行ってみよう。
きっと彼も気分が収まれば帰るべき場所へ帰るだろう…。
その時はそんな軽い気持ちでいた。
「そうですね。じゃぁ、コンビニへ行きますか」
彼のブランチプランに賛成した。
そして私は、本人曰く四葉のクローバーとコンビニへ行き”例の公園”へと向かったのだった。
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