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花に口なし  作者: 桃崎 白
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第1話_定時制高校の17歳

私の名前は夏川奈々子。定時制の高校に通っている17歳だ。

私の家は母子家庭でなければ、大家族でもない。ましてや、大きな夢を持っている訳でも無い。


私が定時制に通う理由。それは、地元の同級生に会いたくないからだ。

中学2年生の頃、私に対するいじめが始まった。

いじめの始まりは、同級生の私物をゴミ箱に捨てていたいじめっ子を注意したことだった。

それまで、いじめの「い」の字も無い人生にいきなりいじめはやってきた。


あまつさえ、私が注意をしたことで、私物がゴミ箱行きにならずに済んだ子までもが見てみぬふりだ。

正義とはなにか…

友情とはなにか…

私とはなにか…

よく分からない。



何のために注意をしたのか、何のために友達を作っていたのか、何のために大切にしていたのか。

何もかもがよく分からなくなってしまった。



いじめが始まった当初、学校に行くのがすごく怖くて、すごく嫌だった。

その日の学校が終わるとすぐに明日の学校のことで頭がいっぱいになり憂鬱になった。

日付も変わっていない夕方のことだ。

けれど、学校を休んでしまっては、いじめに屈してしまう気がして、自分に負ける気がして、休みたくなかった。


だが、日を追う毎に、私は何と戦っているのか分からなくなった。

授業を受けたくても教科書が無い。

体育に出たくても体育館シューズが無い。

私はこの学校ばしょから必要とされていないのかもしれない。

いや。むしろ、拒絶されているのかもしれない。

そうとさえ思えてきた。


いつしか、負けたくないと思っていた気持ちは、自分でも気がつかないうちに溶けてなくなってしまった。

必要とされていな学校ばしょに足を運ぶのは間違っているのではないか。

私を必要としていない場所。私が行きたくない場所。お互いの気持ちは合致している。

それじゃあ、私はその場に行くのをやめよう____



そんな無気力な日々が続いているうちに、気がつけば中学校が終わろうとしていた。

こんな不登校児にさえ、内申というものはある。

言うまでも無いが目も当てられない内容だ。



だが、高校とはエリートのみが入学できる場所ではない。いわゆる「捨てる神あれば拾う神あり」で

名前が書ければ、私を引き取ってくれる学校は何校かあった。

”名前が書ければ誰でも入学できる”逆を言えば、名前を書く能力しか持っていない者達のあつまりだ。


そんな場所へ行けば、また格好のターゲットにされるに違いない。

そんな学校でさえ同じ中学校の出身者は数人いる。私の中学校時代の話などされたら、きっとまた一人になってしまう。




全日制はダメだ。

私のことを知っている人間が一匹もいない場所へ行かなくては。



中卒…そんなことも一瞬頭をよぎったが、そうなると、今度は働けといわれるだろう。

働くのはまだ早い。

全日制の高校には行きたくない、が、働くのも嫌だ…となると____



「定時制の高校はどうでしょうか?」


「定時制?」


「はい。定時制の高校を卒業できれば、高卒扱いになりますし、全日制を希望されないのであれば、私は定時制をおすすめしますよ」



中学3年生の進路相談で、担任の先生がそういった。

私は母の希望を知っている。高校では”普通”になって欲しかったに違いない。

全日制の高校。定時制の高校。天稟にかければ、母の切なる思いの重さで天稟が壊れてしまいそうなほど母の希望は決まっていただろう。



「奈々ちゃん、定時制だって!いいんじゃない!」



何も言わない。このひとは。自分の意見ではなく、私の意見を代弁してくれる。

そういう所に甘えている自分がいて、そういう甘さを与える母を逆恨みしている自分がいる。



____私はいつからこんな嫌なやつになったんだろう…_____




「どうだ?夏川、お母様はそう言っているぞ?」


「そうですね。私も高校には行きたいので定時制の高校、受けたいです」___________





そんな中学校時代を経て、私は1年と5ヶ月定時制高校に通っている。

私は17歳。高校2年生になった。

もう1学期が終わり季節は彼岸の時期を迎えようとしていた。




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