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異界序列  作者: せれしあ
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プロローグ

お待たせしました。

あ、ストックは三万文字しかないのですぐに尽きます。 ご了承ください。

その学園に、名前はない。

 否。 そもそも、それは学園と呼べるかも怪しい組織である。

 取り敢えずここを、『機関』と呼ぶことにしよう。

 全国にいる学生のうち、『中学三年生』の数は数十万人に及ぶ。

 一昨年のことだ。 政府が彼らに対し、一斉に検査を行ったのは。

 国の未来を担う存在を選抜するという名目のもと、学力、体力、精神力などが一斉にテストされた。 その結果十人の少年少女が選抜され、彼らは国家直属の養成機関で最先端教育を受けることとなった。

 数多の学生の中から『極めて優秀』とされた上位十名。


第十位、与那国 マキナ。

第九位、久世 夏凛。

第八位、三枝 静香。

第七位、椎葉 悠月。

第六位、桜木 姫香。

第五位、蔵馬 啓司。

第四位、宮沢 賢一。

第三位、東郷 大和。

第二位、佐藤 蒼葉。


第一位、藤崎 天音。


 通常の高校と同じく四月から始まった彼らの養成プログラムは、とても常人にはこなせない様なものばかりだった。 高校三年間の学習など、最初の一か月程で終了した。

 それからは専門的な学習だったり、思考力、判断力を極限まで鍛えるプログラム、身体性能を強化するトレーニングなどが行われた。

 ここまでくると、ドロップアウトする生徒が出ると思うかもしれない。 しかしご心配なく。 そのような兆候のある生徒は、事前に選抜対象から除外されている。

 ここは超人を生み出す機関。 不可能を可能にする学園。


 故に、この事態は政府を、国を揺るがす大事件となった。



「おはよう」


 宮沢は教室のドアを開けて、中にいる人に挨拶をする。


「おはよう、宮沢君」


 返事は一人分。 水の様に澄み渡る声からして恐らく、三枝のものだろう。


「いつも早いね、三枝。 一体君は、何時起床なんだい?」

「夜明けと同時に目が覚めるわ。 ……これは何度か、説明したはずだけど」

「むっ、 それもそうか。 ところで君は、何の本を読んでいるんだい」


 恐らく徹夜で読んでいるのだろう本の名前が気になり、宮沢は三枝に問いかける。 本と言っても机に置いているのはタブレット端末で、読んでいるのは電子書籍だ。 効率を求めた結果だと、彼女は前に言っていたか。


「医療関係の論文よ。 最近、医療関係の授業があったから」

「成程。 そういえば君は、医師免許を持っていたね」

「あまり言いふらさないで」


 何か思い出したような表情を浮かべる宮沢に対し、端末をスリープ状態にした三枝が顔を上げた。


「教授が沢山苦労して、特例中の特例で獲得したんだから。 もっとも、手に入れた所で病院では働けないんだけど」


 機関に通う十人にはそれぞれ込み入った事情がある。 大書店の一人娘である彼女にも、それは例外ではない様だ。


「ハーバードを出た君が、高校をやり直しているんだよね。

そういえば、やっと一年が経ったか」


 現在、彼らは高校二年生『相当』だ。 ……あくまでも相当なのは、彼らの通う学び舎が普通ではないことの証左である。


「えぇ。 そういえば今年から、久世さんと与那国さんも授業に参加するそうよ」


 その情報を、どこから手にしたのだろうか。 宮沢は一瞬の思考の後、「まぁ、いいか」という結論に至った。


「それは知らなかった。 流石だね、三枝さん」


 彼女を褒め称える声に、三枝の頬が緩む。 ―――常人では気づかないレベルで。


「褒めても何も出ないわよ」

「そうかな。 お勧めの本とか、また教えてほしいんだけど」


 人と話すことの少ない三枝にとって、朝のこの時間、宮沢との会話が唯一と言っていいほどのフリートークだ。 別に意思疎通ができないわけではないが、本人の性格によるものだろう。

 

「そうね、最近でいえば――」

「おはよー宮沢! あ、三枝さんも」


 ふむ、と顎に手を当てた彼女の思考を、ドアの開閉音が遮った。


「――この話はまた今度ね」

「おはよう、椎葉。 ……よくもやってくれたね」


 三枝と二人きりの時間は、宮沢にとっても心地よいものだ。 それを邪魔した椎葉に、彼は冷たい視線を向けた。


「そう言うなよ。 二人で話したいなら、ラウンジにでも行けばいいじゃないか」

 

 全く持って分かってない風を装った煽りに、


「別に私は、宮沢君と話したいわけではないわ」


 三枝が心外だ、と反論した。 頬を赤くするほどの可愛さは無いが、つーんとして少々早口だったのは否めない。


「おぉ? 残念だったな宮沢、お前振られたぞ」 

「そもそも告白なんてしてないよ」


 宮沢も、椎葉の軽口を両断した。 こちらも一切、照れる様な事は無い。 二人ともまるで子供らしくない振る舞いを見せているが、


「まぁまぁ、照れるなよ二人とも。 余計なお世話だろうが、ほっといたところで進展しないだろ」


 事実そうなのだから仕方あるまい。椎葉の助けなしでは、こうやって話すことすらなかっただろう。


「だから、私はそんなつもりでは――」


 二回目の開閉音。 教室に入ってきたのは、藤崎と佐藤だった。


「おはよう、皆。 随分と早いんだな」

「あぁ、九條さんか。 俺も、今来たところだぜ」


 これまで会話していた二人に背中を向けて、椎葉は藤崎の言葉に返答した。


「いつも通りだね」

「……えぇ、その通りね」


 ここまでの展開は、今に始まったことではない。 むしろ、日常茶飯事だ。


「おはようございます!」

「おはよう、皆」

「おはよう。 ……俺で最後か」


 暫くして、桜木、蔵馬、東郷の順にクラスメートが教室に入ってくる。


「いや、今日はもう二人―――久世と与那国が来るらしい」

「そうか。 これでやっと、十人が揃ったか」

「あぁ。 これで『序列』も、本格的に始動するようだ」


 東郷が入室した後のやり取りで、藤崎が気になる単語を口にした。


「序列、か。 僕はあまり興味がないかな」


 宮沢が言葉を漏らす。 彼は元々、自分の順位にあまり関心がないのだ。


「私も、どうでもいいわ」

 

 三枝も序列に関心が無い様だ。 ……と言うよりも、ここにいる八人の中で、序列制度に意欲のある人間はいないだろう。


「一位の特権、何かあったっけ?」

「二位以下への命令権、だな」


 蔵馬の問いに、藤崎が答える。 

 競争意欲を促進する為に設けられた『序列制度』だが、そもそも一年生の時点で二人の欠員がおり、数十万人の頂点に位置する彼らにとって、そこまで争うものでは無い、と言うのが創意であった。 この機関が犯した、唯一のミスといえる。


「最初は暴走する人が居るのではないかと、心配になったのだが」

「そんな者はいなかった。 事前に排除されたからな」

「もともと、この教室には三十人ほどいる予定だったらしいですよ」


 九條、東郷、桜木の会話である。


「結局のところ八人しか―――いや、十人か」

 

 椎葉がそう言ったのとほぼ同じタイミングで、扉が開いた。


「お久しぶりです、皆さん」

「……久しぶり」


 久世と与那国が、一年ぶりに教室へ姿を見せた。

 


「久しいな、久瀬、与那国。 君たちと共に学ぶことができて、私達も嬉しい」


 皆を代表して、藤崎が再会の言葉を贈る。

 

「うん」

「私も嬉しいです。 これからがとても楽しみでたまりません!」


 これから。 

 その言葉が引き金になったのだろうか。


 突如として、彼らの教室の床一面に、複雑な、謎めいた幾何学文様が発生した。


「―――これは」

「教室から出るな! 何が起こるかわからない!」


 篠崎の疑問を、椎葉が一瞬で打ち消す。

 慌てて教室から出ようとした与那国の動きが止まり―――



 十人の少年少女は、この世界から消失した。


いつもの異世界転移です。

ブラウザバックしないで。 せめてブクマして感想書いて帰ってね……。

一時間後に第一話が投稿されます。 そちらもよろしく。

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