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出会いと力と冒険と ④

 ヴァルニアの街では至る所に“魔法”という力が使われている。

 例えば路の両端に立つ魔法灯。

 ナルル村では電球を使った普通の灯りしかなかったけど、ここではむしろ魔法灯の方が一般的だ。

 その動力は名前の通り、魔法。でも魔法は永続的な力ではないので、ここであるものが用いられる。

それが“魔導石”。魔導石は不思議な力を持った石で、その身に魔力マナを溜め込むことができる。魔法灯はその要領で常に輝きを放っていられるというわけだ。

この魔導石の使い道は魔法灯だけ、ということではなく、武器やその他の魔法道具など様々な用途があるらしい。


そしてこの冒険者ギルドの入口の扉にも。

ここの扉は人の気配を感じ取ると、自動的に扉が開く。所謂“自動ドア”ってやつだ。まあ冒険者ギルドは混み合っていることが多いから、日中は開きっぱなしなんてことも多いみたいだけど。


今日もそんな文明的な扉を、くぐり抜ける。



 「ねぇレクト。今日はどんなクエストやる?」

 「んーそうだなぁ。…あ、これなんてどう?」


 顎に手を当てながら貼り出されたクエストを一瞥しているルミアの隣で、僕も目を水平に動かす。そして、あるクエストを指さした。


 「『アルミラージの角5個の納品』かぁ。クエストランクはH。うん。納品系のクエストやったことなかったし、いいんじゃないかな」

 「よし。じゃあ受付に…ってなんだこれ?」


 貼り紙にざっと目を通すと、いつもは“なし”としか書かれていなかった最後の欄に何やら文字が書かれている。


 「どれどれー? 備考、アルミラージは迷宮に生息」

 「迷宮か」

 「レクト、知ってる?」

 「いや、全く」


 聞き慣れぬ言葉に、ルミアと顔を見合わせる。

 困ったなぁと二人立ち尽くしていると、ふと頭にある人の顔がよぎった。


 「あ、サラさんに聞いてみよう!」


 サラさんはギルドの職員だし、何かしらは知ってるだろう。わからないことがあったらいつでも聞いてねーって言ってたし、ありがたく頼りにさせてもらおう。


 「あー、その手があったか」


 クエストボードから貼り紙を剥がし、サラさんの元へ持って行く。


 「サラさーん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


 ちょうど仕事がひと段落ついたらしく、サラさんは「はーい」と少し間延びした声を出して目の前のカウンターについた。


 「あ、レクトくん! ちょうどよかっ……って、その子は!?」


 サラさんは隣にいたルミアを見るや、素っ頓狂な声をあげた。

 確かにルミアとサラさんが顔を合わせるのは初めてだけど、そんなに驚くことだろうか。


 「初めまして。ルミア=フローリアです。一応、レクトとパーティってことになってます」


 一応ってなんだよ一応って。横目でじーっと睨んだが、してやったりという顔でニヤついていた。くそっ、この女。

 落ち着きを取り戻したサラさんは、いつも通り穏やかな口調で返答した。


 「初めまして。サラ=フルールです。ルミアちゃん…でいいかな?」

 「はい! これからよろしくお願いします。サラさん」


 「うん!」と元気よく答えると、サラさんはまるで蔑むような目つきでこちらに目を向けた。


 「で、何なのよ用って」


 明らかに怒気を孕んでいる。表情もムスっとしているし、とりあえずなんか恐い。え? 僕何かした?


 「え、えっと、“迷宮”について教えて欲しくて…」


 恐る恐る聞くと、サラさんは「そっか。教えてなかったんだっけ」と言って、下の引き出しからヴァルニアの地図を取り出した。


 「今私たちがいるのがここね。で、この大通りをまっすぐ進むと王城なんだけど、ここにもう一つ枝分かれした大きな道があるでしょ? これの奥にあるのが迷宮よ。ほらここ」


 サラさんが指さした場所は、大きな山だった。


 「これって…」

 「そう。火山よ」


 火山。チャモさんたちと見た、あの火山か。

 それにしてもそんなところが迷宮なんて、一体どういうことだ?


 「不思議なことに、この火山は魔力マナ神力ソウルといった力に溢れているみたいなの。それだけでも信じられないのに、内部は階層ごとに分かれているの。まるで迷宮ダンジョンのように」


 なるほど、それで迷宮・ダンジョンって呼ばれてるのか。


 「階層って、具体的にどのくらいあるんですか?」


 不思議そうな表情をしたルミアが疑問を口にする。

 それはちょうど僕も気になってたところだ。

 

 「全部で10層っていう噂よ」

 「じゅ、10層かぁ」

 「結構大変そうだね」


 人差し指をすっと上げて、サラさんは続けた。


 「それだけじゃないの。この迷宮を踏破したものにはその証、紋章が刻まれる」

 「紋、章…?」


 ここで僕の脳裏にある一節がよぎった。


 –––六つの聖なる紋章を合わせし時、汝は天空都市スカイスフィアへと導かれん–––


 もし、この紋章と同じものを指すのだったら–––


 「もしかして、迷宮ダンジョンって…」

 「そう。全部で六つ。六大国全てに存在しているわ」


 その言葉を聞いた瞬間、全身に戦慄が走った。

 どうしようもなく高鳴る鼓動。

 ついに、見つけた。天空都市スカイスフィアへの道を…!


 「もし、その紋章を全て集めることができたら–––」

 「天空都市スカイスフィアに…!」

 「うん。多くの人はそれを夢見て日々迷宮に向かっているわ」


 世界には多くの冒険者が存在している。

 冒険者は辛く厳しい道かもしれない。

 全く稼げなくなることだってあるかもしれない。

 死に直面することだってあるかもしれない。

 それでも戦い続けるのはきっと、夢があるからだ。

 僕も今、改めて誓う。


 必ず、天空都市スカイスフィアに辿り着く。


 「ルミア」

 「うん」

 「僕たち、もしかしたらすっごく大変な道を進もうとしているのかもしれない」

 「うん。そうだね」

 「だけど、やるしかないんだ」

 「私とレクトなら大丈夫」

 「うん。そうだね。きっと大丈夫!」

 「うん!」


 目を合わせ、しっかりと確かめる。

 僕たちの、最終目的地を。



 「じゃあサラさん。サインお願いします」

 「りょうかーい。–––はい。じゃ、初めての迷宮、気をつけてね。ルミアちゃんも」

 「はい!」

 「じゃあ、いってきます!」


 笑顔で見送ってくれるサラさんを背に、いつもより早足でギルドを後にした。


一旦このお話はここで完結とさせていただきます。

理由としましては評価があまり良くないということです。

次回作はもっと良い評価が得られるように頑張りたいと思います。

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