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新たなる世界 ③

ついに! ついにポイントがつきました!

ブックマークをしてくださった方、本当にありがとうございます!

そうでない皆様も、ご拝読感謝です!

でも、できればほんのすこーしだけポチッとしてくださるととても嬉しいです!

執筆速度が上がるかもしれません。

 緩やかな坂道を登り切ると、まるで別世界に行ってしまったように景色が一変した。

 ここまでは木々で覆われていた大地が、その姿を悠々と讃えている。草木は短く、なだらかな平原が続いている。


 「うわぁ! 広いなぁ! こんな場所初めてだ…」


 ナルル村は言うなれば田舎の中の田舎だ。周りは山に囲まれ、解放的なところを挙げろと言われても片手で数えるくらいしか出てこない。何しろ、村が管理する範囲から外に出たのは今回が初だ。思わず感嘆の声が出てしまうのは当然のことだった。

 心地良い光景に目を奪われていると、横で深呼吸をしていたチャモさんがこちらに向き直して言った。


 「どうだ。初めてこれを目にした感想は」

 「…すごい、というか呆気にとられますね…」

 「そうだろうそうだろう!」


 そう言ってチャモさんは顔をくしゃくしゃにして背中をバシバシ叩いてくる。

 チャモさんはがっちりとしたガタイなので、結構痛い。散々世話になっといてなんだけど、この癖だけは直して欲しい。


 「それとな。気付いてるかもしれんが、ここはもうヴァルニアの領土だ」

 「! やっぱり…そうなんですね」


 あまりに光景が違うからもしかしてとは思っていたけど、やはりここはもうヴァルニアらしい。『猛炎の大地』とはこのことを指していたのか。確かに的確かもしれない。…でも猛炎の要素はどこにあるのだろうか。めちゃくちゃ気温が高いとか?

 ただ、感じるのは感動だけではない。

 もう1つは『六大国』であるヴァルニアの、圧倒的な力。

 今目の前に広がる草原だけでも広さはナルル村の数十倍はあるだろう。広大な土地の領有。それを成し得るのは強大な軍事力。そんな大国とナルル村のような一農村が事を構えたら…。結果は火を見るよりも明らかだ。


 「街まではあとどれくらいですか?」

 「そうだなぁ。…あれが見えるかい?」


 そう言ってチャモさんが指差した先には、巨大な城壁と、その後ろにうっすらと三角の影が見て取れた。


 「あ、はい。城壁…ですか?」

 「そうだ。つまり、あそこがヴァルニア都市部だ」

 「じゃあ、その後ろに見える影は…?」

 「ああ。あれは火山・・だ」

 「え?」


 思わず耳を疑った。

 普通、火山というものは山岳地帯や島弧など、地下にマグマがある限られたところにしか生成されないはずだ。というかそれ以外あり得ない。それがなぜ、こんな平らな土地に?


 「火山…ですか。一体どうやって?」

 「できるはずがない。それが普通の見解だろう。学者の間でもまだ解析が進んでいないそうだ」

 「そうなんですね…」

 「ただ、古くからの言い伝えによると、千年前突然姿を現したそうだ。本当のことはわからんがな」

 「千年前…」


 千年前というと、あの英雄譚とちょうど同じ時期だ。長く続いていた戦乱を鎮めた英雄の話。僕の憧れとなった物語。それと何か関係があるのだろうか。

 だけど、僕が知る限りあの話には火山の出現らしきことは書かれていないはずだ。まあ、書かれていたら今頃解析はもっと進んでいるだろうから、多分そうなのだろう。


 「とにかく、あの火山がヴァルニアの象徴シンボルと言ってもいい存在だ。一度見に行ってみるといい」

 「どうやって出現したのかも気になりますし、行ってみます!」

 「それがいい。じゃ、ヴァルニアまであと少し、先を急ぐとしようか!」


 そう言うと、チャモさんは慣れた動きで手綱を引き、再び馬車を前へと進め始めた。







 「うぉぉ…。これはまた…でっかいなぁ」


 目の前に立つ、いやそびえる城壁は、まるで僕たちを見下しているかのようだった。平原の向こう側で見たときは感じなかったけど、この城壁は相当な高さだ。約8M(メテル)くらいはあるだろうか。厚さもまた凄まじく、石灰岩の重量感がその堅牢さを伝えている。それがぐるりと一周街を囲んでおり、並大抵の戦力では攻め入る希望すら与えないだろう。


 「ヴァルニアはオリヴィアに次ぐ軍事大国だからな。その分城壁も大きくなる」

 「田舎もんには想像もつかないです…」

 「ははは! なぁに、すぐに慣れるさ」


 城壁と同様巨大な門をくぐり抜けると、外の太々しい見た目とは違う色鮮やかな光景が眼前に広がった。

 赤褐色のレンガで建てられた家々、絶える事なく大通りを行き交う人々、通りを彩る露店や街路樹。文字通り“大都市”のそれだった。


 「これが…ヴァルニア王国!」

 「どうだ? わくわくしてきただろう?」

 「はい!」


 目に入る人も、景色も、文化も、何もかもが今までとは違う。

 これが新しい世界…!


 「レクトくん。私たちは納品の用事があるからそろそろお別れになってしまうが、その前にこれを」


 そう言ってチャモさんが取り出したのはパンパンに膨らんだ袋と、内部が薄紅く光を放っている鉱石だった。

 両手で持っていた鉱石をどんと荷台に置いて、チャモさんは続けた。


 「これは私たちの気持ちだ。金は少ししか用意できなかったが、この“ルベリア鉱石”はなかなかの上物だ。今すぐではなくとも、いずれは役に立つ時が来るだろう」

 「いやっ、こんなに!? いいんですか? 僕の方が世話になってばっかりだったのにこんな…」

 「気にするな! 私たちもレクトくんと出会ってとても楽しい時間を過ごせたんだ。なぁみんな!」

 「そうっすよ」「私もだ」「俺もそう思う」


 チャモさんの言葉に、次々と同意の言葉が飛び交う。


 「みんな…。本当にありがとう!」

 「じゃあ、私たちはもう行くよ。レクトくん、達者でな!」

 「はい! 必ずまたどこかで!」


 数秒のうちに、みんなの姿は人混みの中へと消えてしまった。

 たった数日だったけど、本当に親切にしてもらった。しかも最後にこんなにたくさんのお金を残していってくれた。本当に優しい人たちだ。

 もうお別れだけど、いつかまたどこかで…。






 「それにしても、すっごい人だなぁ…。さて、まずはどうしようか。…あ、冒険者ギルドって言ってたっけ」


 といっても、右も左も分からないのでまずは地図看板を見つけ、現在地の把握と冒険者ギルドの場所を探した。


 「お、ここか。へぇ、冒険者ギルドの他に“素材ギルド”、“鍛治ギルド”なんてのもあるのか。そのうち行ってみようかなぁ」


 確認すると、今の位置から大通りを真っ直ぐ進んで50M(メテル)ほどの所にギルドが3軒並んでいた。そう遠くはない。

 そして、この街は広い。圧倒的に。地図を見ているだけでも目が回りそうだった。

 ヴァルニアは六大国の中で一番広いってチャモさんも言ってたし、迷わないように気をつけないとな。


 「よし! じゃあまずはギルド目指してしゅっぱー–––」

 「待ちなさい! って、あ! ごめんなさ–––」


 現在地も主要な場所も大体把握し、準備は万全。

 空は雲ひとつない青空で、新たな幕開けを祝福している。

これから待ち受ける未来への期待に胸を踊らせ、僕は異国での新しい第一歩を––––––盛大に踏み外した。


ちなみに、Mメテルという単位は現実のメートルと全く同じ長さです!

また、現実のセンチは《セーチ》、キロはそのままです。

あ、ミリも同じでした。全くと言っていいほど出てくる機会はないと思いますが。

そして最後は!


......次回のお楽しみです笑


次回の更新は明日8/18になります。

では。

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