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新たなる世界 ②

 「光灯魔法レーティア


 右手の人差し指からふわりと浮かび上がった白い光は、優しく弾け飛び、出発から約半日、すっかり暗くなった空間を明るく照らした。

 魔法。この力は広くそう呼ばれている。本来なら不可能なことさえ可能にしてしまうこの力は今や人類にとって不可欠なもの。大都市ではそうらしいけど、ナルル村では魔法を使える者はほとんどいない。使えると言ったらこの《レーティア》くらいだ。ちなみにこの魔法は昔父さんに教えてもらった。

 村を出た理由はここにもある。それは単純、魔法が使いたいから。あの英雄譚の中で、男が魔法を駆使して困難に立ち向かっていく姿はとてもかっこよく、憧れになった。ただ、ナルル村では魔法が一般的ではない。だから、こうして大都市に出向くしかないのだ。


 「あー、お腹空いたなぁ。そうだ、パンあったんだっけ」


 隣の大袋からパンを一つ取り出し、豪快に頬張る。長い旅路になるだろうと村を出る前に10個ほど買っておいた。なんの味もしないけど、空腹に耐えかねた身には美味しく感じられた。


 「んー、やっぱり味が欲しいなぁ。ジャムとか持ってくればよかったかな?」


 二つ目のパンを水で流し込む。一つ目は気にせずいけたけど、やっぱり無味は無味だ。今になって毎朝パンを美味しく調理してくれた母さんのありがたさが身にしみる。


 「ヴァルニアまでは後三日くらいか? だとすれば一日2、3個。…ちょっと足りなそうかも」


 ヴァルニア王国。六大国でナルル村から最も近い国。僕の第一の目的地はそこだ。ヴァルニアは大都市で人通りも多く、魔法も盛んなので天空都市スカイスフィアや魔法についてほとんど知識がない僕にとって得るべき情報がたくさんあるはずだ。しかも噂によると六大国には『冒険者』という職業が存在するらしく、勝手が分かれば僕でもきっと食べていけるだろう。


 一通り今後の予定を確認した後、僕は旅路の記念すべき一夜目を過ごした。

 祝ってくれる人誰もいないんだけどね。







 翌日、眠い目をこすりながら歩いていると、森を抜けたところに人だかりが目に入った。


 「どうしたんですかー......って狼ぃ!?」


 駆けつけると、そこでは5、6人の大人と10匹ほどの狼(の形をした魔物?)が対峙していた。1人は負傷したのか倒れ込んでおり、見る限り彼らは苦戦を強いられていた。


 「助太刀します!」

 「それはありがたい! だがウォーウルフを侮ると痛い目を見るぞ。わしらのようにな」

 「あ、はい! …うぅ。気をつけなくちゃなぁ」


 右肩から石製の剣を引き抜き、ウォーウルフと呼ばれる魔物を一瞥する。

 一回も見たことないけど、おそらくあの大猪よりはパワーで劣るだろう。速さはその限りでないだろうけど。

 でもとりあえず、やってみるしかない!


 「うぉぉぉぉぁ!」


 地を蹴り、魔物に肉薄する。急激な突進に怯んだ魔物に一撃をお見舞いする。まずは1匹。

 即座に次の魔物が襲いかかるが、右に跳び、体を回転させた勢いで蹴りを叩き込む。2匹目。

 横に目をやると、5つの灰色の体躯が転がっていた。どうやら、1人1匹ずつといった感じで無事に倒したらしい。残りは3匹。


 「せやぁぁ!」


 仲間を倒された怒りからか、脇目も振らず突っ込んできた1匹に一閃。頭にもろに喰らった魔物は倒れこみ、気絶した。


 「残りは...っと」


 すぐに次の魔物に備えたが、動き回る姿は見えない。その代わり安堵の表情を浮かべる者が6人。これで終わりか。


 「助かったよ少年! ありがとう」

 「いえいえ! 助かったなんて、とんでもないです」

 「いやいや何言ってるんだ。君のおかげで私たちは無事に済んだんだ」

 「そ、そうかなぁ」


 大げさだと思えるほど隠すことなく感謝の気持ちを示してくるので、胸がむず痒くなりそうだったが、これがこの人の性格なのだろう。

 その人の仲間であろう人たちからも声をかけられ、頭がパンクしそうだ。今までこんな経験なかったからなぁ。一回も村の外に出たことなかったし。


 「ああ、そういえば自己紹介が遅れたね。私の名前はチャモ。この行商隊キャラバンのリーダーを務めている。そして後ろにいるむさ苦しい男たちは私の仲間だ」


 チャモさんが後ろを振り返ると「うぃーす」と数人の男の人が頭を下げた。

 年齢は幅広く、一番若そうな橙色の髪をしたお兄さんが20歳くらい。さっき倒れてたおじいちゃんが60歳くらいか。見ていると雰囲気はかなりよく、まさに一生の友といった感じだ。キャラバンは初めて見たけど、みんなこんな感じなのだろうか。


 「僕はレクト=アルトゥールです。ちょっと訳あってヴァルニア王国を目指してるんです」

 「レクトくんか。お礼と言ってはなんだが、もしよかったら私たちと一緒にヴァルニアまで行かないか? 私たちも丁度ヴァルニアに用があるんだ」

 「えぇ!? い、いいんですか?」

 「一人くらい増えたところでどうといったことはない。それに、さっきのお礼もしなくてはね」

 「そういうことなら…。じゃあ、よろしくお願いします!」


 あまりに唐突な誘いだったから少し驚いたけど、見ている限り悪い人たちではなさそうだ。ここはお言葉に甘えて連れてってもらうことにした。







 こうして、ヴァルニアまでの旅路をチャモさんたちとともに過ごすことになった。

彼らは採掘した鉱石を各国まで届けることを主な仕事としていて、幸いにも今回の目的地が僕と同じヴァルニアだそうだ。見知らぬ人と出会って行動を共にするなんて、一気に冒険感がでてきたなぁ。


 チャモさんたちは仕事柄大陸の地理的な事に詳しく、道中で様々なことを教えてもらった。

 まずは六大国について。六大国はそれぞれ別名があって、『猛炎の大地 ヴァルニア』、『薫風の峡谷 ラスラーテ』、『豊穣の連山 ヴォルフォン』、『麗水の都 ティアフォルネ』、『白銀の氷河 ヒアスアーティ』、『星雷の央都 オリヴィア』と言うらしい。それぞれの特徴を的確に表しているなぁとチャモさんは言ってたけど、どんな国なのだろうか。

 そして冒険者になるためには手続きが必要らしく、ヴァルニアに着いたらまずは冒険者ギルドに足を運ぶことを勧められた。


 情報だけでなく、食べ物も恵んでもらった。最初は遠慮したのだが、グイグイくるチャモさんに最終的に押し切られてしまった。本当に世話になってばっかりだ。

 他の隊員たちともすっかり打ち解け、僕は充実した時を過ごした。


 旅の初めからこんな人たちに出会えるなんて、僕は恵まれているのかもしれない。

 そんなことを思いながら、馬車に揺られていた。


チャモさん登場!

ヴァルニアまでの旅路をゆくことになりました!

ちなみにウォーウルフは雑魚キャラで、ド●クエのも●んじゃ的な立ち位置です!

だからチャモさんたちも倒せるってわけです。

決してレクトが強いってことではないです。


次回の投稿は明日です!

では。

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