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「穂村さん。親御さんに連絡入れておくから、ちゃんと休みなさいね」
「はい」
千明さんに何やらメモ用紙を渡すと、其処に千明さんの家の電話番号を書かせる。
そろそろ置賜したい所である。居ると邪魔になりそうだし、バイトもある。そう思ってこそこそと保健室を後にしようとすると、千明さんが声をかけてきた。
「あの、少しだけお話良いですか……?」
一瞬どうしようか考えたが、所長に対しては『病人を発見して保健室へと連れて行った』と言えばある程度納得してくれるだろう。それでも遅れる訳にはいかないので、『少しだけ』と言っておく。
「不知火さんってとっても綺麗で、孤高で、その……なんて言うか 壊れてしまいそうで、穢れてしまいそうで、話し掛け難かったの……。でも……儚いけれど……それが話しちゃいけない理由にはならないよね……。今までごめんなさい……」
何故か妙なイメージを持たれているが、中身は普通の女だ。話しかけたぐらいで壊れないし、穢れない。でもそう言う風に思わせているのは私自身なのだろうか……。話しかけ難くしているのは私自身なのだろうか……。喜怒哀楽を表に出さないと、人間は何処までも儚く、脆くみえるということなのだろうか……。
様々な理由が浮かんでは消える。まるでシャボン玉だ。
「でも、変な方向で不知火さんのイメージを壊さないように接してきたけど、これからは……偶にお話してもらって良いですか……?」
「敬語は使わないで。後紅葉って呼んで」
私はよく浮く。皆曰わく『儚い』だの『壊れやすい』だのという意見で。それでも今までそんな事を気にした事はないし、気にするような事でもない。
突然馴れ馴れしくしされたところで、憎悪の目からいきなり好意を向けられた訳では無いのだし、其処まで不快感は感じなかった。元々好意は持ってくれているようだし、無表情で無口、そして何故だか儚いというイメージを植え付けた私にも非があるというもの。
貧乏人が宝くじを当てて、掌返したように親しくしてくるのとは訳が違うのだ。
「有り難う……」
「別に、バイトだからそろそろ行く」
本当に、可愛くない口調でその場を後にした。




