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アンデッド ─undead─ 一部  作者: 秋暁秋季
第二体 ミエザルメ
95/178

3

「穂村さん。親御さんに連絡入れておくから、ちゃんと休みなさいね」

「はい」

 千明さんに何やらメモ用紙を渡すと、其処に千明さんの家の電話番号を書かせる。

 そろそろ置賜したい所である。居ると邪魔になりそうだし、バイトもある。そう思ってこそこそと保健室を後にしようとすると、千明さんが声をかけてきた。

「あの、少しだけお話良いですか……?」

 一瞬どうしようか考えたが、所長に対しては『病人を発見して保健室へと連れて行った』と言えばある程度納得してくれるだろう。それでも遅れる訳にはいかないので、『少しだけ』と言っておく。

「不知火さんってとっても綺麗で、孤高で、その……なんて言うか 壊れてしまいそうで、穢れてしまいそうで、話し掛け難かったの……。でも……儚いけれど……それが話しちゃいけない理由にはならないよね……。今までごめんなさい……」

 何故か妙なイメージを持たれているが、中身は普通の女だ。話しかけたぐらいで壊れないし、穢れない。でもそう言う風に思わせているのは私自身なのだろうか……。話しかけ難くしているのは私自身なのだろうか……。喜怒哀楽を表に出さないと、人間は何処までも儚く、脆くみえるということなのだろうか……。

 様々な理由が浮かんでは消える。まるでシャボン玉だ。

「でも、変な方向で不知火さんのイメージを壊さないように接してきたけど、これからは……偶にお話してもらって良いですか……?」

「敬語は使わないで。後紅葉って呼んで」

 私はよく浮く。皆曰わく『儚い』だの『壊れやすい』だのという意見で。それでも今までそんな事を気にした事はないし、気にするような事でもない。

 突然馴れ馴れしくしされたところで、憎悪の目からいきなり好意を向けられた訳では無いのだし、其処まで不快感は感じなかった。元々好意は持ってくれているようだし、無表情で無口、そして何故だか儚いというイメージを植え付けた私にも非があるというもの。

 貧乏人が宝くじを当てて、掌返したように親しくしてくるのとは訳が違うのだ。

「有り難う……」

「別に、バイトだからそろそろ行く」

 本当に、可愛くない口調でその場を後にした。

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