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妙に鈍い音を立て、床に落下。気になって這い出して見ると、案の定、塊が胡座をかいて目を伏せていた。
「塊、ごめん」
「んっ──? あぁ、朝か。ほら紅葉ちゃん、目覚まし落としちゃ駄目でしょう?」
塊は未だ自己主張する目覚ましのボタンを押して黙らせる。それをベッドの上に起き、そそくさと部屋を出て行った。扉を閉める際に、此方を見向きもせず塊が用件を伝えた。
「早く着替えて準備するんだよ?」
「言われなくとも」
勿論。だが目覚ましによって半ば強制的に起こされた私の体は眠りを求めている。ベッドから無理矢理起き上がろうとしてはベッドに戻り、最終的には転がるような形で落下した。そのお陰で僅かに目が覚める。
私は床を這うようにして制服の元まで行くと、渋々立ち上がってそれを落とす。もう一度寝転んで釦を外し、芋虫のように体くねらせながら脱いで行く。
目を閉じているだけでもある程度眠気が緩和されるので、目を閉じながら、しかしなるべく早く床に服を散らしていく。
床に散らばる衣類達。それを見下しながらワイシャツに袖を通していく。ひんやりとした感触が肌を伝って、神経へ。まだ春とはいえ、寒い。
ぐしゅんっと一発くしゃみをして、鼻を擦る。生足をスカートの輪に突っ込み、履く。
怠い……着替えというのは本当に体力の無駄遣いだ。
ドアを開けて居間へ。塊が食パンを焼き、その間にスクランブルエッグを作っていた。私に気が付くと、『席に着いてて』と返される。
私は言われるがままにテレビのチャンネルを付け、適当に廻す。キャスターが天気を告げた後、難しい社会運動について意見を述べている。
「はい、出来たよ~」
そそくさと皿を持って来ながら画面を一瞥する。そのまま魅入る事なく席に着くと、フォークの上に少量のスクランブルエッグを乗せた。そのまま私の口元まで運んでくる。
……どういうつもりだ……?
「はい、あー……」
「ひとりで食べれます」
私は塊の持っていたフォークを受け取ると、そのまま口に運ぶ。ふよふよとした感触が口の中で広がり、玉子の甘い香が鼻から抜けて行った。
次にトーストをかじる。少し焼き過ぎたようで、端っこが黒ずんでいる。まぁ、余り気にする事でもない。
塊はというと、食べている間に髪を結ってくれている。自分の髪でありながら、毛先が項に当たってくすぐったい……。ある程度高さをつけてゴムで束ねると、赤いリボンを通してくれる。
「はい、完成ー!! イェーイ」
一人テンション高く騒ぐ彼を差し置いて、私は残りを口に詰め込み始めた。スクランブルエッグは頬の端に、トーストはねじ込む。そのようにしてなんとか全てを頬張ると、鞄を持って足早に玄関へ。
ちらりと振り返ると、塊が笑顔で見送ってくれているところだった。何時見ても嫌みな程に明るい。
「じゃ……」
「行ってらっしゃい」
そんなこんなで一日が始まった。




