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此処で次に気になるのはこの男の存在だ。なんだか妙な親近感がある。無礼な行いや、少々粗雑な物言いに対しても何故か苛立たない。成人男性の旧友など居たらこんな話をするのだろうか。
……夢だから冷静な判断が出来なくなっているだけかも知れないが……。
彼は私の思想を読むようににやりと口角をあげた。
「俺は誰かの記憶の断片だ。本来の俺は──」
言おうとして口を噤んだ。さっきまでのおどけた表情とは違い僅かに影が入る。その表情を見て全てを悟った。
まぁ何だっていい。所詮は夢なのだから脳裏の出来事だ。
「あくまで“他者から見た”俺の一部分でしかない。だから嘘も混じっているかもしれない。でもまっ──。何か聞きたいことはあるか?」
「彼は……どんな人ですか?」
“彼”の一言で全てを悟ったのか、目つきが鋭くなる。瞳の奥に怪しい紫の光が宿った気がした。
私と彼との間に長い沈黙が訪れる。互いに口を開く事もなく、ただいがみ合うようにして見つめ合う。
不意にシャラリとピアスの揺れる音がする。それを引き金にし、彼は口火を切った。
「極端な、余りに極端な偏愛者だ。だから大事している奴の嫌がる事は絶対しない。あくまで“望んだ事”をただ純粋に与えているだけ」
「安心しました」
夢の中だけでも理解者が居てくれたことに安堵する。それと同時に深い眠りの中に沈んでいった。




