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私の無愛想な視線に少しだけふてくされたコウはぶちぶち文句を言う。
「えー、ケチ。昔は一緒に遊んだのに」
「今だって構ってるよ。それに友達を待たせるのは悪い事だと思う。さっさと行きな」
右手を下から上に上げるようにして、“あっちへ行け”というように手を振り払う。その態度にコウは顔をむくませ、そっぽを向いた。その後に“くるり”と振り返り、私に向かって舌を出して去っていく。
「もみちゃん先輩のけーち!!」
けちで結構である。私のような面白味のない人間に構っている暇があったら、もっと楽しい事を見付ければ良いのに。何故か見かける度に声を掛け、おちょくって来る。前向きに捕らえれば、気遣ってくれている。コウなりの優しさで、甘さ……なのだろう。
コウが去った後も私はその場所を凝視していた。自分言うのも何だが未練がましく思えたので、昇降口へと歩みを進める事にした。
昇降口へと到着すると少年少女達が、かかとをこすり合わせながら靴を脱ぎ、下駄箱にローファーを戻している所だった。聞き耳を立てると他愛もない、昨日のテレビの話だとか、あの子とその子が付き合っているだとか、どうでも良い話が聞こえて来た。
私も靴を脱ぎ、自分の下駄箱に靴を入れる。欠伸をしながら階段を上って行くと、一人の男子生徒が声を掛けてきた。クラスメートだ。
「……おはよう。不知火さん」
「はよ」
珍しい事もあるものだ。男子から挨拶されるだなんて。
しかし私は特に笑顔も浮かべず、適当に返事を返す。それとは対照的に彼は優しい笑顔である。その元気や活力を私にも分けて欲しい。
しかし目を見ずに済ませるのも、何故だか申し訳ない気がして、焦点を彼の眼に合わせ、挨拶する。
「おはよ。金雀児君」
それだけ言うと、彼は少し瞳孔を大きく開いてそそくさと走り去ってしまった。最初の私の挨拶が癪に触ったのかもしれない。
私は少しだけ罪悪感を覚えながらも、すたすたと階段を上って行く。一歩一歩階段を上がる度に、束ねられた髪の毛先が項に当たってくすぐったい。
漸く最後の一段を上り終わると教室はすぐ其処である。黙って横開きの扉に手を伸ばし、開いた。
賑わっていた教室に僅かな沈黙。視線が集中する。それでもわざと気にしない振りをして、自分の席へと向かって行った。
何か問題を犯した訳でも無い。いじめにあっている訳でもない。ただクラスの皆は私に一目置いている。そんな感じだった。
自分の席まで着くと音を立てないように鞄を下ろし、机の中に教科書やノートを詰め始める。すると綿菓子のような声が聞こえて来た。
「紅葉~、おはよー」
金雀児君と雫のネタはまだ未定です……_(._.)_
お友達としてのゲストキャラが多くなりそうです……(x_x)




