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アンデッド ─undead─ 一部  作者: 秋暁秋季
第一体 怠惰少女 
17/178

2

 黙って緑の眼が私を見据える。

「なぁに? シスター」

「いえ……。何でもありませんわ……」

 それだけ言うと姿を眩ませてしまった。

 現実に引き戻されると、所長が穏やかに笑っていた。私の手からシスターを取り戻すと溜め息を一つつく。

「何なんですか。本当に……」

「いや? 昼間だけど……仕事だよ」

「はい……」

 鋭利な眼光が胸を刺し、私はそれを掻き消すように硝吸鎌をケース放り込む。

 ケースを背負い、扉の前で手招きする彼の跡を追う。階段を下りようとした所で鼻がひん曲がるような、何とも言えない腐敗臭がした。眉をしかめて前方を見ると、見たくもない光景が目に入る。

 心臓を貫かれ、血を流した死体。手足を切断された死体。首から上が無いものまでいる。

「所長……、一気に来すぎやしません?」

「最近増えてるって言ったでしょ」

 今まではせいぜい昼間に出るか出ないかだったのに、明らかに数が増えてる。

「さて、狩場への入り口を開きますかい」

 途端に生の息吹が失せる。何も聞こえない。ざわめく烏共も、子供の笑い声も消えた。

 私と所長以外誰も居なくなったこの世界で、彼は黙って滅籍を広げる。

 最近組んで居なくて忘れてしまったが、滅籍の能力は“創想”だった……はず。周りの建築物を破壊し、自身に有利な場を創り上げ、相手を滅する。確か創られる建造物によって効果が変わり、使っ者の体力に影響及ぼす気が……。

「紅葉、独りで三体相手するのキツい?」

「当たり前です!!」

 接近戦の担当だからって全てを丸投げしないでよ。つか部下を気遣ってよ。

 歯軋りをし、怪物共を威嚇する。しかしそんな事はお構いなしに白い腕が次々と伸びて来る。

「じゃっ、城か教会か」

 そう言うと開かれた頁がうっすらと輝き出した。

「滅籍、『城』を創造。紅葉、『食事』は見ちゃだめだよ?」

 最悪だ。脳裏にグロテスクなシーンが浮かび、手足が震えた。

 刹那、私の腕の肉が喰い千切られる。ピンク色の筋肉が顔を出していた。油断をしていた隙に噛まれたようだ。

「紅葉、油断しない。戦場においては恐怖さえ命取りだ」

 半ば『誰のせいだ』などと思いながら、まだ使える右手で硝吸鎌を振り回す。

 腰の骨を折り、更に足の骨も粉砕しておく。一体目の力が少しばかり落ちる。まだこんなにも気持ち悪い事をするのかと思うと気が引ける。でも爆音により、僅かな安静と新たな恐怖が私の体を包む。

 城が設立されてゆく。建物を木っ端微塵にし、足元にも大理石の床が現れる。巨大地震の後に出来たのは馬鹿デカい広間。城の内部である。

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